Facebookのフィードからニュースが外されるという変更による影響を、パブリッシャーたちは懸念している。しかし、デンマークのテレビ局であるTVミッドヴェスト(TV Midtvest)が1月に2週間ほどFacebookへのコンテンツ投稿を停止してみたところ、面白い結果が現れた。

地方ニュース放送局のTVミッドヴェストは、トラフィックの40%をFacebookから得ている。今回の実験はFacebookへの依存を減らすという長期的な計画に向けてのものだった。

当然のように、あらゆる数字で減少が見られた。サイト訪問者数は27%減少、セッション数では20%減、ページ閲覧数では10%の減少となった。

「目を覚まされる結果」



しかし、サイトを訪れたオーディエンスのあいだでは、記事閲覧に費やされる時間が平均して42%も増加していたのだ。さらにセッションごとのページ閲覧数は12%増加していたと、彼らは言う。Facebookからのカジュアルなトラフィックが無くなったことで、彼らのオーディエンスが読む記事数も増えたという。たとえば、彼らは通常であればビデオを1本、記事を16本、Facebookに投稿していた。そしてそのうちの1本が話題となってサイトのトラフィックを急増させる、ということが起きていた。Facebookへの投稿を停止すると、それぞれのユーザーが軒並み3本から4本の記事を読み、トラフィックの凹凸が緩和された。

TVミッドヴェストのデジタル部門責任者であるナディア・ニコラジェヴァ氏は言う。「これは目を覚まされる結果だった。Facebookへの投稿を止めた後の(トラフィックの)全体的な減少はもっと大きなものになると予想していた。トラフィックが不安定な状態に我々は慣れきってしまっていた。しかしFacebookのトラフィックを取り除くと、我々のトラフィックは驚くほど安定した」。

TVミッドヴェストは1月16日から30日に実験を行う前に、テレビ放送上で実験についてアナウンスを行っている。同時に、一般大衆から4人の実験参加者を募った。4人の職業はそれぞれ学生、政治家、起業家、そして不動産ディレクターだ。彼らは実験が行われた2週間、Facebookの利用を停止した。この狙いはニュースフィード上にニュースが現れなければ、人々はニュースをどうやって得るのかを知る、というものだったとニコラジェヴァ氏は語る。実験の行われた2週間に、TVミッドヴェストのチームは4人のインタビュー記事をパブリッシュしている。4人の参加者たちはFacebook上でのほかのユーザーとのやり取りをしたくなったものの、ニュース情報源が信頼されたパブリッシャーからのものに限られたことでより自分の知っていることが増えたように感じられると答えている。

Facebookのカットオフ



Facebook活用を完全に停止してしまう方が良いのかもしれない。昨秋からニコラジェヴァ氏はそんな考えを持ちはじめていた。サイトトラフィックは不安定なパターンを何カ月も見せ、それにストレスを抱えていたからだ。Facebookによるジャーナリズム・プロジェクトに対する失望ともあわさり、ニコラジェヴァ氏はFacebookのカットオフを真剣に検討しはじめた。

地方における公共放送局であるTVミッドヴェストはFacebookからの収益を気にしなくて良い、という大きなメリットを持っている。それでもFacebookはトラフィックの大きな牽引力であった。トラフィックのほとんどが一度限りのカジュアルな訪問であってもだ。

実験のあと、彼らはFacebookへの投稿を再開させているが、その数は減っている。日によって投稿数は違っているため正確な数字は出せないとのことだ。Facebookは1月に、ユーザーによってエンゲージされたものやシェアされた投稿を優先的に表示させるという計画を発表した。そのため、TVミッドヴェストが投稿しているコンテンツもコメントやシェアが行われることが期待できるものになっている。しかし、同時に自らのプラットフォーム上でも同じ種類のエンゲージメントが育めるようにさまざまなアプローチを試みているという。

使えるプラットフォーム



この結果として、彼らはApple Newsといったほかのソーシャルプラットフォームに注ぐ力を増やすかもしれない。デンマークのパブリッシャーたちはまだ公式にApple Newsに登録する機会をもらってはいない。しかし、Apple Newsで紹介されたことで、TVミッドヴェストのふたつの記事において、トラフィックの大きな上昇が見られた。これはFacebook停止期間に起きたことだった。

ふたつの記事のうちひとつは、線路上に侵入した男性が電車によって轢かれるというものだった。もうひとつはネズミの繁殖が原因で閉鎖に追い込まれたスーパーマーケットについてだ。なぜ、このふたつの記事がApple Newsからそれだけ多くのトラフィックを惹きつけたのかは、彼らもまだ確信は持てていない。また、Apple Newsによって増やされた数字は実験結果からは除いているという。これらは例外的な数字だからだ。米Gizmodoでは、本件についてApple Newsにコメントを求めたようだが、まだ返答は得られていない。

今回の実験結果をテレビ局のソーシャルメディア戦略にどうやって適応するか、ニコラジェヴァ氏はまだ考えている最中だ。しかし、ひとつだけ明らかなことがある。今年はFacebookを中心に据えた大きなプロジェクトは行わないということだ。

「エンジンがかからないこともある車に似ている。そのような信頼できない要素に頼って、ビジネスをしたりはしない。スポンサードポストに予算を使うこともできない。そのため、私にとっては使えるプラットフォームではない」と、ニコラジェヴァ氏は語った。

Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)