仰天ニュースが飛び込んでくることが少なくない南米だが、今回の一件はあまりにお粗末な事態と言える。 ※写真はツイッターより

写真拡大

 ライバルとの意地と意地がぶつかり合うダービーマッチは、時としてエキサイトするあまり、試合があらぬ方向へ転じることがある。そんな宿敵との一戦を巡り、サッカー王国ブラジルでは前代未聞の事態が起き、波紋を広げている。
 
 問題の一戦となったのは、現地2月18日に行なわれたブラジル・バイーア州選手権第6節のヴィトーリア対バイーアのダービーマッチ。事件が起きたのは、ヴィトーリアが1点を先行して迎えた50分にバイーアのMFヴィニシウスがPKを決めて同点とした直後だった。
 
 バイーアの選手たちが相手サポーターの前で挑発的なゴールパフォーマンスを披露。これにヴィトーリアの守護神フェルナンド・ミゲルが激怒し、ヴィニシウスの首根っこを掴むと、ここから両軍が入り乱れての大乱闘に発展してしまったのだ。
 
 殴り合いの騒動はバイーアの3選手とヴィトーリアの2選手にレッドカードが提示され、一度は落ち着きを取り戻したが、59分には昨シーズン、川崎フロンターレに在籍していたヴィトーリアのハイネルが退場になるなど、混乱は収まる気配がなかった。
 
 その後、互いに一人ずつの退場者を出した試合は、79分にリスタートを巡って判定を不服としたヴィトーリアのウリアン・コレアがボールをわざとピッチ外へ蹴り出し、チーム5人目の退場者となったことで、ヴィトーリア側が残り6人となったため、サッカー規定により試合は中止が決定され、試合は3-0でバイーアの勝利となった。
 
 このまさかの試合展開を当然現地メディアもリポート。そのなかで退場にこそならなかったものの、奇しくも当事者となってしまったヴィトーリアのキャプテンで守護神のF・ミゲルは、地元紙『Correio』で、次のようにコメントを残している。
 
「何も言い訳はできない。この試合を楽しみにしていた全ての人々に謝罪をしなければならない。明らかに常軌を逸していたし、僕らは良い試合をしながらそれを自分たちで台無しにしてしまったんだ……」
 
 一方のバイーア側も前代未聞の事態に反省しきりだ。今年1月に横浜・F・マリノスからレンタルで移籍しているブラジル人FWのカイケも『Correio』紙の取材に応えている。
 
「両チームにとって最悪の事態になったね。僕たちはプロフェッショナルであり、サッカーをするためにピッチにいる。なのにあまりに恥ずかしいし、悲しい出来事だ。このようなことが二度と起きないようにしたい」
 
 ダービーマッチは白熱するもので、サポーターたちも含め、普段以上の活況を呈するものだが、そこに暴力が持ち込まれることは決して許されない。今後、こうした試合が二度と行なわれないように両軍には、きっちりとお灸が据えられるべきだろう。