ブランド品に中古品。必要なものはどうやって手に入れる?


 私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化を見つめ、さまざまな研究活動を行っています。

 前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。

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ブランド物は損、中古品は得?

 博報堂生活総合研究所では昨年から、「お金の未来」をテーマとした研究を進めています。生活者のお金と幸せのありかたやその未来像などを展望するべく、さまざまな調査を行ってきました。前回のコラムでは「キャッシュレス社会」の賛否について紹介。全体では賛否が半々と拮抗しつつも、男女別にみるとかなり温度差があることや、賛否それぞれの理由について掘り下げました。

 本コラムでも引き続き「生活者とお金」について見ていきたいと思います。
今回私たちが行った調査のひとつに、「損得調査」というものがあります。お金や買い物、生活まわりのさまざまな物事について「○○は得と思うか? 損と思うか?」を二択で答えてもらう調査です。いろいろな項目の損得意識を聞いた中で、興味深いと感じた回答がありました。

ブランド物を買うことは得だ/損だ
中古品を買うことは得だ/損だ

 

 こちらの2つ、皆さんはそれぞれの損得をどんなふうにお考えでしょうか。

 生活者3600名の回答を集計すると、こうなりました。

ブランド物を買うことは 得だ:30% / 損だ:70%
中古品を買うことは 得だ:61% / 損だ:39%

 

出典:博報堂生活総合研究所「」 (2017年11月、全国20〜69歳男女3600人、インターネット調査)


 ブランド物を買うことに対しては損だと思っている人が7割と多くを占めるのに対して、中古品では損は4割、得だという意識が6割と、こちらが多数派になっています。

 損か得かの二択という大きな問いかけなので、回答者の細かい考えまで読み取ることはできませんが、少なくともこの結果からは「買って得だと感じるのは、ブランド物より中古品」という意識を多くの生活者が抱いていることがうかがえます。

「中古品」に関してもうひとつ、こんな問いかけをしています。

【A】お金があったら、新品を買いたい
【B】お金があっても、中古で構わない

 

 こちらの【A】【B】について、どちらの考え方に近いかを聞いてみたところ、結果は以下のようになりました。

【A】お金があったら、新品を買いたい 66%
【B】お金があっても、中古で構わない 34%

 

「お金がある」という条件つきなので、さすがに「新品」が上回っていますが、それでも3分の1の人が「中古で構わない」と考えているようです。先ほどのブランド品・中古品の損得意識とも照らして考えてみると、「中古品」に対してポジティブな捉え方をしている人が個人的に思っていた以上に多く、興味深く感じられました。

フリマアプリの普及で中古品が身近に

 このような中古品に対するポジティブな意識は、昨今のフリマアプリを利用した個人間取引の伸張とも関係がありそうです。個人同士が不要になった物品などを売り買いできるフリマアプリは、近年さまざまな事業会社がサービスを展開。国内最大手のアプリダウンロード件数は、2017年末時点で6000万件を超えたそうです。

 このアプリについては2017年6月のコラムでも取り上げており、その時のダウンロード件数が4000万件だったことを考えると、物凄い勢いで伸びていることが分かります。

 博報堂生活総合研究所が実施した調査でも、これらサービスの利用状況を聞いています。「利用したことがある」との回答が44%となり、さらに「今後利用したい」との意向を聞くと、58%にまでのぼりました。

出典:博報堂生活総合研究所「」 (2017年8月、全国20〜69歳男女1500人、インターネット調査)


 私の知人でも、フリマアプリを使い始めて約半年で、不要になった品物を300件ほど売ったという女性がいます。半年で300件ということは、1日に1〜2件のペースで誰かと取引をしているわけですが、彼女いわく「自分はまだまだ。上には上がいますよ」とのこと。フリマアプリの利用者が増え、アプリを介して自分の身の回りの中古品を売ったり、誰かから買ったりすることが、日常のワンシーンとして定着しつつあるようです。

 このように日頃から中古品に接する機会が増えたことで、少しずつ「誰かが使ったもの」という中古品特有の抵抗感も薄れ、上述のようなポジティブ意識の醸成につながっているのかもしれません。

フリマアプリがお金・買い物意識を変えていく?

