DMM BitcoinのCMに出演しているローラ

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 仮想通貨取引業者コインチェックは2月13日、日本円の出金を再開した。顧客からは日本円で総額300億円前後の出金要請があったが、同日、401億円が引き出された。

 同社は1月26日、約26万人の顧客から預かっていた約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」 のほぼ全額が流出した。日本円の出金再開は「補償の支払いではない」という。

 コインチェックは2月13日、業務改善報告書を金融庁に提出したが、同日夜、大塚雄介COO(最高執行責任者)は記者団の取材に立ったまま応じ、「内容はお答えできない」という異例の対応を見せた。金融機関などは、業務改善報告書提出後の記者会見で内容を説明することが多い。

 流出した仮想通貨を顧客に補償する時期の具体的なメドは示さなかった。和田晃一良社長など経営陣の辞任を含めた責任の取り方についても「お答えできない」(大塚氏)とした。和田社長は姿を見せなかった。

 同社は2012年8月、レジュプレスとして発足。東京工業大学理学部在学中の和田氏と、元JPモルガン証券新卒入社2名の3名で立ち上げたベンチャー企業。和田氏は小学生時代からプログラムを学び、大学在学中にクックパッド主催「第3回開発コンテスト24」など2度のハッカソン優勝経験を持つ。ハッカソンとは、IT技術者が一定期間缶詰め状態になってプログラムの開発を競う催しだ。仮想通貨コインチェックのプログラムの開発を同氏が担当した。

 14年11月にビットコイン取引所を立ち上げ、17年3月にコインチェックへ社名を変更。仮想通貨の取扱銘柄は13種類。1000種類以上ある仮想通貨のうち流通額首位のビットコインがもっとも有名だが、流出したNEMも時価総額で10番目前後の人気通貨のひとつだ。

 社長は和田氏だが、大筭氏がメディアや顧客の対応を一手に引き受ける。大塚氏は早稲田大学大学院物理学修士を修了しており、専攻は量子理論力学。06年から元リクルート系企業のネクスウェイで法人向け新規事業に9年間携わった。

 コインチェックの資本金は9200万円。15年8月、ベンチャーキャピタルのインキュベイトファンド、ANRI、セレスの3社が第三者割当増資を引き受けた。

 タレントの出川哲朗を起用したCMを、17年12月8日からインターネットで、12月13日からテレビでオンエア開始した。CMは、出川がひとりで双子の兄弟を演じる。弟が「なぜビットコインはコインチェックがいいのか」と問いただし、それに返答する兄との問答がコミカルに描かれている。NEMの流出を受けて、このCMはお蔵入りとなった。

●地上波での仮想通貨CMの第1号はビットフライヤー

 17年4月に仮想通貨取引所の登録制が導入され、テレビCMが解禁となった。仮想通貨のテレビCM第1号は、国内初のビットコイン取引所として知られるビットフライヤー。17年5月15日、関東地方限定でCMの放送を開始した。これが地上波でのビットコイン関連CMの先駆けとなった。

 同CMの出演者は成海璃子。成海は女優やファッションモデルとして活躍しており、さまざまなCMでイメージキャラクターを務めている。

 ビットフライヤーは14年1月に設立された仮想通貨取引所。加納裕三社長は、ビットコイン起業家の代表的人物だ。東京大学大学院工学系研究科を修了し、ゴールドマン・サックス証券でデリバティブ、転換社債のトレーダーとして活躍した。

 加納氏が立ち上げたビットフライヤーには、加納氏の手腕に期待して日本の名だたる大企業が出資した。三菱東京UFJキャピタル、三井住友海上キャピタル、リクルート、GMOなどである。資本金は41億238万円(資本準備金含む)。世界の仮想通貨取引所のなかで、資本金の規模で世界2位といわれている。仮想通貨の取扱銘柄は7種類。

●Zaif、よしもとに動画製作を依頼

 仮想通貨取引所「Zaif(ザイフ)」を運営するテックビューロは17年11月までに、仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)で109億円を集めたと報じられた。日本企業のICOとしては最高額。ICOは企業が「トークン」と呼ばれる権利書を発行して資金を調達する手法。出資者はビットコインなどの仮想通貨で払い込み、トークンを得る。

 Zaifの仮想通貨の取扱銘柄は5種類で、10種のトークンを発行。仮想通貨取引所のなかで、ビットフライヤーに次いで存在感を高めていた。

 同社の朝山貴生社長は学生起業家で、関西学院大学商学部在学中に輸入玩具のインターネット通販会社を立ち上げた。1997年にシリコンバレーに渡米。クレジットカード決済やリッチメディア広告を手掛ける企業、オーバーテックを設立してCEO(最高経営責任者)に就いた。

 朝山氏は日米を股にかけるベンチャー起業家で、14年6月に国内にテックビューロを設立、社長に就任。15年3月、独立系VC(ベンチャーキャピタル)の日本テクノロジーベンチャーパートナーズCC投資事業組合を引受先とした第三者割当増資で1億円を調達。その資金で、ビットコインとモナー(コイン)を取り扱っていたetwingsを買収してZaifを開設した。

 Zaifの資本金は8億3013万円(資本準備金を含む)。新生銀行も出資しており、銀行が仮想通貨取引所に直接出資するのは初めてといわれた。

 Zaifは17年12月16日、お笑いコンビ・かまいたちを起用してネットでの動画配信を開始した。かまいたちは、TBS主催のお笑いコンテスト「キングオブコント2017」で優勝した。Zaifは、かまいたちも所属するよしもとクリエイティブ・エージェンシーに依頼して、仮想通貨お笑い動画を製作。同CMは、Zaifという言葉がまったく出てこない内容になっている。

●DMM Bitcoin、ローラを起用したCM

 仮想通貨取引所DMM Bitcoinは18年1月22日、ファッションモデルのローラを起用したテレビCMの放送を始めた。後輩役の女優でタレントの中川梨花の質問に、先輩役のローラが、ビットコインをピットイン、仮想通貨を仮装通過と勘違いするという、ダジャレのような内容になっている。

 同社はゲーム・動画・電子書籍、英会話、FXなどのECサイトを運営するDMM.comのグループ会社。16年11月に設立した東京ビット取引所を、17年12月にDMM Bitcoinに商号変更。18年1月から仮想通貨の口座開設受付を始めた。資本金は2億9000万円で、仮想通貨の取扱銘柄は2種類。

 仮想通貨CMの稼ぎ時を迎えた時にNEMの流出事件が起き、仮想通貨取引所、同取引業者の資産管理の安全性の問題が浮き彫りになった。フェイスブックは仮想通貨の広告を認めない方針を打ち出した。今後、テレビ業界や広告業界はどうするのだろうか。
(文=編集部)