小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)

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中小企業が大企業に打ち勝つには、どうすればいいのでしょうか。中小企業の経営コンサルティングなどを手がける武蔵野の小山昇社長は「質の高さではなく、回数で勝負するしかない。質が低いと思っても、ひとつのことを繰り返し教えることが大切」といいます――。

※本稿は小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)の第1章「絶対会社を潰さない社長になるための10の口ぐせ」の一部を再編集したものです。

■「早くテキトーに」決められない社長はダメ

私は、「石橋を叩いて渡る慎重な人」よりも、「見切り発車で、とりあえず始めてしまう人」のほうが、社長にふさわしいと思っています。なぜなら、会社の将来は「やり方」で決まるのではなく、「決定のスピード」で決まるからです。

かつて武蔵野は、とあるセミナーのセールスで大きな赤字を計上したことがありました。7000万円の広告費を使ったにもかかわらず、新規のお客様は「たったの2社」しか増えなかったのです。そこで私は、「売上を上げる」と決定しました。

「どうすれば利益が出るのか」を検証したり、正しいやり方を考えたりすることは後回し。それより先に「売上を上げる」と決定しました。その結果、お客様を増やすことができ毎年増収増益を続けています。

ところが、ほとんどの社長は、決定ができない。あるいはしない。なぜなら、「正しい決定をしよう」とするからです。

決定を正しくしようとすると、どうしても時間がかかります。経営のスピードが失われてしまえば、マーケット(お客様とライバル)の変化についていくことができません。

また、正しい決定を下しても、その決定は「社長(会社)にとって正しいだけ」であって、お客様にとって正しい決定とは限りません。

そもそも「正しさ」はお客様が決めるものです。社長が正しいと信じても、お客様に受け入れられなければ、その決定は「間違い」です。

だから、「とりあえず計画をつくって、マーケットの反応を見る」ことが先決です。

■社長の決定は、スピードが命

私は、「正しく決定すること」よりも、テキトーでもいいから「早く決定すること」に重きを置きます。

見切り発車で実行して、お客様に受け入れられたら続行。受け入れられなかったら、ただちに修正して、新たな決定をすればよい。新たな決定が受け入れられなければ、再び修正し、みたび新たな決定をする。大切なのは、正しさよりも、「早さ」です。

テキトーでもいいからとりあえず決定して、途中で間違いに気がついたら、そのときに修正すればいいだけ。実行するのが早いほど、間違いに気づくのも早くなり、修正も早くできるのです。

悩んでも悩まなくても、結果は変わらないことが多い。決定の正しさは、悩んだ時間とは無関係です。だとすれば、早く決定したほうがいい。

正しさにこだわり、決定が遅くなっているのがダメな社長に見られる傾向です。

■社員に毎回違うことを教えている社長はダメ

中小企業の多くで人材が育たないのは、社長が毎回違うこと、新しいことを教えるからです。

社員教育において大切なのは、質ではなく、「回数(量)」です。

質の高い教育を与えたところで、受ける側が理解できるかどうかがまず疑問ですし、「教える側の負担が大きくなる」こともその理由です。質の高い教育システムを実施するには、時間もお金も労力もかかります。

だとすれば、人がびっくりするくらい質の低い内容であっても、どんどん与えたほうがいい。間隔をあけずに反復していけば、社員は必ず成長します。教育の質は低くても、長期間継続することで、社員の質は高くなるのです。

わが社は、これまでに6000回以上、早朝勉強会を開催していますが、勉強会の教材は、基本的に『増補改訂版仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)と「経営計画書」の2つだけです。

■「たくさんいろいろ」より「ひとつを繰り返し」

たくさんのテキストを使って、たくさんのことを勉強するのではなく、少ないテキストを使い、同じことを何度も繰り返すほうが人は成長します。

たくさんのことを教えると、どれも中途半端になりやすい。

小学1年生で野球、2年生で陸上、3年生で水泳、4年生でバスケットボール、5年生で卓球、6年生でサッカーを教えても、結局どのスポーツもうまくなりません。

ですが、ひとつのことを継続すると、圧倒的に上達します。王貞治はバットを振り続け、美空ひばりは歌い続け、千代の富士は四股を踏み続けたから、国民栄誉賞を受賞できるレベルになれたのです。

中小企業が大企業に打ち勝つには、「回数(量)」で勝負するしかありません。質の低い社員で、継続的に30年間勉強させている会社と、優秀な人が入ってきても30年間教育していない会社とでは、結果として大きな差が出ます。

中小企業の人材育成では、たくさんのことを教えるよりも、ひとつのことを繰り返し教えることが大切なのです。

社員から、「また同じことを言っている」と言われている社長が、一流の社長なのです。教育内容をしょっちゅう変えるのがダメな社長に見られる傾向です。

■会議でベラベラしゃべっている社長もダメ

普通の会社は、会議を行うとき、社長から話し始めます。ところが社長は現場に出ていないため、お客様の情報も、ライバルの情報も持っていません。そうして現場を知らない社長がトンチンカンな指示を出している以上、いつまでも業績は上がりません。

武蔵野も赤字のときは、社長の私が一番に話を切り出していましたが、16年連続増収企業となっている今では、「現場のことがわかっている社員」、つまり職責下位から発言するしくみとなっています。

せっかく良い情報を持っていても、立場上、あるいは性格上、発言しない人がいては組織の損失となります。

そのため武蔵野では会議で発表があるときは、上司の意見に迎合することがないように職責下位から順に発言するようにしたのです。

■会議は、話し合いをする場ではなく、決定を伝える場

私は経営計画書に「情報マネジメントに関する方針」を定めています。そこで経営判断に必要なお客様の情報を吸い上げ、正しい決定を行うために、「5つの情報」を共通化し、進捗会議などで活用しています。

【5つの情報】
1、実績報告(数字)
2、お客様からの声(褒められたことやクレーム)
3、ライバル情報
4、本部・ビジネスパートナー情報
5、自分・スタッフの考え

会議は、1から5の順番で報告します。マーケットにはお客様とライバルしかいませんので、自分の意見は最後でいいのです。

なお当社では、「お客様からの声」と「ライバル情報」に関する報告は、「A4サイズの用紙1枚に2行以内」と決めています。お客様の声はカギカッコを使うのがルール。これは報告書を何枚も書かせると、都合の良いことを書いたり、作文をするからです。

2行以内であれば、「いつ、どこで、誰が、何をしたのか」という客観的な事実だけしか書けません。

そうして社員が報告する間、社長である私は、1時間半から2時間、ずっと話を聞いています。自分で話をしている限り、大切な情報は入ってきませんから。

そして全員の報告を聞き終えたら、「これは追加販売しろ」「これはやめろ」「社員2人を業績が上がっている部署に異動」と決定を下します。これなら現場の事実に基づいた方針を決められるので、マーケットの変化に素早く正しく対応できます。

このように現場の情報を吸い上げ、それを元にした「社長の決定をいち早く伝えるため」にあるのが会議。にもかかわらず、会議を「ベラベラと話し合いをする場」にしているのがダメな社長に見られる傾向です。

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小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野社長 1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー(現在の武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に武蔵野に復帰。1989年より社長に就任し、現在に至る。主な著書に「社長の決定シリーズ」の『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『右肩下がりの時代にわが社だけ「右肩上がり」を達成する方法』(すべてKADOKAWA)などがある。

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(武蔵野社長 小山 昇 写真=iStock.com)