「わかりみがすごい」若者用語の基礎知識

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■「はげど」の意味は「このハゲ〜!」!?

来年70周年を迎える『現代用語の基礎知識』は、毎年12月上旬に発表される「新語・流行語大賞」の選考も行っている。「時代・流行」カテゴリーの【若者】のページに掲載される言葉は、大学生へのアンケートのほか、編集スタッフが大学生や高校生が集う街や大学に繰り出し、聞き耳を立てて情報収集した言葉などを厳選しているという。

「11月に発売する2018年版の【若者】のキーワードは、『仲間内だけで伝わる言葉』『短縮した言葉』『中性化』です」

そう教えてくれたのは、編集長の大塚陽子さん。

そもそも、若者言葉は高校生や大学生が仲間内だけで通じる言葉をつくり出したものだ。一般的に広まる頃には、当の本人たちはほかの言葉を生み出していて、もう使っていない。

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ステップ1●ここ数年使われ続けているワード

・だいじょばない/丈夫ばない=大丈夫ではない。「部長が同席するみたいだけど大丈夫?」「全然だいじょばないー」

・はげど(禿同)=激しく同意するの略。「残業禁止、仕事持ち出し禁止って、終わるわけない」「はげど」

・それな=「それ、納得」「それ、なるほど」など、同意するの意味。「○○課長は日によって指示が変わる」「それな!」

・詰んだ=将棋の「詰み」(相手が何を指しても次に玉を取られる状態)と同じく、逃げ場のない状態を示す。「納期に間に合わず、詰んだ」

・ありよりのあり=「あり」「なし」を問われたら「かなりあり」。ほか「なしよりのあり(ないようであり)」「ありよりのなし(あるようでない)」「なしよりのなし(絶対にない)」がある。

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※編集部追記(2018年2月21日):「詰んだ」の説明が誤っていたため訂正します。

その一方、その言葉を使う世代が20代以上にも広がり、数年にわたって同書に掲載が続く言葉もある。それがステップ1で紹介した「ここ数年使われ続けているワード」だ。そのなかでも20代女性も使っているであろう言葉をピックアップした。

ちなみに、「はげど」は「このハゲ〜!」と言われているわけではなく、「激しく同意する」という意味。この時点でわからないと女性陣から「塩対応(神対応の逆で、冷たい対応)」されてしまうかもしれない。

■会話のきっかけに「わかりみがすごい」

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ステップ2●語尾が「み」ワード

・つらみ=辛(つら)い。「電車激混み、つらみ〜」

・やばみ=ヤバイ。「起きたら始業時間の30分前。やばみ」

・さびしみ=寂しい。「彼氏が転勤で遠距離に。さびしみ」

・うれしみ=うれしい。「旦那が単身赴任に。うれしみ」

・わかりみ=わかりやすい。「この資料はわかりみがすごい」

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ステップ2で紹介した「語尾が『み』ワード」は、18年版に登場する比較的新しい表現で、かわいらしさや優しさを表すためにつける。シニアディレクターで前編集長の清水均氏によると「このワードが特徴的なのは、女性だけでなく若い男性も使っていることです。脱毛や肌のケアをする『美容男子』も増えていますから、いまはかわいくふるまいたいと思う男性も多い。流行り言葉も中性的になっていると思います」。

もしも単調な資料作成に嫌気がさしていそうな女性社員がいたら、「君の作ってくれた資料のわかりみがすごいと、会議でも評判だったよ」などと褒めつつ、会話してみてはいかがだろう。17年版では語尾に「たん」をつけた「かわたん(かわいい)、つらたん(つらい)」が掲載されており、このバージョンも若い男性でも用いるそう。

語尾を「み」にするだけなら意味は推測できそうだが、ステップ3で紹介した「4文字短縮」「超短縮」のSNSワードは、ぐっと難易度があがる。

■メールで報告がきたら「り」

「短縮言葉は昔から日本人が好んで使ってきました。『キムタク(木村拓哉)』『花金(花の金曜日)』『朝活(出勤前に朝活動すること)』など、4文字に短縮するのが伝統的だったのですが、『了解』を『りょ』『り』と表現するなど、SNSで打ち返しやすいよう、最近はさらに短くなっています」(清水さん)

SNSの画面上のやりとりはスピード感があるために、新しい言葉が生まれやすいのだという。なんでもメールで報告してくる部下がいたら、「り」と返してみては。

「ちな」(みに)、話し言葉の場合は、広がり始めてから5〜6年かかって定着するか、消えていくかだという。

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ステップ3●「4文字短縮「」超短縮」のSNSワード

・ぜんつま=全然つまらないの意。「会議ぜんつま」

・メンヘラ=2ちゃんねるのメンタルヘルス板にいるような、精神的に病んでいる人。「帰宅電車でメンヘラに絡まれた」

・しごおわ=仕事終わったの意。高校、大学生は「バおわ」=バイト終わった。

・り/りょ=了解の意。「本日直行します」「り」

・ちな=ちなみにの意。「ちな虎」=ちなみにタイガースファン。

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「『ほぼほぼ』『なるはやで』『巻きで』なんて言葉はもう定着しましたよね」(大塚さん)。ステップ3のワードを使いこなせるようになれば、「神ってる(神がかっていること。昨年流行語大賞をとった言葉)」と絶賛されるかもしれない。

こうして見ていくと、バブル期に「ナウい」「マブい」「ごっつ」などの言葉が流行ったのと同じようなもので、若者言葉を恐れることはなにもない。ここに載せたワードも、あと数年後に一般的に使われるようになる可能性も大いにある。

最後に、懇親会などで使ったらウケルかもしれない言葉を番外編としてピックアップしてもらった。「君は○○なフレンズなんだね」は褒めるときだけでなく皮肉を言う際にも使えるため、誤解のないように使いたい。「よろしくピース」は動作付きなので、ノリよく試してほしい。ただし、「かわたん」と言われるか、「きもい」と思われるかはあなた次第なので、ご注意を。

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▼番外編『現代用語の基礎知識』編集部の注目ワード
使いこなしたらウケルかも!?

・よろしくピース
意味は「よろしくね」とかわいくお願いすること。下記のようにさまざまなポーズをしながら使う。
腕を上げて横向きのピースサインをつくり、同じ側の目尻にピースサインがくるようにして「よろしくピース」と言う。
上記の両手、両目バージョンで「よろしくピース」。
ピースサインをした手と反対の目の上で横向きのピースサインをし、もう片方の目の上までピースサインを移動させながら「よろしくピース」。

・○○なフレンズなんだね
2017年の春頃、テレビアニメ「けものフレンズ」のファンから使われはじめ、流行った言葉。
意味は「あなたは○○という人なんだね」と、皮肉にも褒めるときにも使う。
「君はメールで報告するのが好きなフレンズなんだね」

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(干川 美奈子)