〈旅と写真とゴハンと〉[熊本編]各駅停車で九州一周!おいしい“裏ななつ星”紀行

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写真家小平尚典さんが、『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者、片山恭一さんと巡った、ローカル線で行く九州一周の列車の旅。前回の湯布院編に続き、後編となる今回は熊本でのおいしい思い出をお届け。

旅と写真とゴハンと Vol. 5


旅した人/小平尚典さん  旅した場所/熊本


旅の写真家たちが、旅先での“おいしい記憶”を、写真とともに振り返る人気連載。第5回は、九州は小倉出身の小平尚典さんによる“裏ななつ星”紀行の後編。同じく九州は福岡在住、『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者である片山恭一さんと「九州満喫きっぷ」と駆使した格安ローカル列車の旅で巡った、熊本でのおいしい思い出を紹介。

前編:湯布院編はこちらより

車窓から眺める雄大な阿蘇山、路面電車で駆ける熊本市内。熊本旅の魅力は、各駅停車にあり


前回にも記したように、“裏ななつ星”紀行はローカル線で巡ることがその掟。次の宿泊先の熊本へも、阿蘇高原線(豊肥本線)で向かったという、小平さんご一行。


一両編成のワンマン列車で熊本へむかう。

「大分から阿蘇を通ってむかうは熊本。阿蘇山を筆頭にダイナミックな景色が車窓から見えて夢中でシャッターを押しました。雄大な景色をじっくり長い時間をかけて眺められるのは、ローカル線ならではの贅沢。さらに、この列車は今ではもうほとんど乗る機会のないディーゼルカー。独特のエンジン音が、さらに旅情をかき立ててくれました」


車窓からは雄大な阿蘇山が見える。

九州横断特急の列車と遭遇。“裏ななつ星”紀行のルールは各駅停車の旅。乗りたい気持ちをぐっとこらえ、記念撮影のみに留める。

熊本に入ってからは路面電車に乗り換える。

「旅をしていると、いろんな人の生活が入ってきます。向こうからしたら、僕たちが入ってきたのだけど。その旅先で、住んでいる人たちがよく使う電車に乗るということは、その人たちと生活を共にすることに近い気がするんです。路面電車なんてその最たるもの。耳をすませば、夫婦の会話や女子高生の軽快なトークなどが聞こえてきます。会話や行動から、共通点を見つけたり、地域ならではの個性を見つけて感心したり。その土地の日常を疑似体験するのは楽しきことです。熊本では、気軽にあいさつをしてくれて、人なつこさというか温かさを感じました」


市電のレールの姿があるのも熊本ならではの夜景。

暮らすように旅するからこそ見えてくるその土地の魅力。日常のなかの非日常に驚いたり感心したり……。それこそが贅沢な旅なのでは?と教えてくれるかのようだ。そんな道中で出合った“おいしい”思い出、2つをご紹介。

途中下車してでも食べたかった、“懐かしパン”/「リッチモンド」


阿蘇〜熊本へ向かう途中、宮地駅においしいパン屋があると聞きつけ途中下車をした小平さん。お目当てのパン屋「リッチモンド」は、コロッケパンや玉子パンなど見た目も味も懐かしく、一気に遠足気分を盛り上げてくれたとか。

「この手のパンといえば、焼きそばパンがはずせないですね。どれも手作りでおいしかったです。車窓に広がる風景を眺めながらコーヒーと一緒にいただいたのですが、とても幸せな時間でした」


 

熊本グルメが揃い踏みする情熱あふれる居酒屋/「五郎八(いろは)」


夜は、熊本の友達が一押ししてくれた居酒屋へ。場所は、水前寺公園駅前。店名は、五郎八と書いて「いろは」と読む。「熊本のおいしいものがすべて揃っているお店。料理はすべて大胆でダイナミック。さらに、職人気質の大将と、活気ある若者とのやりとりが熱気となって、いろんな意味でパワーをもらえます。この日はカウンター席に座ったのですが、目の前で中華鍋をとっかえひっかえさばき調理する姿がライブ感があってワクワクしましたね」

「熊本グルメといえば、馬肉。こちらでは馬刺しのほか、様々なメニューを取り揃えています。馬のホルモン(写真下)を食べたのははじめてだったけど、思ったよりあっさりしていておいしかったですね」

この日の〆は、熊本ラーメン。

「熊本ラーメンは、揚げニンニクが入っているのが香ばしくていいですね」という小平さん。小倉出身の小平さんにとっては、とんこつラーメンは懐かしくもある味。同じ九州でも、地元ならではのラーメンの個性があって、それを食べ比べるのも旅の楽しみだったとか。

今回の旅の道連れ、片山さん。いろはから出てきたところをキャッチ。


 

素晴らしい景観、癒やしの温泉、そしておいしいごはんが揃う人気の旅先、九州。その個性と魅力を120%満喫すべく、のんびりとローカル列車で周遊してみては。

PROFILE


小平尚典(こひら・なおのり)

福岡県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、渡英し欧州を放浪。帰国後、エディトリアルカメラマンとしての実績を積み、1980年に新潮社『FOCUS(フォーカス)』専属カメラマンとして、創刊に参加。1987年より22年間米国ロサンゼルスに拠点を移し、取材活動。1987年7月23日にシアトルにて、孫正義をインタビュアーにむかえビルゲイツを撮影、日本で話題となる。2009年に帰国後は、米国での経験を生かしメディアプロデューサーとして活躍。著書では『4/524(御巣鷹山日航機墜落事故写真集)』『シリコンロード』『e-face』『原爆の奇跡』『This is NOMO』が有名。旅関連では、『そうだ高野山がある』『神が創ったった楽園タヒチ』『彼はメンフィスで生まれた』『アトランタの案山子・アラバマのワニ』などを刊行。公益社団法人日本写真家協会会員、米国海外特派員協会会員、早稲田大学非常勤講師。

写真:小平尚典

取材・文:吉村セイラ