窒化チタン粒子を混ぜた液体から湯気が立ち上る(物材機構提供)

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 物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の石井智主任研究員らは、太陽光を当てるだけで水を蒸発させる光触媒を開発した。触媒表面の水分を直接気化させるため、照射した光エネルギーの50%を蒸発に利用できる。単純な装置にもかかわらず、塩水を蒸留水にすることができた。途上国などでの清潔な水の精製や分散型の海水淡水化装置の材料として提案していく。

 窒化チタンの結晶を光触媒として利用した。窒化チタンが太陽光を吸収して熱エネルギーに変え、水分を蒸発させる。窒化チタンはその結晶の表面にエネルギーが集中する「プラズモン共鳴」を起こすため、結晶表面の水のみが蒸発する。

 光を当てると水は常温のまま蒸気が立ち上る。ボイラーのように液体全体を沸点まで加熱する必要がなく、加熱部の耐熱設計が不要。容器や配管などからの熱損失はない。

 セラミックス繊維表面に窒化チタン粒子を固定して水に漬けると、毛細管現象で繊維表面に吸い上げられた水が光触媒で蒸発するため、効率が上がる。

 セラミックス繊維ではエネルギーの50%を蒸発に利用できた。研究室では蒸発効率を70%に高めることに成功している。

 蒸留装置はシンプルに設計できる。光触媒繊維を水に浸し、太陽光を入射させると蒸気が立ち上る。傾斜天板で湯気を集めると、蒸留水を精製できる。窒化チタンは融点が2000度C、400度Cで酸化反応を起こすが、水が供給されていれば高温にならない。メンテナンスしやすく、途上国での分散型蒸留装置などとして提案していく。