「パンダの赤ちゃん」は英語でなんと言う?(写真:jet / PIXTA)


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2017年6月に誕生した上野動物園のパンダの赤ちゃん、シャンシャン。12月から一般公開されましたが、観覧は抽選のようですね。ネットやニュースでもよく取り上げられ、その人気ぶりには驚くばかり。

筆者の英会話研修生のひとり、ハナコさんが抽選に当たったらしく、うれしそうに話をしてくれました。その会話をもとに、今回はパンダにまつわる英語の話に加えて、動物に関する英単語を紹介します。

パンダみたいな赤ちゃん?

都内のとあるメーカーに勤務するハナコさん、なんと研修の前日は平日だったのですが、有給休暇を取って上野動物園に行ってきたとのこと。ハナコさんのお母さんが赤ちゃんパンダ観覧の抽選に当たったようです。

△ I went to Ueno Zoo with my mother to see the panda baby.
(母と上野動物園に行って、パンダ赤ちゃんを見てきました)

ハナコさんの英語、意味は100%伝わってきたのですが、なんとなく気持ち悪くてこんなふうに訂正しました。

○ I went to Ueno Zoo with my mother to see the baby panda.
(母と上野動物園に行って、赤ちゃんパンダを見てきました)

話題の Xiang Xiang(シャンシャン)のことですので、theを使って「例の赤ちゃんパンダ」のように言うのは問題ありません。ただ、panda babyという単語の順序が、どうしてもしっくりこなかったのです。言葉の響きの不自然さは、日本語の「パンダ赤ちゃん」「赤ちゃんパンダ」と同じです。どちらも意味はわかりますが、「パンダ赤ちゃん」って、ふつう言わないですよね。

どうしてダメなのかとハナコさんに尋ねられたのですが、うまく説明できずに理由を調べてくるのは筆者の宿題にしてもらいました。オフィスに戻って、同僚のジョンに相談すると「僕も理由はわからないけど、panda baby はパンダの赤ちゃんのことではなく『パンダみたいな(人間の)赤ちゃん』に聞こえるかも」とのこと。確かに、名詞をふたつ並べて、何か言葉を作るときは、後ろの名詞がメインになりますね!

眼医者(眼科医)○ eye doctor✕ doctor eye子犬のような目○ puppy eyes✕ eyes puppy女の子(メスの)ネコ○ girl cat✕ cat girlオオカミ少女○ wolf girl✕ girl wolf

つまり、girl cat はあくまでも「ネコ」、wolf girl は「少女」なのです。それぞれにどんなネコなのか、どんな少女なのかの説明が前に付けられているのです。

すると、ハナコさんが「そうしたら、お母さんパンダは mother panda ですか?」と聞いてきました。Bingo! That’s right, Hanako.(ビンゴ! そのとおりです、ハナコさん)

動物の赤ちゃんたちの正式名称

ふだん話すときには baby panda のように言うことが多いのですが、実は「赤ちゃんパンダ」を表す cub という英単語が存在します。メジャーリーグの Chicago Cubscub と同じです。子グマという意味ですが、パンダも panda bear と言い、クマの仲間ですので cub を使います。ただの子グマではなく、「パンダの子ども」とはっきり表すときには panda cub のように言うこともできます。

パンダに限らず、ほかの動物も子どもを表す単語があるのはご存じですか。puppy、kitten あたりは聞いたことがあるかもしれませんね。代表的なものは覚えておくと「英語ができる人」と一目置かれるかもしれません!

親子どもイヌdogpuppyネコcatkittenクマbearcubアヒルduckducklingハクチョウswancygnetガチョウgoosegoslingシカdeerfawnヤギgoatkidヒツジsheeplambブタpigpigletウシcattle (bull, cow)calfカンガルーkangaroojoeyアザラシsealpup

皆さんがよく知っている「みにくいアヒルの子」は英語では The Ugly Baby Duck ではなく The Ugly Duckling となります。そして、その「みにくいアヒルの子」は、物語では duckling(アヒルの子)ではなく cygnet(ハクチョウの子)だったと最後にわかるのです!

「メリーさんの羊」は Mary Had a Little Lamb というのが英語のタイトルです。Mary’s Sheep と言っても通じないかもしれませんね。映画『羊たちの沈黙』の原題も sheep ではなく The Silence of the Lambslamb を使います。

ところが、面白いことに「三匹の子ぶた」は The Three Piglets ではなく The Three Little Pigs なのです。3匹の「子どもブタ」の話ではなく、3匹の「小柄な大人のブタ」の話だったのでしょうか(笑)。

この表に載せたもの以外にも、動物の子どもを表す単語はたくさんありますので、興味のある方はネットなどで baby animals と検索してみると楽しいでしょう。

cubは子グマや子パンダだけではない

ただ、クマとパンダのように似た動物や同じ仲間の動物が、同じ単語で子どもを表すのは理解できるのですが、まったく異なる動物が、同じ単語を共有して子どもを表すこともあるのがとても厄介です。たとえば、cub は子グマや子パンダだけでなく、lion(ライオン)や tiger(トラ)の子も指すことができます。calf は子ウシだけでなく、elephant(ゾウ)やwhale(クジラ)の子も表します。

親子どもクマbearcubパンダpandaライオンlionトラtigerチーターcheetahヒョウleopardアライグマraccoonセイウチwalrusウシcattle (bull, cow)calfゾウelephantクジラwhaleラクダcamelキリンgiraffeカバhippopotamusマナティーmanateeサイrhinocerous

