これは才能!とっさに面白く切り返すワザ

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ピンチのときこそ、その人の本性がでる。どれだけ窮地に追い込まれ、批判されても、逆ギレせず、余裕を持ってウイットに富んだ切り返しができる人は、どの世界でも一流だ。才能といっても、天賦の才というわけでなく、日常会話に織り込んで、練習するといい。今回は、お見事と叫びたくなる好例を紹介しよう。

■誰もが称賛する、ウイットに富んだ一言

相手に好意を抱いたり、好感を持ったりするきっかけはさまざまだが、その一つにウイットに富んだ言葉や会話の存在がある。肉声だけでなく、SNSでのコメントやつぶやきでも、同様の効果を発揮する。

「ウイット」とは、その場に応じて機転が利いた会話や文章などを生み出す才知を意味する。相手にひどいことを言われたときや、ヤジで無礼な言葉を飛ばされた際に、怒りに任せて汚い言葉で反論すれば、相手と同じレベルの人間と思われる。だがウイットに富んだ表現で切り返えせば、一枚上手だと誰もが賞賛する。

■ぶつけられた海上自衛隊の船長

相手の過失でこちらが被害に逢えば、加害者を責めることが一般的だ。だが災難をウイットで表現し、アメリカとイギリスで高く評価された日本人がいる。2000年7月4日20世紀最後のアメリカ独立記念日を祝う洋上式典に参加するため、多くの艦艇がニューヨーク港に集まったが、その中に海上自衛隊の自衛艦「かしま」がいた。

翌5日にイギリスの客船「クイーンエリザベス号」がニューヨーク港に入港してきたが、急流になっていたハドソン河に流され、同船は「かしま」の船首に接触してしまった。

クイーンエリザベス号が着岸すると、船長のメッセージを携えた機関長と一等航海士がすぐに謝罪に訪れた。そのとき応対したのは、練習艦隊司令官・吉川栄治海将補と「かしま」艦長・上田勝恵一等海佐(どちらも当時)の2人だ。上田艦長はその際にこう答えた。

「幸い損傷も軽く、別段気にしておりません。それよりも女王陛下にキスされて光栄に思っております」

世界各国の帆船や海軍の艦艇70隻あまりが洋上式典に参加するためニューヨーク港に入港したこともあり、この話は瞬く間に船乗りに広まった。さらにニューヨークでは自衛艦艦長が口にした言葉のセンスが高く評価され、イギリスでは「タイムズ」や「イブニング・スタンダード」にまで報道された。

後に作家の阿川弘之氏(元帝國海軍大尉)は、

「普通ならニュースにもならぬ小事故で、『かしま』は大使五人分ぐらいの国威発揚をしたとの賛辞もあったそうだが、これは、吉川司令や上田艦長はあずかり知らぬこと。ましてや、口にはせざること。『サイレントネービー(注)』の伝統と、良き時代の帝國海軍の、『ユーモアを解せざる者は海軍士官の資格無し』の心構えとは、海上自衛隊の戦後生まれのオフィサーたちにも、きちんと受け継がれているもののようである」(文藝春秋2000年11月号「葭の髄」より)

と記している。

(注)サイレント・ネイビー(沈黙の海軍)とは、大言壮語せずに、国を守るときには、充分に任務を果たすという意味(豊田穣:江田島教育より)

■試合中にプロポーズされたテニス女王

国会では政策論争でなく、揚げ足取りに終始し、レベルの低いヤジが飛び交っているが、テニスの女王ともなると切り返しが違う。

1996年ウィンブルドンでの準決勝で、シュテフィ・グラフ氏は伊達公子氏とプレーしている試合中に、観客席から突然「Steffi Will You Marry Me ?(シュテフィ、僕と結婚してくれる?)」という声が上がった。

そのときグラフ氏は笑って、すぐにこう切り返した。

「How much money do you have ?(あなたは、どれだけお金を持っているの?)」

この返答に場内の観客は笑い声を上げた。

この年、グラフ氏は実父の脱税事件で金銭的問題を取り沙汰されていたこともあり、自身に降りかかっていたトラブルを逆手に取った表現だった。テニスの4大大会(全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権、全米オープン)のすべてと、オリンピックでも優勝する快挙を成し遂げることをゴールデン・スラム(Golden Slam)と呼ぶ。1年の間にゴールデン・スラムを達成したのは、男女を通じてグラフ氏だけだ。

最強の女王が発したこのひと言で、彼女のファンはさらに増えた。

■昔の彼氏に遭遇したファーストレディ

大統領夫人はファーストレディと呼ばれるが、ニュースの中心はやはり大統領だ。そんな状況下で、妻の存在感を際立たせた女性がいる。

妻の故郷をドライブしていた際に、ふたりはガソリンスタンドに立ち寄った。そこで働いていた男性は、なんと高校時代に妻のボーイフレンドだった人だった。

スタンドを後にしてから、「僕と結婚してよかったね。もし彼と結婚していれば、今ごろキミは田舎のガソリンスタンドで働いていただろうね」と夫が口にすると、妻はこう切り返した。