 そんなフリマアプリに関連する、お金や買い物まわりの意識調査結果をまとめてみました。先ほどの設問と同様、【A】【B】の、どちらの考え方に近いかを聞く形式で尋ねています。(以降は博報堂生活総合研究所「お金に関する生活者意識調査」2017年11月より)

●不用品は売る VS 捨てる
【A】不用品は(フリマアプリやリサイクル店などで)売る方だ 41%
【B】不用品は捨てる方だ 59%


●ものを取っておく VS おかない
【A】いつかお金になるかもしれないという理由で、ものをよく取っておく方だ 42%
【B】いつかお金になるかもしれないという理由では、ものをあまり取っておかない方だ 58%

 

 どちらも【A】は少数派ですが、自分では価値がないと思っていたものが、フリマアプリやリサイクルショップで意外な値段で売れたりすると、使わなくなったからといって簡単に処分してしまうのがもったいないという意識が芽生えるのかもしれません。

 一方で、そうやって売れるかどうか考えているうちに、いつまでも家の中が片付かないのが嫌だったり、あれこれ損得を考えること自体が面倒だったり・・・という人は、【B】の意識でさっさと処分してしまうのでしょうか。現状はこちらが多数派ですが、フリマアプリがさらに浸透すると、このあたりのバランスも変わってくるのかもしれません。

●売るときの価値を気にする VS 気にしない
【A】ものを買うときは、それが中古品として高く売れるかを気にする 25%
【B】ものを買うときは、それが中古品として高く売れるかは気にしない 75%

 

 自分のために買い物をするときの判断基準は、普通に考えれば「自分の好み」だろうと思います。ですが【A】の意識は「自分の好み」だけではなく「中古品として高く売れるか」も判断基準になっているというもので、4分の1の方がこちらを回答。中にはもしかしたら「自分の好み」以上に「中古品として高く売れるか」を優先して買っている人もいるかもしれません。

 以前から中古品市場が築かれている自動車では、中古でも売れやすいようボディカラーは“無難な”色を選んだりすることがあります。フリマアプリの浸透は、奇抜さより無難さ、自分の好みより万人受けを優先するような買い方を他の製品領域にももたらすのでしょうか。流れしだいでは、売り手サイドも商品訴求の仕方を変えていく必要が出てくるのかもしれません。

●値切るのは楽しい VS 恥ずかしい
【A】買い物をするとき、値切るのは楽しい 38%
【B】買い物をするとき、値切るのは恥ずかしい 62%

 

 こちらは【B】の「値切るのは恥ずかしい」が多数派。百貨店やスーパー、コンビニなど基本的に値引き交渉を受け付けないお店もあれば、個人でやっているお店や一部の家電量販店など、値引き交渉の余地があるお店もあり、普段どんな所で買い物をしているのかにも関係がありそうです。

 フリマアプリはリアルで行われるフリーマーケット同様に、売り手と買い手のコミュニケーションの積み重ねで取引が進んでいくため、常識の範囲内ならば値引き交渉にも寛容なようです。

 相手とのやりとりや駆け引きを楽しみながら買い物をするスタイルが伸びてくれば、【A】の意識が主流になる日がやってくるかもしれません。それに呼応して、値引き交渉NGからOKに転換することで、人気を集めるお店も出てくるのでしょうか。

●お金が足りなかったらつくる VS 待つ
【A】お金が足りなかったら、何か売ったり、余分に働いたりして、お金をつくる 29%
【B】お金が足りなかったら、他の支出を減らしたり、貯金をしたりして、お金が貯まるまで待つ 71%

 

 日本人の美徳のひとつのように語られることもある「貯蓄」。お金が足りないときのスタンスも、節制して貯まるのを待つ【B】が多数派のようです。

 ですが、お金をつくるという積極策に出るという人も3割います。お金をつくる方法は人それぞれでしょうが、最近はフリマアプリをはじめとして、個人が自分のさまざまな“資産”を生かしてお金を得られるサービスが急速に広がりを見せています。自身の特技を生かす「手に職」タイプのものもあれば、部屋に空きスペースがある、自転車を運転できるなど、そこまでハードルが高くないものまでさまざまです。

 博報堂生活総合研究所の調査では、これらサービスの利用状況はまだまだ多くはありませんが、今後の利用意向を聞くとおしなべて増加。上述のようにフリマアプリ利用意向も伸びており、「お金をつくる」ことへの関心が垣間見えます。

●個人間取引サービスの利用経験と利用意向
 特技・スキルを売買するサービス 3% → 21%
 空きスペースを貸し借りするサービス 3% → 15%
 空き時間に運転や配達などの仕事をするサービス 1% → 19%
 自分の仮想株式を公開するサービス 1% → 10%

 

出典:博報堂生活総合研究所「」 (2017年8月、全国20〜69歳男女1500人、インターネット調査)


 いかがでしたでしょうか。フリマアプリをはじめとする個人間取引ツールが普及していくことで、お金は徐々に個人と個人の間を行き交うものになりつつあります。それらの行動が積み重なることで、生活者の中古品へのイメージや、値切ることへの意識、商品購入の基準など・・・いろいろなものが変化していく可能性があります。

 今は少数派の行動や思考が、この先、多数派になっていく。そんなことも十分考えられるでしょう。個人間取引をされている方は、ふだんの買い物と個人間取引とで気持ちにどんな変化が生じるか、意識的に追ってみるのも面白いかもしれません。

筆者:三矢 正浩