先日、携帯業界に「第四のキャリア」として堂々と名乗り出た、三木谷浩史氏率いる楽天株式会社。しかし、2月13日の決算会見では、当初の投資額「6000億円」以上に投資はしなくても充分だと語るなど、その強気発言が物議を醸しています。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、こうした楽天・三木谷社長の見立てを問題視。かつての「イーモバイルの二の舞になる」と警告し、誰か三木谷氏を止めるものはいないのかと疑問を呈しています。

楽天・三木谷社長が「設備投資は6000億円で充分」と強気発言 ━━設備投資4400億円のイー・アクセスは第4の携帯電話会社になれず

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楽天は2月13日に決算会見を実施。そのなかで、三木谷浩史CEOが参入を予定している携帯電話事業の設備投資計画に言及した(筆者は海外取材中だったため、決算資料やITmediaなどの記事を参照)。

KDDIの田中孝司社長が「その金額(6000億円)で設備投資がまかなえるほど通信事業は甘くない」と語るなか、三木谷社長は「3Gには対応せず、4Gのみを提供することでコストを抑える。かつて、イー・アクセスやUQコミュニケーションズの設備投資額は4000〜5000億円だった」と語ったという。

三木谷社長のこの発言こそ、6000億円では足りないことを示唆しているのではないか。

時代は4Gから5Gに移ろうとしている。楽天が4Gのみのネットワークを提供したところで、2020年から5Gをはじめようとする大手3社には対抗できなくなる。

当然、iPhoneなどの端末も5G対応してくるだろう。スマホで当たり前のように5Gが使える中、ユーザーにとって4Gしか使えないキャリアを選ぶという選択肢はない。4GでもギガビットLTEとして、5Gに肩を並べる通信速度も実現できるが、それは周波数帯をいくつも重ね合わせるからこそ、実現できるというものだ。当初の楽天におけるネットワークでは、ギガビットLTEの実現も難しいのではないか。

もうひとつ「イー・アクセスやUQコミュニケーションズは4000〜5000億円だった」という発言。イー・アクセスは、この金額では足りず、ユーザーに満足なネットワーク環境を提供できなかったからこそ、市場から消滅してしまったのではないか。この金額で充分で、全国規模のネットワークを構築し、音声通話サービスも問題なく提供できてたら、ソフトバンクに買収されることはなかっただろう。

イー・アクセスは1.7GHzを軸にサービスを提供したが、それでは品質面では満足できず、やはりプラチナバンドである700MHzを欲しがった。プラチナバンドのない楽天もイー・アクセスの二の舞になる可能性が極めて高い。

UQコミュニケーションズも「KDDIからLTEのネットワークを借りる」という荒技で、全国網を構築している。結局、5000億円程度の設備投資では、全く足りないのだ。

三木谷社長は「すでに様々なベンダーから見積や提案を受けている。MNOで働いた経験のある人を多く採用している」というが、誰か三木谷社長を止める人はいないのか。

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