なぜいま、「自己紹介」が大切なのか(撮影:今井康一)

ヒット漫画の主人公から、人生を変える自己紹介術を学び、ビジネスシーンに活かすことができる!
人々がマルチに生きるようになる人生100年時代、自分を世の中に知ってもらうには、肩書や経歴などの情報だけでなく、いかに自分を印象付け、共感を呼び、支持を得るのかという「キャラクターの力」が必要になるだろう。
東洋経済オンラインでは、講談社モーニング編集部とタッグを組み、「最強の自己紹介研究プロジェックト」を発足。予防医学研究者の石川善樹氏を講師に迎え、2018年3月2日(金)、講談社本社(東京都文京区)にてセミナー「モーニング式 最強の自己紹介術」を開催する。
漫画雑誌『モーニング』の作品に登場するキャラクターたちから導き出された“面白くてためになる”最強の自己紹介術とは? 講師の石川氏に話を聞いた。

なぜ「自己紹介」を研究するのか

――石川先生は予防医学が専門ですが、なぜ「自己紹介」を研究テーマにしたのですか。


3月2日、「モーニング式 最強の自己紹介術」のイベントを開催します。詳しくはこちら

石川善樹(以下、石川):プレゼンでもスピーチでもなく、自己紹介というものの本質とはなんなのか、そこに興味を持ったのは、ほかならぬ自分自身が自己紹介に困った経験があるからなんです。

日々生きている中で、発言の内容や、その話し方、話を聞いているときの振る舞いなどを通して、人は無意識のうちにいろんなことを他者に対して紹介しているわけですが、いざ「自己紹介しよう」と思うと困る。なぜ困るのか。それは、自分が何者でもないからなんですよね。

全国的に著名な方は、自己紹介したことがないと思います。それは、その人が何を成し遂げたのか、みんなが知っているからです。でも、普通はそうではないから、ほとんどの人は自己を紹介しなければなりません。こう考えると、自己紹介というものの理想の状態は「自己紹介しない」ということかもしれませんね。

僕が特に困ったのは、違う業界の人と会ったときです。僕は、数年ごとに、所属しているコミュニティががらりと変わる人生を歩んでいるのですが、学生の頃は、まったく新しいコミュニティの人たちの中へも問題なく飛び込んでゆけたのに、社会人になるとそうはいかなくなってきました。

自分にとって新たな業界の人と会うことになると、たいてい「はじめまして」「何をやっている人なんですか?」「予防医学の研究です」という流れになります。で、ありきたりな会話が2、3往復あって、「ふーん。まあ、よろしく」と言われて終わってしまう。

興味持たれていないなあ、こちらは相手の方にいろいろと教えてもらいたいし、ディスカッションしたいと思っているのに、これは困ったなと。そこが思考のスタートになりました。

自己紹介の目的とはなにか?

相手からすれば、僕は、何者でもないわけだから、興味を持ってもらうには効果的に自己紹介しなければなりません。そこで、そもそも自己紹介の目的とはなんだろうかと考えてみました。なんとなく「相手に理解してもらうこと」だと思っていましたが、よくよく考えるとそれは違う。


石川 善樹(いしかわ よしき)/ 予防医学研究者。ハビテック研究所長。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士号(医学)取得。「人がよりよく生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など(撮影:今井康一)

たとえば、僕がなぜ予防医学に興味を持ち、どのような道をたどってここにいて、今後どうしたいのかをとうとうと話したとします。そして、相手がそれを我慢して聞いてくれて、僕のことを完璧に理解してくれたとしましょう。

しかし、その人が他の場所で、僕の話したことを話題にしてくれなければ、なんの意味もない。自己紹介の目的は、「自分がいない場面でも、自分のことが話題にあがること」です。これが成立したとき、その自己紹介は正解となる。そう考えると、むしろ理解されないことも大事ではないかと思うようになりました。

たとえば「この前、石川さんていう人に会ったんだ、なんだかよくわかんないんだけど面白い人でね」なんていう興味の持ち方もあります。理解してもらわないほうが話題になりやすかったり、相手が興味を持って、理解したいと思ったりすることがあるということです。

自己紹介にはステージがあると考えます。第一段階は、自分の業界内で、自分がいないときでも自分のことが話題にあがること。その次が、業界の外でも話題になること。

この業界内の人、業界外の人というのは「現代の人たち」のことです。究極的に言えば、これを超えて「後世の人たち」までが、自分のことを話題にしてくれたらすばらしいし、そんなことを思って生きていけたらすごいんじゃないかと想像したりもしました。

しかし、業界内、業界外、後世の人、どれも条件や感性がまったく違うわけです。現代の人たちの中で一世を風靡したとしても、それは今という時代に寄りすぎている可能性がありますし、後世の人には残らないかもしれない。かと言って、後世の人に話題にされるよう振る舞おうとすると、今の人にはまったく刺さらない可能性がある。

まずは、自分の業界内の人に認めてもらわないと話にならないわけですが……こういった話について、具体的なところを今度のセミナーでじっくり話そうと思っています。

――今回はなぜ講談社『モーニング』という漫画誌を研究材料に選んだのでしょうか?

石川:自己紹介の具体的な方法論を考えたとき、まず、「ストーリー」よりも、自己という「キャラクター」のほうが大事だと考えました。だって、自分が語ったストーリーを、誰かがそのまま語ってくれるわけがありませんから。自分をどう紹介するかというプレゼン型のスピーチよりも、「どういう人物なのか」というキャラクターを意識したほうがよいわけです。そこで、幅広く支持されつづける漫画のキャラクターに注目しました。

いろんな漫画誌がありますが、“すごいキャラクターによるすごい話”が並ぶ少年誌とは違って、『モーニング』は、一貫して“平凡なキャラクターの、非凡な話”がテーマとなっています。『宇宙兄弟』『クッキングパパ』、どれもキャラクター作りが非常にうまくて、読んでいると「自分もこんなふうになれるんじゃないか」と元気になれるんですよ。

だからこそ、自分のような平凡な人間でも、『モーニング』のキャラクターを研究していくことによって、なにか非凡なものとして話題にあがる自己紹介のヒントが見つかるのではないかと考えました。

キーワードは「対立、葛藤、展開」

――セミナーで配布されるレポート「モーニング式 物語れる自己紹介術」では、ヒット漫画の主人公を研究して導き出した、一定の法則について触れられていますね。

共感されるキャラクターには、「対立、葛藤、展開」があるという部分ですね。自分がいない場所で、なぜ自分のことが話題にあがるのか。それは、誰かがなにかの困難に当たったとき、「こういうとき、あの人ならどう考え、どう行動するだろうか?」ということを頭のなかに思い浮かべるからです。つまり、これが「キャラクター」です。

詳しくは、セミナーでお話ししますが、対立する状況から、葛藤と展開がはじまるという流れに「共感」の秘密が隠されていますし、その人のキャラクターを形作るヒントも見えてくるでしょう。

今回の研究で、僕自身、はじめて『モーニング』が好きだった理由がわかりましたよ。平凡なのに非凡なことを語るキャラクターの秘密とはなんなのか。創刊35年の『モーニング』の歴史から抽出された自己紹介の研究成果を、当日発表したいと思います。