ホテル経営に乗り出したレアル・マドリードのクリスチアーノ・ロナウド選手(写真:Jon Nazca/ロイター)

世界で最も稼ぐスポーツ選手、レアル・マドリードのクリスチアーノ・ロナウドが、「ホテル王」の道を歩み出している。ロナウドは今年中にもスペイン・マドリードと米ニューヨークに自身のイニシャルと背番号を冠したホテル「ペスタナCR7」をオープンする予定だ。

ロナウドがマドリードでホテルをオープンするニュースは2月6日付でスペインの各紙が一斉に取り上げた。『El País』は、「サッカー選手としての人生は短い。もう33歳になったことを考えると、間もなく収入も減る。行動派の彼だけに、将来も豪華なライフを確保するために自分の資産を投資することを決心した。その1つがホテル事業だ」と報じた。

すでにポルトガルで2軒のホテルを展開

実はロナウドがすでにホテル事業をやっていることは、日本ではあまり知られていないかもしれない。が、彼はすでに、ポルトガルの大手ホテルチェーン、ペスタナとのジョイントベンチャーを通じて、自身の出身地マデイラとリスボンにそれぞれ4つ星ホテル「CR7」を展開している。そして、今度そのCR7ブランドの新たなホテルをマドリードにオープンするというわけだ。部屋数は160室で、個性あふれるホテルにするとしている。

現在、マドリードでホテルが開設される予定のグラン・ビア29番地には、9階建てのビルがあり、その1階から3階までを1923年創業の由緒ある書店「Casa del libro」が占めている。建物自体は1926年に建設されたもので、床面積は1万949屬望紊襦

スペインメディアの報道によると、計画では1階を書店として残し、2階から8階までをホテルに改装。最上階はロナウドのペントハウスになる見込みだ。総工費は1400万ユーロ(18億9000万円)。工事は間もなく開始され、1年かけて改装工事を行う予定だという。

当初、ホテル建設の話題が持ち上がった際には、ビルの1階もホテルになるといううわさが流れ、多くの愛読家から「Casa del Libro」に問い合わせがあったそうだ。こうした経緯から、特に由緒ある書店がなくなるのではないかという愛読家からのこのホテルに対する関心も高い。一般の市民レベルではまだできていないので、反応は薄いようだ。ただ、マドリードで旅行代理店を経営している筆者の知人に尋ねると、「いったん出来上がれば、注目を集めるのは間違いない」という答えが返ってきた。

ロナウドはこのほか、今年中にニューヨークのタイムズスクエア、そして来年にはモロッコのマラケシュに同クラスのホテルを開業する計画で、ポルトガルの2軒と合わせて合計500部屋規模のグループにしたいとしている。その後3〜5年内には、ホテルの数を倍増させる青写真を描いている。

ロナウドがホテル業に進出したのは2016年のこと。ポルトガルを中心に世界15カ国で4〜5つ星ホテルを運営するペスタナと50%ずつ出資して不動産ビジネスを開始した。ロナウドは経営のまったくの素人ということで、ペスタナがホテル経営のノウハウを提供し、ロナウドが国際的な名声を利用して集客するというジョイントベンチャーである。

体型維持のための個人指導サービスも

一方、ロナウドの「CR7」というブランドは、2013年に下着と靴下から始まり、今では衣料品、香水、靴、アイソトニック飲料などに広がっている。しかし、ロナウドの当初からの夢はホテルを開設することだったという。今回の発表に際しロナウドは、「ホテル業にはずいぶん前から関心を持っていたが、そのチャンスはペスタナ・ホテル・グループのドニシオ・ペスタナ会長との関係から自然にやってきた」とプレスリリースでコメントしている。ちなみに、ペスタナが最初にホテルをオープンしたのもマデイラである。

では、ロナウドブランドのホテルとはいったいどんな感じだろうか。

マデイラにある「CR7プラザ」の入り口には、彼が獲得したトロフィーやメダルなどの展示室もある。49部屋あるこのホテルは主に若者をターゲットとしており、宿泊料も1泊135ユーロ(1万8200円)〜と比較的良心的だ。ロナウドは体型管理に力を入れていることで知られているが、それを示すかのようにホテルにはフィットネス設備やサウナ、さらには体型維持のための個人指導サービスまである。

一方、リスボンにある「CR7 リスボン」も同じく若者を顧客の中心に据えている。ホテルの外壁にはロナウドの姿が映写できるようになっているほか、エレベーター内部の壁面にも彼がスポーティング・デ・リスボア、マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリードの3チームで活躍した場面を映写。浴室のミラーにはロナウドの顔が写り、絨毯には足跡がデザインされているなど「ロナウドだらけ」の様相を呈している。82部屋あるホテルの宿泊料は、1泊250ユーロ(3万3750円)〜1250ユーロ(16万9000円)となっている。

ポルトガルの生活レベルからすれば宿泊料は安くない。しかし、間違いなくサッカー界のレジェントとなるプレイヤーのホテルということを考えれば、決して高すぎるということはないだろう。

実際、ホテルの経営も悪くないようだ。ペスタナは、ポルトガルのCR7の業績は開示していないが、同社の2016年のアニュアルレポートによると、海外からの観光客が増えていることもあって、ポルトガルでのホテル収入は前年比12%伸びている。

こうした中、スペインなど海外進出を目指すわけだ。近年、スペインを訪れる観光客の数は伸びており、国連の世界観光機関(UNWTO)によると、2017年のスペインの観光客数は前年比約10%増の8200万人を超えた。米国を抜いてフランスに次ぐ世界2位の観光大国となった。

一方、カタルーニャ地方が独立問題に揺れ、観光客の急増などに伴って2年前から新たなホテルの建設が禁止されている中、マドリードはホテルの建設ラッシュに沸いている。今後は、フォーシーズンズやスターウッド、ハイアットなど大手ホテルチェーンもマドリードに新たなホテルをオープンさせる計画としている。

「カネ」だけが目的なわけではない

ロナウドのホテルは、こうした「激戦区」に参入することになるが、4つ星クラスのホテルは、価格と高級感の取り合いが最も厳しく評価される傾向にある。ロナウドのホテルも激しい競争にさらされそうだが、ロナウドの性格から推断して個性あるホテルになることは間違いない。すでに、2泊以上宿泊する利用者には、ロナウドの肉筆のサインの入ったサッカーボールをプレゼントすることは決定しているそうだ。

スポーツ選手が、ビジネスに乗り出すことは今や珍しいことではない。が、多くのスポーツ選手の場合、スポーツ用品などに自分の名前を入れてそれが商標ブランドとして販売されることで満足して、それ以上のチャレンジは控える傾向にある。

となると、なぜロナウドがホテル業に進出するのか気になるが、米『フォーブス』誌によると生涯年収が703億円に上るとみられているロナウドだけに、「カネ」だけが目的ではないだろう。実際、ロナウドは自分の名前とブランドCR7が彼の息子たちへと受け継がれ、それが永久に存続し続けることを望んでいるのだという。彼の長男クリスチアーノ・ジュニアはまだ7歳だが、父親のブランド製品の販促に協力して撮影スポットなどに父親と一緒に参加している。

スペインのスポーツ紙『Marca』は、「クリスチアーノ・ロナウドは、サッカー選手として成功しているのとは別に、確固たる企業組織を築きつつある」と評価している。ひょっとしたら世界的なサッカー選手としてだけではなく、やり手経営者としても後世に名を残すかもしれない。