そだねージャパン、NHKのAI新人アナが実況

写真拡大

 日本人選手のメダルラッシュに沸く平昌(ピョンチャン)冬季五輪。その舞台でNHKの新人アナウンサーが実況デビューを果たした。その名は「ロボット実況」。NHK放送技術研究所(放送技研、東京都世田谷区)が開発したその新人アナは、堂々たる声でアイスホッケーやカーリング、スケルトンなどの熱戦の模様を連日、伝えている。

 「カナダ、ジョンストン選手のシュート。ゴール!」―。アイスホッケー女子、カナダ対OAR(ロシア出身選手で構成されたチーム)の一戦でロボット実況の声が響いた。新人アナらしからぬ女性の落ち着いた声で2時間以上の試合中継を無事にこなした。

 ロボット実況は人工知能(AI)による音声合成技術などを活用して実現した。五輪期間中は国際オリンピック委員会(IOC)傘下で放送サービスを手がけるオリンピック放送機構(OBS)が試合経過の情報を記した競技データをリアルタイムで各国の放送事業者に配信する。

 放送技研はその競技データを基に、即座に自動で日本語の実況文章を作り、音声を合成して生中継の配信映像に合わせて流すシステムを構築した。実況内容は字幕でも付与できる。放送技研ヒューマンインターフェース研究部の岩城正和部長は「OBSから配信される膨大な競技データからアナウンサーとして話すべき内容を自動で判断して実況できる」と強調する。

 同システムは2016年のリオデジャネイロ五輪の全種目で内部実験を行っており、満を持してデビューした格好だ。23日まで毎日1競技程度実況する。ここまでの成果は上々で、NHKは「ライブ配信の映像に対してリアルタイムで実況を付与できている」と手応えを強調する。

 五輪は多数の種目が同時に行われる。インターネット配信を活用することで多くの競技を中継できるようになったものの、中継で肝心の実況は人手の問題で付けるのが困難だった。ロボット実況はその代替になる。特にNHKとしては試合状況を音声や字幕で伝えることで、視覚や聴覚に障がいのある人が多様な競技の生中継を楽しめる環境を整える目的がある。

 また、NHKは今回の配信について20年の東京五輪・パラリンピックでの活用に向けた試験と位置付ける。その意味では「配信される競技データが少ない種目は実況しない時間が多くなる」(NHK)という課題を確認した。このため今後は競技データ以外の情報の活用を模索し、内容の充実を図る考えだ。
(文=葭本隆太)