長坂寿久(ながさか・としひさ)  一般財団法人国際貿易投資研究所客員研究員、逗子フェアトレードタウンの会代表理事。神奈川県逗子市生まれ。明治大学政経学部卒、現日本貿易振興機構入構、シドニー、ニューヨーク、アムステルダム駐在。1999年拓殖大学国際開発学部(現国際学部)教授、国際関係論(NPO・NGO論)、2013年退任。公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン理事、認定NPO法人ACE(児童労働問題)評議員等。神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会(会長)、日本フェアトレード・フォーラム認定委員長、等。映画評論家。オランダ関係では、アムステルダム市国際交流表彰(1997年)、蘭日賞(2009年)受賞。主な著書に、『新市民革命入門――社会と関わり「くに」を変えるための公共哲学』(2016年)、『NGO・NPOと「企業協働力」──CSR経営論の本質』(2011年)、『NGO発、「市民社会力」──新しい世界モデルへ』(2007年)、『日本のフェアトレード──世界を変える希望の貿易』(編著、2008)、『世界と日本のフェアトレード市場』(編著、2009年)、『オランダを知るための60章』(2007年)、『映画で読む21世紀』(2002年)[以上明石書店]、その他『オランダモデル』(日本経済新聞社、2000年)、『ユーロ・ビッグバンと日本のゆくえ』(集英社、2000年)『ベビーブーマー』(サイマル出版会、1988年)等多数

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「働き方改革」に取り組む日本にとって、参考になる存在といえば「ワークライフ・バランス先進国」として知られるオランダだ。フルタイムとパートタイムの待遇格差是正や労働時間の短縮実現など、日本が抱える諸課題を解決してきたオランダだが、事ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかったという。かつて「オランダ病」と揶揄された経済の窮状を建て直していったプロセスには、オランダという国を特徴づける“ある文化”が大きく影響していたという。果たしてそれはどのようなものだったのか? オランダ経済に詳しい長坂寿久氏に聞いた。

水を制御することで
生まれた国、オランダ

武田隆(以下、武田) 前回は、「私・共(公共)・公」という三元論で社会をとらえる「公共哲学」による主権論が存在することを前提とした世界観を持つヨーロッパと、「公・私」という二元論で捉えている日本との違いについてお話しいただきました。

 日本では育たなかった「公共」という概念が、ヨーロッパ、とりわけオランダで根付いた背景には、オランダという国の成り立ちが関係している。これはどういうことでしょうか?

長坂寿久(以下、長坂) オランダは、ヨーロッパ大陸を流れる3つの川が北海に流れ込む三角州にできた国です。ヨーロッパの人口が増加し、もともと水浸しで住めなかったその三角州の高台にまで入植してきた。そして少しずつ住める場所を増やしていきました。

 帆船の時代になると、アムステルという川に堤防(ダム)をつくり、港をつくり、街をつくったのです。

武田 それが現在のオランダの首都、アムステルダムですね。日本で言えば、「黒部ダム」が首都になるようなもので、おもしろいです。

長坂 そうして、自分たちで水を制御して街をつくってきたんです。オランダ最大の空港であるスキポール空港は、「船の穴」という意味を持ちます。スキップが「シップ・船」、それに穴の「ホール」でスキポール。スキポール空港がある場所は、かつて巨大な湖でした。そこで戦いが起こったり、嵐が来たりして、たくさんの船が沈んだ。

武田 船の墓場だったと。

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