「PRO TREK Smart WSD-F20」

 2017年4月に発売したカシオ計算機株式会社のスマートウォッチ「PRO TREK Smart WSD-F20」。OSにAndroid Wear 2.0を採用したこのデバイスは、MIL規格準拠のタフ仕様を実現するとともに、スマートフォンと接続しなくてもオフラインで地図を利用可能で、アウトドアに最適なスマートウォッチとして人気を呼んでいる(本誌2017年5月10日付関連記事『腕時計感覚でオフライン地図が使えるGPSウォッチ、カシオ「PRO TREK Smart WSD-F20」を試してみた』参照)。

 このたびカシオは海外のアプリ提供企業9社とオフィシャルパートナー契約を結び、このWSD-F20で利用可能なアプリを新たに9つリリースすることを発表した。リリースされるアプリはいずれもアウトドアやスポーツの分野で世界的に人気を博しているものばかりで、登山やランニング、水泳などの定番スポーツだけでなく、サーフィンや乗馬などを楽しむ人向けのアプリも用意されている。

 新アプリのリリースにともないカシオは2月8日、都内で記者発表会を開催。アプリ提供企業だけでなくGoogleのAndroid Wear担当者も出席し、カシオとのパートナーシップについて説明した。今回は発表会の模様を交えながら、カシオのスマートウォッチに対する取り組みについて考えてみたい。

オフライン地図を利用可能

ゴルフや水泳、サーフィン、乗馬など、海外9社と提携してアプリ拡充

 今回発表したアプリは、英Augmentraのトレッキング用アプリ「ViewRanger」、ポルトガルHOLE19のゴルフ用アプリ「HOLE19」、スペインGradient Technologiesのサーフィン用アプリ「GLASSY Surf Report」、英Core Codersのスキー/スノーボード用アプリ「Ski Tracks」、スウェーデンFishbrainのフィッシング用アプリ「FISHBRAIN」、米MySwimProの水泳用アプリ「MySwimPro Swimming Workout Log」、スウェーデンSchvung Rideの乗馬用アプリ「EQUILAB」、マルタ共和国NeuronDigitalのフィットネス用アプリ「Exercise Timer」、英SIX TO STARTのランニング用アプリ「Zombies, Run!」の9アプリ。

9つの新アプリをリリース

 WSD-F20にはカシオ製アプリとして、トレッキング用、フィッシング用、サイクリング用、スノースポーツ用、パドルスポーツ用のアプリがプリインストールされているほか、Android Wearアプリとして「YAMAP」「なみある?」といったアプリが利用可能だ。

 今回リリースされるアプリは、これらに加えて新たに提供されるもので、ユーザーとしてはより選択肢が広がったといえる。例えばトレッキング用アプリのViewRangerは、スマートフォン上でトレッキングのルートガイドを編集し、その結果を共有することが可能なほか、経由点を設定して、その地点が近付くと知らせる機能も搭載している。なお、同アプリもカシオ製アプリと同様、スマートフォンとの接続不要でオフラインで地図を利用可可能だ。地図データにはMapbox製のOSM(OpenStreetMap)地図を使用している。

トレッキング用アプリ「ViewRanger」

 ランニング用アプリのZombies, Run!には、音声で流れてくるストーリーがランニングを盛り上げる「ストーリーラン」というユニークな機能を搭載している。これは、有名な小説家Naomi Aldermanによって書かれたストーリーで、追いかけてくるゾンビから走って逃げるというホラーテイストの話を楽しめる。

ランニング用アプリ「Zombies, Run!」

 スノースポーツが好きな人には、Ski Tracksも見逃せない。同アプリは、リフト搭乗時は位置情報が記録されず、滑走開始を自動認識して記録を開始する。このため、滑走前に記録を開始するだけで、あとはずっと操作することなく滑走時のデータだけを記録できる。なお、現時点ではスマートフォンとBluetooth接続した状態で使用する仕様となっており、スタンドアロンで使用することはできない。3月に予定されているアップデートでスタンドアロン使用が可能になるという。

スキー/スノーボード用アプリ「Ski Tracks」

 このほか、ほかのアウトドア用スマートウォッチにはあまり見られない乗馬やサーフィンといった珍しいジャンルのアプリが追加されている点にも注目だ。ユーザーの細分化した趣味嗜好に合わせてさまざまなアプリを後から追加できるのは、Android WearベースのWSD-F20ならではのメリットと言えるだろう。

乗馬用アプリ「EQUILAB」

サーフィン用アプリ「GLASSY Surf Report」

「カシオは本気でスマートウォッチに取り組む」中村寛副社長が宣言

 記者発表会では、GoogleのAndroid Wear事業部プロダクト・オペレーション部門のLeor Stern氏が登場。「2014年にAndroid Wearを発表して以来、さまざまなメーカーがスマートウォッチを発売しており、2017年には24の新モデルが発売された。OSも2.0にバージョンアップし、スマートフォンの種類によらずスマートウォッチ上で単独でアプリが動くようになった」とした上で、カシオのスマートウォッチについて言及。「カシオは長い歴史を持つ会社で、大切なパートナーであり、スマートウォッチに対して明確なビジョンを保有している」と評価した。

GoogleのAndroid Wear事業部プロダクト・オペレーション部門のLeor Stern氏

 また、カシオ計算機取締役専務執行役員の伊東重典氏は、リスト型ウェアラブルデバイスの市場規模を、Apple WatchやAndroid Wearを搭載した一般的なスマートウォッチ、フィットネストラッカー、そしてWSD-F20や、GarminのFenixシリーズのようなアウトドア用GPSスポーツウォッチの3種類に分けて、この中でもGPSスポーツウォッチは今後も成長が期待できると語った。

カシオ計算機株式会社取締役専務執行役員の伊東重典氏

リスト型ウェアラブルデバイスの市場規模

 その理由として、カシオ計算機取締役副社長執行役員の中村寛氏は、「スポーツをしながらスマホを見るのは難しい」ことを挙げている。ランニングやサーフィン、乗馬など激しいスポーツをしている最中にスマートフォンを取り出して操作するのは面倒だし、登山などではスマートフォンのバッテリーの持ちを気にしてオフにする人も多い。

カシオ計算機株式会社取締役副社長執行役員の中村寛氏

 そこで役立つのがWSD-F20のような、オフラインで地図を見ることが可能で、かつタフな仕様のスマートウォッチである。今回新たに加わった9つのアプリは、このようなアウトドアユーザーのニーズに応えるものとなる。

 ただし、海外製アプリということで、日本語への対応が進んでいない点が気になった。特にストーリーを楽しめることが特徴のZombies, Run!については当面は和訳されず、英語のみでの配信となるとのことで残念だ。また、スキー/スノーボード用アプリのSki Tracksについては計測値だけの表示となるが、せっかくオフライン地図を見られるWSD-F20を使うのだから、ゲレンデマップも見られるようになるといいと思った。

 このように物足りなさを感じる面もあるが、一方で海外9社と一挙にパートナーシップを結び、9つのアプリを同時にリリースするという今回の発表からは、カシオのスマートウォッチへの強い意気込みも感じられる。発表会の締めくくりとして、中村氏は「カシオは本気でスマートウォッチに取り組む」と宣言。そのためにはカシオとGoogle、アプリ提供会社の3者が同じビジョンを持って進むことが大切であると語った。

 スマートウォッチの将来性を信じて、本腰を入れて取り組みを開始したカシオが今後、アプリ面でどのような強化を図るのか楽しみだ。同時に、バッテリーの持ちや処理能力をより向上させたWSD-F20に続く新機種の投入にも期待したい。