「何を言っているの、ビル! もし私が彼と結婚していたら、彼がアメリカ合衆国の大統領になっていたわ」

この会話は当時のクリントン大統領とヒラリー夫妻のエピソードだ。(COSMOPOLITAN  By コスモポリタン編集部 2017年10月27日)

■高齢を問題視されたアメリカ大統領

アメリカの大統領選挙では、候補者同士の直接討論会でのやり取りが雌雄を決することが多く、司会者が厳しい質問を投げかける場合もある。

1984年のアメリカ大統領選挙中に行われた直接討論会での出来事だ。再選を目指すレーガン大統領は民主党の大統領候補ウォルター・モンデール氏との第1回目の討論会では上手くいかず、支持率を下げたまま2回目の討論会に臨んだ。

当時56歳のモンデール氏に対し、レーガン大統領はすでに73歳になっている点について、司会者は「レーガン氏はすでに史上最年長の大統領となっている。危機に際して機能できるだろうか」と辛らつな質問を投げかけた。

このときレーガン大統領は「私はこの選挙で年齢問題を取り上げたりはしません。モンデール氏の若さや経験不足を政治利用することはありません」と切り返し、会場は笑いに包まれ、対抗馬のモンデール氏も思わず笑った。

この発言でレーガン大統領の支持率は急回復し、その後さらに支持率を伸ばし、49州で勝利を収めて再選された。(Forbes JAPAN「米大統領選テレビ討論会、記憶に残る13の事実」を参照)

■機器トラブルで、演説を中断した総理大臣

日本人は生真面目な人が多く、国際社会では印象が薄くなることが多い。だが降りかかったトラブルを逆手に取り、日本製品を上手くアピールした政治家がいる。

2008年に国連で演説することになった麻生太郎総理大臣(当時)は「24時間ほど前に総理大臣として指名を受けたばかりだ」と英語で挨拶し、その後日本語で演説を始めた。5分ほど話した頃に、高須幸雄国連大使(当時)が駆け寄り、機器の故障で同時通訳の音声が流れていないことを知らせた。

そのとき、麻生氏はすぐに英語で「メード・イン・ジャパンじゃないからこうなる」とコメントし、「最初からやりますよ」と演説を続けた。このコメントに国連会場は笑いと拍手に包まれ、演説終了後には祝福も受けた。(YOMIURI ONLINE、NIKKEI NETの当時記事を参照)

■不倫報道後に会見した落語家

週刊誌で芸能人や著名人の不倫の報道が続き、著名なミュージシャンが引退する事態にまで及んでいる。

週刊誌の不倫報道を受けて、落語家の三遊亭円楽氏が記者会見を開いたときの顛末だ。「聞かれたことはすべてお答えします」という円楽氏の意向で、会見は時間や質問の内容共に制限なく行われた。

報道陣から終盤に「不倫とかけてどう解くか」と謎かけを持ちかけられると、

「今回の騒動とかけまして、今、東京湾を出て行った船と解く」

「その心は?」と問われ、

「“航海(後悔)”の真最中(まっさいちゅう)です」

と答え、記者たちの笑いを誘った。

芸能人の不倫報道による記者会見の場は、重く苦しい雰囲気の内容がほとんどだ。だが噺家らしいこのやり取りに、不倫会見にしては温和な雰囲気で終了し、その後この件で追及されることもあまりなく収束した。(J−CASTニュースを参照)

■ツイートが注目されている経営者

人は誰でもコンプレックスを抱え、その内容に他人からは触れて欲しくないものだ。だが頭髪が薄くなった経営者が、あえて自分の自虐ネタとしてツイッターでつぶやいていた。

「ハゲとタカは間違いではないが、ハゲタカではない!」
「不毛ではない。まだ少し残っている」
「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」

書き込んだ人は、ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏だ。ここまでウイットに富んだ自虐ネタをつぶやける人は他に存在しない。自虐ネタのコメントも秀逸で、これならファンも増える。政治家やスポーツ選手はファンの存在によって輝きを増すが、経営者も同様だ。(孫正義氏のツイッターより引用)

■ファンが増える、とっさの切り返しとは?

ウイットに富んだ会話の事例から、浮かび上がったファンを増やすポイントは、

・相手が尊敬している人やモノなどに例えて返答する
・単に否定するのでなく、誰もが納得する言葉に言い換える
・成功した本人でなく、内助の功にスポットを当てる
・弱みを強みにして言い換える
・自国のよい点に置き換える
・自分の職業を上手く生かし、不利な内容をポジティブに切り返す
・自分の弱点や触れられなくないことを、あえて自分のネタにしてしまう

といったことに集約される。

ウイットに富む人になるには、軽妙な切り返しの表現をいつも考え、日常の会話にいつもウイットを織り込むことが、上達の秘訣だ。

(マーケティングコンサルタント 酒井 光雄 写真=iStock.com)