【原ゆみこのマドリッド】いい試合ができるようになってきた…

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▽「せっかく盛り上げてくれているのに」そんな風に私が肩透かしを喰らったのは火曜日、クラブワールドカップで延期されていたリーガ16節のレガネス戦を翌日に控え、どうやら今回もクリスチアーノ・ロナウドはお休みとなりそうなことがわかった時のことでした。そう、日程の妙で今季、レアル・マドリーがこのマドリッドの弟分チームと試合をするのはコパ・デル・レイ準々決勝に続いて3回目。その際はジダン監督のローテーション政策により、BBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)がベンチ入りすらせず、ブタルケでの1stレグにはアセンシオのゴールで0-1と先勝したものの、サンティアゴ・ベルナベウで1-2と逆転突破され、赤っ恥をかくことに。

▽その経験に懲りていないばかりか、いつも捻ったジョークで笑わせてくれるレガネスのオンライン対戦ポスター(https://twitter.com/CDLeganes?ref_src=twsrc%5Etfw&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.deportivoleganes.com%2F )では、折しもCL16強対決1stレグ最後の2試合と同じ日付となっていることと、マドリーが同2ndレグでPSGのホーム、Parc de Princes(パルク・デ・プランス、直訳すると王子たちの公園でスペイン語はParque de los Principes)を訪れることをかけて、「Jornada de Champions en el 'Butarque de los Príncipes’/ホルナーダ・デ・チャンピオンズ・エン・エル・’ブタルケ・デ・ロス・プリンシペス’(CLの節、王子たちのブタルケ)」と銘打ってくれたにも関わらず、ジダン監督は「llega un momento que es necesario de vez en cuando no jugar/ジェガ・ウン・モメントー・ケ・エス・ネセサリオ・デ・ベス・エン・クアドー・ノー・フガール(時々はプレーしないことが必要な時期が来ている)」とロナウドの出場に否定的だったから。

▽昨季のリーガ戦でも地元のスタジアムで生ロナウドを見ることができなかったレガネスサポーターをガッカリさせてくれましたが、それもねえ。確かにマドリーはこの先、土曜にアラベス戦、来週火曜にはミッドウィーク開催リーガのエスパニョール戦、更に3月3日の土曜にはベルナベウでもう1つの弟分、ヘタフェにいる柴崎岳選手も楽しみにしているはずのミニダービーと試合が途切れず。切り札にはできるだけ、体力を温存させたいのはわかりますけどね。ただコパ準決勝でセビージャに敗退したショックから立ち直れず、2連敗中のレガネスとはいえ、この水曜午後6時45分(日本時間翌午前2時45分)からの一戦ではシオバス、ティト、ガブリエル・ピレス、オマール・ラモス、マウロ・ドス・サントスら、出場停止やケガでジローナに3-0と完敗とした金曜の前節に出られなかった選手たちが復帰。うっかりコパの時のようにBチームを当てると、痛い目に遭う可能性もなきにしろあらずなんですが、その辺はあまり考えないんでしょうか。

▽まあ、それはともかく、レガネス以外のマドリッド勢の前節の様子もお伝えしておかないと。久々にまだお日様の出ている時間にワンダ・メトロポリターノに私が向かったのは日曜日。先週のアトレティコはコペンハーゲンで、アスレティックはモスクワで雪の降りしきる中、ヨーロッパリーグ32強対決1stレグを戦い、どちらもそれぞれ1-4、1-3で余裕のある先勝と、互角のコンディションだったんですが、その日の大きな違いはコペンハーゲン戦には筋肉痛で参加しなかったジエゴ・コスタが先発に戻った前者に比べ、後者はエースのアドゥリスとラウール・ガルシアを出場停止で欠いていたこと。そのせいか、風邪が治ったGKオブラクの手をほとんど煩わすこともなく、前半を今季のリーガ24試合中13回目の0-0で終えたアトレティコでしたが、コスタがエリア内でムニョスに倒され、明らかにペナルティのように見えながら、PKをもらえないところも今季恒例と言ってよかったかと。

▽だってえ、もう2月にもなるというのに彼らには1本もPKがないんですよ。シメオネ監督など、もう「このテーマはあまり触れない方がいい。審判も記事を読んで考えるから、cuanto mas hablemos, menos penaltis nos van a dar/クアントー・マス・アブレモス・メノス・ペナルティス・ノス・バン・ア・ダール(話せば話す程、ウチにPKをくれないだろう)」と半ば、諦め気味でしたけどね。このままではいざその時が来ても一体、誰がキッカーだったのか、選手たちも忘れてしまわない?

