期待の新助っ人、中日のディロン・ジー【写真:荒川祐史】

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中日浮上の鍵握る新助っ人ジー

 この男は、きっとホンモノだろう。今季、ドラゴンズ投手陣の中心となり、浮上の鍵を握る存在になる。そう、見るたびに思わせるのは、今季からチームに加わった新助っ人ディロン・ジー投手である。

 2007年のドラフト21巡目でメッツに入団した右腕。2010年にメジャデビューを果たすと、2011年には13勝をマークし、初の2桁勝利を挙げた。2013年に2度目の2桁勝利となる12勝をマークし、2014年には開幕投手も務めた。2016年に移籍したロイヤルズでは8勝をマーク。2017年はレンジャーズ、ツインズでプレーしてFAとなり、今季から中日ドラゴンズの一員となった。

 メジャーで2度の2桁勝利をマークし、開幕投手も務めた実績の持ち主。日本に来る助っ人外国人とすれば“大物”の部類に入るだろう。だが、“大物”とはいえ、必ずしも活躍するとは限らないのが日本のプロ野球。近年で言えば、楽天のケビン・ユーキリスや、オリックスのユリエスキ・ベタンコート、ソフトバンクのブラッド・ペニー、阪神のマイク・グリーンウェルなどなど、アメリカでの実績が見込まれ大きな期待を背負いながら、全くもって活躍しなかった外国人は数多くいる。

 それでも、ジーに期待するのにはワケがある。まず、とにかく、その制球力が素晴らしい。ブルペンでの投球練習だけを見ても、ボールは低めによくコントロールされている。さらに、2月15日に行った初のバッティングピッチャーでの登板。石岡諒太内野手、阿部寿樹内野手の2人に対して55球を投げたのだが、球種を打者に伝える形で行われながら、ヒット性の当たりはほぼなかった。

 それだけではなく、この時投じた55球のうち13球がボール球だったのだが、このほとんどはゾーンからわずかに外れたような際どいボールばかり。右腕自身がボールをゾーンから出し入れし、打者の反応や、日本の審判のゾーンを細かく確認しているようにも見え、ジー自身は「自分的にはコントロールが出来ていなくてフラストレーションが溜まっていた、日本のストライクゾーンは少し広いというか、コーナーでキャッチャーがパンッと取ってくれると、少しボール気味であってもストライクとコールしてくれるかな」と語っていた。

日本スタイルへ率先して適応する姿勢、「長期的に見たらプラス」

 メジャーでの8年間でのジーの成績を見ると、1試合27個のアウトを取る間に、いくつの四球を与えるかを示す指標であるBB/9は、13勝を挙げた2011年までは4.0ほどだったが、2012年以降は2.5前後に。12勝を挙げた2013年は2.1、昨季はレンジャーズ、ツインズの成績を合わせて2.7だった。

 日本とメジャーでは一概に比較することは出来ないのだが、単純にBB/9が2.5前後となると、昨季のセ・リーグ規定投球回到達者では5位前後になる。キャンプを見る限りでは日本のマウンドやボールに対しての適応に苦労している様子もなく、ジーの武器であるコントロールは、十分に計算出来るものだろう。

 さらに言えば、メジャーでの実績がありながらも、日本のスタイルへ進んで適応しようとする姿勢がある。中日のキャンプは、投手陣のランニングメニューがかなり多いと言われている。日によって違いこそあれど、基本的にはジーも、そしてもう1人の新助っ人ガルシアもそのメニューを課される。

 自らがアメリカでやってきたスタイルを貫こうとするあまり、そういった日本のメニューを受け入れられない選手もいる中で、ジーはそのランニングメニューをきっちり受け入れ、こなし、「プラス面の方があると思うね。正直に言えば、確かに疲れはあるし、体が硬いなと思うけども、長期的に見たらプラスになるだろうね」と話す。他の投手が個々で行っているメニューにも興味を示し、チャレンジする好奇心、探究心にも溢れているという。

 2桁勝利は最低限で、最多勝が狙える活躍すらも期待したくなるジー。右腕が額面通りの活躍を見せてくれれば、中日の6年ぶりのAクラスも近づいてくるはず。怖いのは、怪我による離脱だけだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)