自分には実績がありません……(写真 : Ushico / PIXTA)

→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

私は20歳から、正規の小学校教諭として5年勤務していました。その後、東京で約1年特別支援教育に携わり、そこから約1年間青年海外協力隊としてアフリカで教育に関するボランティアをしました。
現在帰国し、新たな仕事探しの最中です。自分の気持ちとしては、世界などを少し見ていろいろ体感したうえで、初等教育以外に関わる仕事をしたいと考えています。
具体的には、
1)自己実現を支援する仕事(コーチング、人材育成など)
2)自分で新しい何かを作り出す仕事(クリエイティブ系の職業や、アイデアを形にしたり、仕組みづくりをする仕事)
この2つが気になっていて、どちらに踏み出そうかとても迷っている状態です。どちらも、自分には資格やこれといった実績、技術がありません。それを身に付けるための資金もない状態です。
そんな状態でこんなことを言うのは甘いのですが、最終的には、どちらもやれる形の働き方を、創り出したいと考えています。そのためには、どのようなキャリアの切り開き方がいいのか、アドバイスをいただけないでしょうか。とても甘い考えだと思いますが、ご指摘いただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
S

やりたいことの実現に必要なのは…


この連載の記事一覧はこちら

ご自身でやりたいことをすでに固められていることに加え、教育関係で海外へ行ったりと着々と前進されているあたり、Sさんはキャリアについて非常に真摯に考えていらっしゃることがうかがえます。

さて、やりたいことを実現するにあたり技術も資金もないのでどうしたらよいかということですが、まずやりたいことの実現に必要なのは、その分野における実績ややりたいと強く思う心。これだけです。

たとえば選択肢の1つである他人の自己実現を支援する仕事。これはおカネがあればできるというものではありません。自己実現に係る悩みを抱える人は、開業資金がある人の話を聞きたいわけではなく、自己実現を実際に図ってきた先人の話を聞きたいものです。

なぜならば、そういった先人であれば、リアルな悩みと解決を通じた実際の話や実体験を基にしたアドバイスをくれるであろう、という連想が働くからです。

自分と同じような自己実現に悩む段階からいかに抜け出したのか、そういったリアルな話を聞きたいわけであり、何も開業資金を用意できただけの人の話を聞きたいわけではありません。

実際にSさんも、キャリアにおける相談をこうして本コラムにされているわけですが、それは私がその分野において実績があるからにほかならないはずです。そもそもキャリア開発の面において実績があるから私もこうして人の相談に乗る連載をさせていただいているわけです。

何も資金があったり、コネがあったり、または自称専門家なわけではありません。自分の実体験も実績もないのに、薄っぺらな知識だけで語ろうとする人の話を聞きたいとは誰も思わないでしょう。

近道は実績を創りあげること

したがって、Sさんとして一番の近道は、ご自身が自己実現を図ってきた実績を創りあげることです。

なお、Sさんは自己実現という言葉で、実質的には社会人のキャリアにおけるキャリアパスという分野に絞られているようですから、たとえばまずはSさん自身がキャリアにおいて一般とは異なるパスで成功を収めてみる。
コーチングなどの分野ではすでに職業として従事されている方たちや成功を収めていたり方がいますから、これから参入するSさんとしては差別化が必要です。

つまり、相談をしたいと思う人がSさんを選ぶ理由を構築しないといけません。

だからこそ、あくまでもたとえばの話ですが、「一般とは異なる」パスで、と申しあげたのです。

私自身も一般とは異なる形でのキャリアを形成してきたからこそ、こうして連載を持っていますし、本も定期的に出版できているのです。

そして、そういった独自のやり方で自己実現を図っていけば、自分自身が新しいものを創りあげた実績になりますから、自ずとSさんのいう新しい何かを作り出す仕事にも従事できるはずです。

資格だらけの「起業家という名の無職」

つまり、他人に対してキャリア上のアドバイスなど何かを与えたいと考えるのであれば、考えるべきは1つです。「自分が相談者ならば、今の自分に相談をしたいのか?」と。

自分が自分に自信があり、相談をしたいくらいにならないと赤の他人はSさんに相談をしたいなどと思いません。

状況は異なりますが、その昔、非常に沢山の資格を持っている方にお会いしたことがあります。中小企業診断士や簿記に始まり、FPや英語などなど。しかし彼は独立した起業家という名の無職でした。なぜか? 彼にあるのは勉強した実績としての資格だけであり、実務における実績が何もなかったので、他人が相談をしたいと思わなかったからです。

反対に資格や学歴はなくとも、実績があるので人材分野の会社を興し、成功している知人がいます。

やはり何事も実績がものを言うのです。相談したい理由を相手に与える。おカネを払う理由を相手に与える。そのための実績です。

まずはSさんが目指す分野においてそういった、他人はおろかSさんご自身が魅力的と思える人物になってみてください。そうすることで自ずと道は開けてくるはずです。まずはご自身で自己実現を図り、良い相談者となり、1人でも多くの方の悩みの解決に寄与される方になることを応援しております。