▽でも大丈夫、相手の攻撃力は恐れるに足らずと気づいたか、後半の彼らは一歩、前に出ることに。いえ、リュカがゴディンに代わっていたのはウィリアムスに足をぶつけ、打撲を負ってしまったせいで、まだバレンシア戦で折れた3本の前歯治療のため、口内にプロテクターをつけているCBの頭を当てにした訳ではなかったんですけどね。試合前、アスレティックのジガンダ監督が「El Atleti tiene ocho o nueve delanteros de primer nivel/エル・アトレティコ・ティエネ・オチョー・オ・ヌエベ・デランテーロス・デ・プリメール・ニベル(アトレティコは8、9人、一流のFWを持っている)」というのはちょっとサバの読みすぎなんですが、13分にはコケをガメイロに代え、元からピッチにいたコスタ、グリーズマン、コレアと合わせてFW4人体制で畳みかけるんですから、感心したの何のって。

▽それが実ったのは22分、グリーズマンのパスをガメイロが撃ったところ、敵守備陣の隙間を縫って先制点が入ります。その直後にはコレアからガビにしている辺り、1-0なら逃げ切れるというシメオネ監督の信条なんでしょうが、その日は34分に追加点という嬉しいおまけも。この時は最近、先日のコペンハーゲン戦でもパス成功率91%を記録するなど、成長著しいトマスが中盤でボールを奪い、ガメイロに繋ぐとそこからコスタへ絶妙なスルーパス。いえ、GKとの1対1を毎試合数回は失敗というのも彼らの十八番だったりするんですけどね。コスタは見事にケパの脇を抜き、とうとう2-0となったとなれば、もう安心です。おかげで前日、エイバルに0-2で勝利した首位バルサが勝ち点10に広げていた差を7に戻すことができましたっけ。

▽まあ、「Tenemos que atacar tan bien como defendemos/テネモス・ケ・アタカール・タン・ビエン・コモ・デフェンデモス(ウチは守備同様、上手く攻撃しないといけない)」とフィリペ・ルイスも言っていたように、攻守に渡って相手を上回ったアトレティコが快勝したため、これなら木曜午後7時(日本時間午前3時)からのELコペンハーゲン戦2ndレグも観客の入りはともかく、心配することはないだろうと、私も気分良く家路を辿ったんですが、お隣さんの試合を見るため、その夜は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に出向くことに。ええ、マドリーがベティスとのアウェイ戦に挑んだんですが、先週水曜のPSG戦でのベイルに続き、この日はベンゼマがベンチスタート。代わって、CL16強対決1tstレグで終盤2点を挙げての3-1逆転勝利に大きく貢献したアセンシオとルーカス・バスケスが先発しているとは、何ともわかりやすい。

▽ただ実際、前半11分にはロナウドのシュートをGKアダンが弾いたところ、アセンシオが抜け目なくヘッドでゴールを決め、先制点を奪った彼らだったんですが、そのせいで「Nos echamos atras y les dejamos jugar demasiado/ノス・エチャモス・アトラス・イ・レス・デハモス・フガール・デマシアドー(ウチは後ろへ引いてしまい、敵にプレーさせすぎた)」(ルーカス・バスケス)だなんて、これって今季はアトレティコだけの悪癖じゃなかったんですね。29分にはマルセロが負傷、テオに代わったのも響いたのか、33分にはホアキンのクロスをマンディに頭で押し込まれて同点にされたかと思えば、その10分後には再び36歳のキャプテンが今度はジュニオールにラストパス。彼のシュートはGKケイロル・ナバスが弾いたものの、運悪く目の前にいたナチョに当たってしまい、オウンゴールで逆転されているですから、困ったもんじゃないですか。

▽え、それでも後でアセンシオも「El plan que hablams en el desanso salio bien/エル・プラン・ケ・アブラモス・エン・エル・デスカンソ・サリオ・ビエン(ハーフタイムに話し合ったプランが上手くいった)」と言っていたように、最近のマドリーにはremontada(レモンターダ/逆転)体質が戻って来つつあるんじゃないかって?そうですね、気合を入れ直した彼らは後半5分に早速、CKからセルヒオ・ラモスが自慢のヘッドを決めて同点にすると、13分にはカルバハルのパスをアセンシオがワンタッチでシュートして勝ち越し点をゲット。更に20分にはロナウドも続くと、いえ、40分には途中出場のセルジ・レオンに1点を返され、ちょっとベティスが盛り返したんですけどね。最後はロスタイムにベンゼマが仕上げの5点目を挙げ、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の完成です(最終結果3-5)。