また、ひとつの動物の子どもが、複数の単語で表されることもあります。たとえば、fox(キツネ)の子どもは、kitpupcub のどれでも表すことができるのです。

親子どもキツネfoxkit, pup, cubイノシシboar​piglet, shoat, farrowウサギrabbitkitten, bunnyイルカdolphinpup, calf

研修でこれらの単語をボードに書き出していたとき、ハナコさんが Isn’t a baby deer “a bambi”?(子ジカは「バンビ」ではないのですか?)と聞いてきました。Hanako, ”Bambi” is the fawn’s name!(ハナコさん、「バンビ」というのは、あの物語の子ジカの名前ですよ)!

ジャイアントパンダはなぜジャイアント?

筆者が言った panda bear という単語が気になったようで、ハナコさんのクラスメート、タロウさんが「さっき先生は panda bear って言ったけど、giant panda とは言わないのですか?」と質問してきました。英語ではパンダのことを単に panda と言う以外に、panda bear とも giant panda とも呼ぶことができます。どれでも同じように使って大丈夫です。日本語では「パンダ」か「ジャイアントパンダ」ですよね。

もともと19世紀には panda という単語は「レッサーパンダ」のことを指していました。ところが、20世紀に入ってから「レッサーパンダ」と「ジャイアントパンダ」は生物学的に近い種であると考えられるようになり、「ジャイアントパンダ」のことも panda と呼ぶようになったそうです。そして、ただ panda と言うだけではどちらのことを表すのか紛らわしくなり、lesser panda (小さいパンダ)と giant panda (大きいパンダ)と区別するようになったのです。

後に、両者は思われていたよりも生物学的に近い種ではないと判明したのですが、名前はそのまま残ってしまったようなのです。しかも、いつのまにか単に panda と言った場合には giant panda のほうを表すようになってしまいました。歴史的には「レッサーパンダ」のほうが先に「パンダ」だったのに、あとから「ジャイアントパンダ」に「パンダ」の座を奪われてしまったのですね。

ちなみにその「レッサーパンダ」ですが、英語では lesser というのが蔑称のように感じるということで、現在では通常 red panda と呼ばれています。lesser panda と言うよりも red panda と言ったほうがネーティブには通じると覚えておきましょう。

オフィスに戻ってから、panda という単語自体の語源が気になって、ジョンと一緒に調べてみました。ところが、どうやら正確にその語源はわかっていないようです。英語の panda という単語はフランス語から入ってきたらしいのですが、元をたどるとネパール語で「竹を食べる者」という意味の nigalya ponya というのが語源という説がありました。ただ、これが本当かどうかは現段階ではわかりません。ponya というのが panda という音に変わったのでしょうか。ともあれ、初めは「レッサーパンダ」のことを指していたということは、彼らも竹や笹を食べるということなんですね? レッサーパンダのことはよく知らなかったので、ひとつ勉強になりました。

そういえば、パンダはそもそもクマの仲間なのに、なんで肉食ではなく草食なのでしょう。いつも竹や笹を食べていますよね? ジョンに聞いたら、首をかしげながら Maybe they went vegetarian at some point.(たぶんどこかの時点で、ベジタリアンになったんだよ)と冗談を言いながら笑っていました。

パンダを使った英語表現

「レッサーパンダ」と「ジャイアントパンダ」が対になっているというのが、研修生たちには大発見だったようで、この情報には大きく反応していました。みんながどよめいている間に、今度はパンダキャラクター好きというナナコさんが、「英語にパンダが登場する表現があったら教えてほしい」と筆者に話しかけてきました。

英語で panda はそれほど歴史の長い単語ではないせいか、パンダを使ったイディオムはすぐには思いつかなかったので、調べて何かあったら次回教えると約束しました。

pandaの語源を調べ終わってから、ナナコさんとの約束を思い出して、ジョンに「パンダを使ったイディオムを知らない?」と尋ねると、しばらく考えてから首を振って「思いつかない」とのこと。しかたなく、とりあえずネットで調べてみることに……。

panda expression と入力すると、アメリカの中華料理ファーストフード店 Panda Express がトップに出てきました。筆者は Panda Express の「オレンジチキン」というオレンジ風味のたれが付いた鶏のから揚げが大好きなのです。しかも、知らない間に日本にも店舗ができているではないですか!! すっかり Panda Express のサイトにより道をして楽しんでしまいました。そのあと、必死にネットで探してみたり、ネーティブたちと一緒に考えてみたりしたのですが、残念ながら、パンダのイディオムは見つかりませんでした。

しかたなく Panda Express の情報をプリントアウトして、ナナコさんに Panda Express を紹介することにしました。翌週の研修で、ナナコさんにイディオムはいいものが見つからなかったと謝りながら、「オレンジチキン」を勧めてみたのですが、それにはあまり興味がない様子。プリントをまじまじと眺めて、「このロゴすごくかわいい! そこって、パンダグッズとかって売ってます?」と聞かれました。 I don’t think so, Nanako.(たぶんないと思うよ、ナナコさん)。でも、筆者の返答など耳に入っていない様子で、クラスメートたちのところに戻っていき、「これTシャツとかだったら、マジかわいくない?」とウキウキのナナコさんでした。