ドイツのメディアコングロマリット企業アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)が、動画戦略を拡大する準備を進めている。同社は4年前、テレビニュースチャンネル「N24」を買収し、その編集部門を全国紙「ディ・ベルト(Die Welt)」の編集部と統合。2014年から、同じ編集チームがN24とベルトの業務を手がけるようになった。1月には、この統合プロセスが完了した節目として、テレビチャンネルの名前をN24からベルトに変更している。

Facebookがニュースフィードのアルゴリズムを変更してパブリッシャーを締め出すことを決めたいま、パブリッシャーにとっては、自社のプラットフォームの動画戦略を発展させることがより重要になっている。ベルトでは、人々を自社のサイトにとどめておくために、新しい動画機能と製品をテストしている。

また、この数週間で、ライブストリーム動画へのリンクを見やすくし、ウェブページの一番上に配置した。ベルトは、正確な数を明らかにするのはまだ早いとしながらも、こうした変更によって、ライブストリームへのアクセス数が2倍に増えたと述べている。

加えて、動画がある記事ページの滞在時間は、動画のない記事ページより平均で18%長いという。ただし、実際の時間は明らかにしていない。

ロイヤルティが最優先



「オーディエンスは、ページ上でより多くの時間を動画の視聴に費やしているが、そのほかの活動も行っている」と、ベルトでデジタルイノベーション担当ディレクターを務めるナイダル・サラ-エルディン氏はいう。「我々が真剣に取り組んでいるのは、より関連性の高いコンテンツでロイヤルティを構築して関係を深め、ページでの滞在時間を増やしてもらうことだ」。

ベルトは、オリジナルの動画と再利用動画を含め、1日におよそ50本の動画を公開している。アナリティクス企業のチューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、ベルトは12月に、FacebookとYouTubeでおよそ1200万の動画ビューを獲得していた。それでも、ベルトは自社の動画利用は控えめだと考えている。

「動画を中心に据えるより、関連性とユーザー体験を重視している」と、サラ-エルディン氏はいう。「我々は、動画を見せるときに付加価値を提供しているだろうかと常に自問している。目的はKPIを達成することではないのだ」。

ワークフローが異なるふたつの編集部を統合するのは難しいプロセスで、ジャーナリストであれエディターであれ、あらゆる配信チャンネルを利用することが求められるようになった。そのため、次第にそれが同社の一般的な手法になっていったという。たとえば、1月には、ドイツ人サッカー選手のデニス・ナキ氏が銃撃されたニュースを、ベルトのジャーナリストであるイブラヒム・ネーバー氏がいち早く報じたが、ネーバー氏がテレビでニュースを伝えたあと、ベルトはその動画をソーシャルメディア向けに編集し、ベルトのFacebookページにも投稿している。

文脈に合ったもの



ベルトはユーザー目線で動画をサイトに掲載しているというのは、コンデナスト・インターナショナル(Conde Nast International)のプレジデントを務めるボルフガング・ブラウ氏だ。「ベルトの動画は、競合他社と比べ、単独の体験を提供したりテレビだけで完結したりするものではなく、コンテキストに合ったものになっている」と、ブラウ氏は語った。「このようなアプローチは、いまもニュースサイトのホームページにアクセスするようなユーザーの大半が、動画を見るためにアクセスしてくるのではなく、自分にとって関連性の高いコンテンツを探しに来るという考え方に基づいている。そのコンテンツが、テキスト、動画、インタラクティブコンテンツ、フォトギャラリーのどれであるかは関係ないのだ」。

2016年9月、ベルトはメーター制課金モデルからフリーミアムペイウォールモデルに移行し、コンテンツの15%をデジタル購読者しかみられないようにした。エディターは、どのコンテンツを有料にするかを判断するにあたって、直感を頼りにするだけでなく、ページビュー、滞在時間、ソーシャルシェアの数といった指標から算出した記事スコアを利用している。動画の場合には、視聴回数、視聴完了率、参照元、直帰率などが指標となる。ただし、ベルトの動画はほとんどが無料で視聴できる。

「我々の経験では、ホストが語りかける動画が成功するのは、そのホストがはっきりとした意見を持っている場合だ」と、ウェブ動画アンバサダーのオリバー・ラッシュ氏はいう。「関連性と内容がストーリーをもたらすのだ。必ずしも劇的な事件が必要なわけではない」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Welt