by Ralf Roletschek

カーリングのストーンはなぜ曲がるのか?」という問題は、実は何百年にわたって科学的に解き明かされていない謎として存在してきました。そんな中、この謎を数学的に解き明かし、物理的に説明した研究者らが登場しています。

First principles pivot-slide model of the motion of a curling rock: Qualitative and quantitative predictions - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165232X17302975

'Eureka': Alberta researcher puts new spin on curling conundrum - Edmonton - CBC News

http://www.cbc.ca/news/canada/edmonton/edmonton-researcher-spin-curling-rock-science-1.4435849

Winter Olympics 2018: Age-Old Curling Question Answered at Last | Inverse

https://www.inverse.com/article/41383-winter-olympics-2018-researchers-answered-curling-question



カナダ・アルバータ大学で熱力学と機械工学を研究するEdward Lozowski博士は「なぜカーリングのストーンは曲がるのか?」ということを、4年間にわたって考え続けた人物。当初は「1年以内には解き明かせるだろう」と考えていたそうですが、カーリングのストーン問題は非常に難しかったとのこと。しかし、2017年のある日、Lozowski博士が朝早くに目覚めると突然、謎を解く数式が頭に浮かんだそうです。そして、すぐに数式を使って計算を行った結果、カーリングのストーンの正しい総旋回時間を導けたといいます。

これまで、「カーリングのストーンはなぜ曲がるのか?」問題は「氷とストーンの間の摩擦の問題」というシンプルな説明しか行われていませんでした。しかし、氷の摩擦ではストーンの軌道が変わる「カール」の大きさを説明できないとLozowski博士は気づきました。そこで、Lozowski博士はノーザン・ブリティッシュ・コロンビア大学の理論物理学者であるMark Shegelski博士と共に、「ストーンが小さな氷の『小石』にくっついた一瞬で回転軸が生じ、それがストーンが曲がるという現象を引き起こしている」ことについて研究を行いました。

カーリングのレーンは「完璧に平ら」にはなっていません。試合前にはアイス・メーカーと呼ばれる製氷技術者がレーンに水をまくため、氷の表面には「小石」のようなものができます。ストーンが放たれたときに音が響くのはこの小石が原因とのこと。

ストーンがこの小石と接触すると、ほんの一瞬だけストーンが小石にくっつき、わずかにストーンの方向が変わります。これは電気丸のこの刃の動きを無理やり止めたことを想像するとわかりやすいのですが、刃の動きを止められた電気丸のこは、今度は機械全体が回りだします。これと同じことがストーンにも起こり、ストーンがすべりながら何千回もこのような方向転換が繰り返されることで、大きなカールが生まれるわけです。



by Benson Kua

これまで行われてきた多くの研究とは違い、Lozowski博士とShegelski氏はストーンが曲がる距離を数式を使って計算しました。2人の数式は、ストーンの半径やストーン下部につけられたリングのきめ細かさ、選手の走り、氷の固さと弾性、ストーンの速度、ストーンがレーンに着地するまでの時間、そして氷の小石のサイズと密度などを考慮したもの。2人の数式は「ぴったりと正しい」というわけではないそうですが、これらの要素の推定の値を数式に当てはめれば、観測しているストーンのカールと近い数字が算出されるといいます。

2人の研究者らの発表によって、カーリングが物理の上に成り立っており、戦略・技巧・体力によって成立する驚異のスポーツであることが示されたわけです。