値上げや合理化などで原発ゼロによる当面の危機を回避(東電柏崎刈羽原発)

写真拡大

 2018年4月の電力小売り全面自由化3年目を目前にして業界に、二つの波が押し寄せている。商機を見込んで参入した新電力の淘汰(とうた)と、自由化開始時に2年契約を結んだ顧客の更新切れに伴う争奪戦だ。価格競争で体力勝負の様相も呈する中、各社は新たなビジネスモデルを確立できるかも問われてきそうだ。

 17年は電力自由化にビジネス拡大を夢見た事業者が現実を思い知らされた1年になった。大東エナジーが11月に電力市場価格の高騰から事実上の撤退を表明し、12月には福岡県みやま市が出資する「みやまスマートエネルギー」が債務超過の状態に陥っていることが明らかになった。

 電力各社の顧客獲得のための安売り合戦は激しさを増す。一方、電力の調達コストは高止まりしており、自前での発電設備を持たない企業は収益性が悪化している。400社以上が参入を宣言したものの、今後は事業撤退に伴うM&Aが活発になる可能性が高い。

 東京ガスの広瀬道明社長はM&Aを顧客拡大の手段の一つとして位置付ける。「(新電力は)首都圏以外で事業を展開している場合も多い。

 当社もかたくなに首都圏に事業を限定するわけでない」とM&Aを通じての商圏の拡大を示唆する。JXTGエネルギーの杉森務社長も電力小売りでのM&Aを否定しない。

 家庭向けの電力の切り替え件数は約640万件で、切り替え比率は1割を超えている。東ガスが電力使用量の少ない世帯向けのプランを設けるなど市場の裾野を広げる動きもあるが、急激な市場拡大は見込みにくい。

 そうした中、各社が注目するのが「2年契約の更新切れ」だ。16年4月の自由化開始時に、新電力を中心に一部の電力会社が割引率を高めに設定した2年契約を提供した。新電力幹部は「一度は電力契約を切り替えた顧客層だけに、価格に敏感。流出を防ぐのが課題になる」と語る。

 とはいえ、事業者は価格だけの訴求では早晩限界が訪れる。既存の大手電力も大半の電力会社の原発が稼働していない今、収益性を改善する「特効薬」はない。

 東京電力ホールディングスの小早川智明社長は「エネルギーだけで勝負する世界ではない。メーターの先にある(家庭内の)サービスを訴求していきたい」と語る。
(文=栗下直也)