NTT東が、光ファイバーを用いたインターネット接続サービス「Bフレッツ」の提供を2001年に開始して以来、そのスピードは、当初の10M/100Mbpsから高速化を続け、2015年にソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供を開始した「NURO 光」の新プランで、ついに10Gbpsに達した。2017年には、「NURO 光 10G」の対象地域が拡大するなど、多くの地域で10Gbpsのインターネット接続サービスが利用可能になっている。今回は、次世代PON「FOAS」と、IEEEの10G-EPON後継となる100Gbpsの「100G-EPON」標準化策定状況について解説する。(編集部)

次世代PON「FOAS」、具体化はまだ先

 「NG-PON2+」の次についても、もちろん仕様策定は始まっている。ちょっと順序が逆だが、「FSAN(Full Service Access Network)」という業界団体が、2016年11月に今後のPONと、その標準化に関するロードマップを示している。2020年には、「NG-PON2+」と並んで「XG(S)-PON+」という文言もあるが、これは要するに対称型(上り下りで同じ速度)のNG-PON2+と思われる。

次世代PONに位置付けられる「FOAS(Future Optical Access System)」に関しては、いまだに具体的な議論は始まっていない。「Alternative ODN(Optical Distribution Network)」は、要するにスプリッターである

 ちなみに以前のロードマップは以下のようなかたちで、ここで示された内容はほぼ実現している。

このロードマップで示された内容はほぼ実現している

 最初のロードマップにある「FOAS(Future Optical Access System)」に関して言えば、直接的な議論ではないのだが、イタリアの携帯電話キャリアであるTIMのTommaso Muciaccia氏が執筆した論文では、NG-PON2世代では「TWDM(Time and Wavelength. Division Multiplexing)」(時間と波長多重)で済むが、NG-PON3世代があるとしたら「DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)」(高密度の波長多重)が必要になり、さらにその先は「UDWDM(Ultra DWDM)」か「OCDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)-DWDM」「OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)-DWDM」になるとしている。

 OCDMとOFDMは、いずれも変調方式の手法で、単に0/1だけで信号を送るのではなく、1回の転送で複数bitを転送できるようにできるとする。要するに、これ以上ビットレートを上げるのは難しいため、波長を増やす(UDWDMの方向)か、1波長あたりの実効転送速度を上げる(OCDM-DWDM/OFDM-DWDM)か、という話になるわけだ。

Ultra DWDMはともかく、「Super DWDM」と称されるものは既に存在しており、1本の光ファイバーで1000波長近くを通すことが可能である

 いずれにしても、現在の技術では可能ではあるものの、非常に高価になってしまうため、PONで採用するのは難しいと考えられている。最初の図で、FOASに"Disruptive technologies, Innovative R&D"とあるのは、何か価格破壊が起き得るような革新的な技術を生み出すR&Dが必要、という意味であり、FOASの具体的な話は、まだ見えてきていない。

50Gbps×2で100Gbpsを実現する「100G-EPON」、2020年へ向け標準化

 さて、これに先立ってもう少し現実的なプランの策定も始まった。IEEEは「10G-EPON」に続き、最大100Gbpsをサポートする「100G-EPON」の仕様策定に向け、2015年5月にStudy Group(SG)を立ち上げ、2016年1月に「IEEE P802.3ca TF(Task Force)」を構成。以後、このIEEE P802.3ca TFで審議が行われている。基本的なアイディアとしては、NG-PON2+同様に1波長あたり25Gbpsとなっている。前回も説明した通り、2015年にはIEEE 802.3bmが標準化を完了しており、1波長あたり25Gbpsは技術的に十分可能、という判断があったようだ。

 IEEE P802.3caでは、速度として10Gbps/25Gbps/50Gbps/100Gbpsの4種類があり、実際には下りと上りのそれぞれで、以下7種類の組み合わせのONUをサポートする、というあたりから議論はスタートしている。

下り 上り 25G 10G 25G 25G 50G 25G 50G 50G 100G 25G 100G 50G 100G 100G

 実際には、たとえ25Gbpsであっても問題が多く、その結果、標準化の時期はどんどん後ろにずれることになった。2016年1月におけるスケジュールでは、2018年7月にDraftが完成し、10月に標準化へこぎつける予定だったが、現在のスケジュールでは、標準化作業は2020年4月までとなっており、内容にもかなりの変更があった。それが記されている2018年1月の「P802.3ca Objectives[Proposed Revision]」(PDF)を見ていこう。

2016年1月における標準化のスケジュール。2016年中にDraft 1.0が出る、というある意味きわめて楽天的な見通しだった

これは2017年7月におけるもので、今のところこれが正式なもの。ちなみにDraftは現在0.7の段階である

 資料によれば、1本の「SMF(Single Mode Fiber)」を利用しての100Gbps転送は放棄。可能性があるとすると、2本のSMFそれぞれを50Gbpsづつ通す形とする。これは、4波長の送受信を行う「PMD(Physical Media Dependent)」(物理的なトランシーバー)の開発が非常に難しい、との判断がある。

 この決断は、2017年11月のミーティングで行われた。ただ100Gbpsを完全に排除することには、「Removing the 100Gb/s objective completely is a shortsighted decision. Don't throw the baby out with the bathwater.(100Gbpsを排除するのは近視眼的な決断である。赤ん坊(=100Gbps)を風呂に投げ込むような真似はしない)」と述べられており、当面は50Gbps×2という構成を残すことにしたそうだ。

 これは、実際にPONを利用する事業者の多くが、2本以上のファイバーを1カ所に引き込んでいるケースが多く、潜在的に可能性があるということらしい。ちなみに50Gbps×2については、単純に50Gbpsの波長多重を拡張したチャネル多重とし、物理層で同期を取るのではなく、その上の論理層でトランキングを掛ける仕組みを取るとしている。

 信号速度そのものは、10/25Gbpsの2種類とし、50Gbpsは、25Gbpsを2波長多重化する。下りは25/50/100Gbps(50Gbps×2)、上りは10/25/50/100Gbpsをサポートする。

 また、既存のPONとの互換性も“ある程度”維持する。実際には古い光ファイバーの中には、挿入ロスが許容範囲を超えるものがあり、そのため互換性を保てる光ファイバーの規格が厳密に決められている。さらに、既存の10G-EPONとXG-PON、XGS-PONと波長が重ならないようにすることで、従来のPONとの併用も可能としている。

 今のところP802.3caの議論を見ている限り、50Gbpsまでは、容易とは言わないものの技術的な難易度はそう高くなく、比較的堅実に開発できそうなメドが立っているようだ。まだ電力周りで解決すべきさまざまな問題があり、波長に関しての議論もあるものの、一応2018年5月のDraft 1.0に向けて前進し始めた、というのが現状である。

 この後は、何かとんでもない話が出てこない限り、2020年の標準化完了というスケジュールは揺るがないと思われる。その頃にはFSANが新しいロードマップを出してくるかもしれない。以前に比べると大分ペースは落ちたものの、PONは引き続き進化を続けてゆくことになる。

 今回は、次世代PONの「FOAS」と、IEEEの10G-EPON後継となる100Gbpsの「100G-EPON」標準化策定状況について解説しました。次回は番外編として、いち早く10Gbpsのインターネット接続サービス「NURO 光 10G」を提供しているソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社へのインタビューをお届けする予定です。