▽いやあ、今季のベティスはセティエン監督のポゼッションサッカーが浸透してよく点を取るんですが、5点以上失点をしている試合もこの日で5回目。しかも「今週、ずっと改善しようと練習してきて、試合前にも注意した場所でボールを失った」(セティエン監督)のではどうしたものやらですが、本音を言えば、マドリーが3失点もしたのは決して褒められたもんではないかと。それこそパリでの決戦でこうも守備ミスが出ては、余裕の準々決勝進出が悪夢に変わってしまう恐れもあるんですが、こればっかりは。今はロナウドを始め、チームとして打ち負けなくなったことを喜ぶべきかと。

▽ただ懸念は他にもあって、まだ時間はありますが、先週のPSG戦でヒザを痛めたクロース、この試合で太ももを負傷したマルセロに加えて、月曜にはモドリッチも太もものケガを再発。このAチームメンバー3人が3月6日までに回復するかどうか、ギリギリのところと言われている点で、何せマドリーはその前にリーガ戦4試合をこなさないといけないですからね。大事な選手をプレーさせればケガするかもしれない、かといって、ずっとお休みにしても実戦の勘が鈍るとあって、この2週間はジダン監督も頭が痛いですよね。

▽そして土曜に3位のバレンシアもマラガに勝っていたため、マドリーの順位は勝ち点差1の4位のままだったんですが、翌月曜には前節最後の試合がコリセウム・アルフォンソ・ペレスで開催。ええ、ヘタフェがセルタを迎えたんですが、平日の夜ながら、スタンドがかなりの盛況だったのは2年前、2部降格するまでの数年間、閑古鳥が鳴きまくりだったのを知っている私などには嬉しい限りだったかと。そんなファンたちの応援のおかげもあってか、いえ、残念ながら、先週カンプ・ノウでスコアレスドローを勝ち取ったバルサ戦で先発した柴崎選手は控えだったんですけどね。

▽あまり覇気のなかったセルタを前にこの日はアンヘルが爆発。前半37分、自身の1対1では天高く撃ち上げてしまったアマトからもらったパスをエリア外からシュートして、ヘタフェに先制点をもたらしてくれます。続いて後半7分にも彼はホルヘ・モリーナにラストパスを送り、チームの2点目に貢献すると、クライマックスは40分。早帰りの習慣ある観客が引き揚げていく中、ブルーノが押し戻したボールが落ちてきたところを完璧なタイミングでvolea(ボレア/ボレーシュート)、3-0で勝利って、ここ4試合引き分けの停滞状態から脱出するのに最高の形じゃないですか。

▽え、これで勝ち点33となったからって、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)のアナのように「昨季18位で降格したスポルティングは31ポイントだったから、もうヘタフェはこの先、全部負けても残留できるかも」なんて安易な考え方はしてほしくないって?そうですね、今季も現在、降格圏にいるマラガ、デポルティボ、ラス・パルマスはまだ20ポイントにも届いておらず、ボーダーラインは低くなりそうなんですが、殊勲のアンヘルも「今はウチの目標を達成するのにいい時期。勝ち点40を貯めるというね」と言っていましたし、最低、そのくらいは軽く超えてほしいかと。

▽それよりボルダラス監督に見てもらいたいのはもっと上の順位で、コパ・デル・レイ決勝がバルサvsセビージャになったため、今季もご褒美のコパチャンピオンのEL出場権がリーガ7位に回ってくる可能性が高いですしね。現在9位ながら、7位のエイバルとは勝ち点2差となれば、ヘタフェにもまだ十分チャンスがあるかと思いますが、さて。ちなみにこの日は冬の移籍市場で加入したレミ(ラス・パルマスからレンタル)、カンテラーノ(ヘタフェBの選手)のメルヴェイユ、セルヒオ・モラが交代出場、柴崎選手にはピッチに立つチャンスがなかったんですが、日曜にはアウェイでビジャレアル戦がありますからね。来週は水曜にデポルティボ戦も控えているため、必ずチャンスは巡ってくるはずですが…最近はチーム内のポジション争いが激化しているため、ここは気合を入れないといけません。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。