画像提供:マイナビニュース

写真拡大

柏の葉(かしわのは)IoTハッカソン実行委員会は2018年2月17日、柏の葉キャンパスの街作りにおける課題をIoTによって解決する「柏の葉IoTハッカソン」の受賞作品を発表した。

2017年11月15日から2018年1月22日まで実施した柏の葉IoTハッカソンは、委員会メンバーでもあるセンスウェイのオープンIoT向け無線規格「LoRaWAN」の基地局を千葉県の柏市役所本庁舎、茨城県の筑波大学、東京都文京区の東京大学・本郷キャンパスなどに設置し、IoT実証フィールドを構築した。186名の参加者は「柏市の交通課題」「柏市の企業誘致にかかる課題」「HEMSの新しい形」「すぐそこの未来の住宅」「『街を歩く』を誘導する情報提供」「自然と共生する都市空間-グリーンマネージメント」「農業とIoT」「柏の葉に対する自由な提案」と8つのテーマに沿って、貸与したLoRaWANモジュールを活用した独創的なアイディアを選考する。

なお、LoRaWANは世界500以上の通信キャリア・企業が加盟するLoRaアライアンスが、規格・仕様を策定したグローバルかつオープンなIoT向けの無線規格。低消費電力や長距離通信という2つの特徴を備え、日本国内でも部分的な採用が始まりつつあるものの、現時点での認知度は高くない。センスウェイは、「LoRaWANによるIoT通信プラットフォームの事業化を進める中で、LoRaWANの啓蒙活動の一環として、ハッカソンの技術支援を行っている」と今回の取り組みを説明する。

最優秀賞となる「柏の葉まちづくり賞」は東京大学大学院 新領域創成科学研究科 技術補佐員 下川典子氏の「地域IoT実装を推進する教育×避難所用モデルの提案」。災害発生時における避難所の水や食料不足、電気、トイレといった避難者が必要とする情報に加え、運営側の人手不足や収容人数過多などの状況を可視化することで避難所運営をサポートするIoTのエンドデバイスを開発した。

柏市内に設置した各避難所の資材や、運営状況をリアルタイムに収集したデータをLoRaWANで災害対策本部へ送信し、ウィングアーク1stのMotionBoardで可視化した情報をインターネット上に公開することで、物資やボランティアの適切な配分が可能になる。下川氏は近年の洪水災害に不安を覚え、自身の実家も2011年9月の熊野川に近い実家が床上浸水の被害を受けたことから、被害者の苦しみと行政の負担を軽減するため今回の発想に至った。また、データ収集用エンドデバイスの製作を柏市内の学生に依頼することで、プログラミング体験など教育の機会も提供可能だとしている。委員会は選定理由として、携帯電話網が使えない災害時の設計を高く評価。賞金は本ソリューションの柏市内実装活動に向けて寄付する。

優秀賞は杉浦隆幸氏および杉浦弾氏の「アクアテラス環境モニタリング」。柏市は地域住民向け調整池「アクアテラス」を一般提供して、憩いの場として活用しているが、メンテナンスなど対策を講じる必要があったものの、定期的な水質管理は人的負担が大きく、効率性に乏しかったという。そこでLoRaWANの省電力・長距離通信という特性を活用して、調整池にIoTデバイスを設置して水温やpH値を自動測定。遠隔によるデータ管理の実現と、藻の発生を抑止するためのメンテナンスタイミングなど見極め、効率的な水質管理を実現するというソリューションだ。

IoTデバイスはLoRaWANデバイスを除けば8,400円程度で完成。浴室での実験を踏まえて実験を開始したが、ブイが小さいため浅瀬では浸水してしまったという。改良を施した第2号機も投入したが、冬期のため藻の発生タイミングは計測できなかった。夏期であれば上手(うま)く行ったはずと杉浦氏は語る。委員会は選定理由として、LoRaWANの特徴を活用した無人長時間運用や改良を重ねた追加試験など積極的な取り組みを評価した。賞金の半額は息子である杉浦弾氏へのお小遣い、残りの半額は更なる改良の資金に費やすという。

IoTメディアラボラトリー賞はやつ氏の「-Internet of Vegetation-」。植物に電極を取り付け、植物の活動状態のデータを蓄積し、気象データなど外部データと関連を付けながら、農業における制御や土砂災害・地震などの自然災害の予測、植生管理などを目指す。

ウィングアーク1st賞はMCCあめみずマップチームの「道路の冠水を検知するシステム」。対象地域内に複数のIoTデバイスを設置することで、冠水の迅速な感知と、交通規制を始めとする緊急対応を実現する。

ウフル賞はAmish 山田哲也氏の「都市と田舎を融合する観光都市農園への活用」。小区画の田畑を貸し出し、各区画に設置したIoTデバイスを通じて、遠隔で温度や日照量、水分量を把握しながら効率的な管理を実現する。また、自宅から離れた農地で農作物を育成し、都市住民の方に農業体験を提案可能だという。

技術賞には、宅内でポストへの投函を把握できるIoTデバイス「ポスト見守る君」、利用者の走行内容を把握できる「手賀沼レンタルサイクル」、低容量IoTデバイスで大容量のデータ転送を可能にする「GPS位置データ転送(圧縮)方式」、タクシープール内の渋滞を回避するため、プール内の空き情報をタクシーに伝達する「待機タクシー管理システム」、IoTデバイスを設置したタクシーに複数の停留所へ誘導することで交通渋滞を緩和する「分散型タクシープール」の5つが選考した。

アイディア賞として、テレビに接続する高齢者向けの防災無線「地域コミュニティと防災無線を兼ねた市営放送の提案」、適切な配水量管理と再生水の売買を行う「配水量の予測と再生水の再利用」、位置情報を付与したレンタル傘「街を活性化するレンタル傘サービス」、気温や湿度、PM2.5や騒音などのデータを可視化する地図「環境ヒートマップ」、農地の湿度やPh値などのデータを蓄積し、適切な育成作業をサポートする「アブラナ・カブラーナ」の5つが選考した。

柏の葉IoTハッカソンについて柏市市長 秋山浩保氏は「(本イベントから生まれたアイディアが)社会の変革につながることを期待したい」。三井不動産 柏の葉街づくり推進部 事業グループ グループ長 三宅弘人氏は、「(参加者の姿勢を目にして)魂を注(そそ)ぎ込むということを学んだ。重要なのはベンチャーの魂。ハード・ソフトを用いながらグループ一体でバックアップして行く」。TXアントレプレナーパートナーズ 代表理事 國土晋吾氏は、「今回25チームが参加した。我々は多くの支援体制を用意しているので、今回の成果を事業化したい方は手を挙げて欲しい」とそれぞれの立場から応援のメッセージを寄せた。

阿久津良和(Cactus)