「熱はないけれど喉が痛い」「かぜは治ったけれどそのあと喉の痛みが取れない」という人が増えています。ここで今シーズンの「お薬診断」でご紹介した「喉の痛み対処法」をまとめてみます。

(1)お薬を利用する

はじめに。「喉が痛い」が長引く場合、病院で診察を受けたほうがいいです。そして病院で処方されたお薬をきちんと飲む。病院で処方される薬は薬効成分が多く、その分効き目も早いですから。

ところが病院に行かない人、行けない人……多いですよね……。市販のお薬で何とかしたいという場合、喉の炎症を抑える成分(トラネキサム酸)が入っていて、かつ解熱剤を含まない薬がいいでしょう。市販薬では「ペラック」「ハレナース」などがあります。

(2)喉スプレーを利用する

喉の炎症を抑えるスプレー式のお薬もあります。スプレー式の薬効成分は2種類あって、ひとつはポピドンヨード、もうひとつはアズレン。ポピドンヨードはおなじみの茶色いお薬で、殺菌作用があります。アズレンは炎症を抑える効能があり、喉が痛い人にはこちらのほうが効果的です。

「ポピドンヨードならうちにあるから」と気軽に使う人がいるかもしれませんが、喉の炎症があるところに殺菌剤を使うのはおすすめできません。悪い菌も殺菌しますが、常在菌もいっしょに殺菌してしまうので喉の粘膜が無防備な状態になり、かえって抵抗力を落としてしまうおそれがあるからです。

なお、上記2つのお薬はあくまで対症療法であって、かぜを予防する効能はないことを覚えておいてくださいね。

(3)マスクをする

マスクにかぜやインフルエンザを予防する効果があるとはいえません。そのようなエビデンスはないのです。ただし、喉の乾燥を防ぐことはできます。外出時には外の冷たい外気が直接喉に触れるのを防げます。冷たいこと自体が喉に刺激になるので、マスクを通して吸い込む空気を温めることは意味があります。

(4)寝るときもマスクをする

就寝中に口呼吸をしていると、朝起きたときに喉に痛みがありますよね。喉が痛い人は口呼吸が習慣化している可能性があります。その場合、口呼吸になってしまう原因を突き止め、それを改善することが喉の痛み解消に必要でしょう。

喉が痛い人にとって、就寝中の乾燥は大敵です。寝室のエアコンは切って寝ましょう。冬場の室内は乾燥しているものです。加湿器を使うのもいいでしょう。そして就寝中もマスクすることをおすすめします。私はマスクに1滴、好きなアロマオイルを含ませて使っています。ペパーミントなどスーッとする香りを含ませると、鼻や喉もスーッとしますし、リラックス効果も期待できます。

(5)アメをなめる

「のどあめ」というジャンルがありますが、薬効成分が入っている「第3類医薬品」「医薬部外品」と、入っていない「食品」に分かれます。たとえば「浅田飴」は第3類医薬品で喉の痛みや炎症を抑える成分が入っています。あめとはいえ医薬品ですから、ずーっとなめつづけていいものではありません。

医薬部外品には殺菌成分や炎症を抑える成分が入ったアメがあります。「トローチ」や「ヴィックス」がこの部類に入ります。

薬効成分の入っていない食品の「のどあめ」でも、なめているだけで唾液が出て喉の保湿になるので喉の痛みには効果があります。

(6)酒、タバコ、大声、カラオケに注意

基本的に刺激の強いものは避けましょう。辛いものや熱過ぎるもの、お酒の飲み過ぎも注意です。またお酒の席はワイワイガヤガヤしていて、つい声が大きくなりがち。大声の出し過ぎ、カラオケの歌い過ぎも喉にはよくありません。

タバコも喉の大敵です。大勢の席では自分が吸っていなくても副流煙を吸ってしまうことも多いので飲み会の参加はほどほどに。

(7)喉によい食べ物。飲み物

喉が痛い人へ一番のおすすめ食材は「大根」です。大根には消化酵素が豊富に含まれていますから、かぜで弱っている胃腸にもやさしい食材です。ビタミンCも多く含まれていますし、炎症を抑える作用もあります。酵素を生かすために「大根おろし」など、できるだけ生の状態で食べることをおすすめします。

「ハチミツ」もおすすめです。殺菌作用と抗炎症作用が期待できます。ビタミン・ミネラルなどの栄養が豊富に含まれているので、落ちている免疫力を高める働きもしてくれます。調理をしないでそのままなめてもいいし、温かい飲み物に入れてもおいしく飲むことができます。

ただし、ハチミツは1歳未満の赤ちゃんには与えないでくださいね。「ボツリヌス菌」が微量に含まれていることがあるため、大人が食べても何の問題もありませんが、1歳未満の赤ちゃんは注意が必要です。

昔からの民間療法にも上記の大根とハチミツを合わせた「大根あめ」がありますね。作り方はいたって簡単!! 大根を細かく切って、ハチミツに漬け込むだけです。1時間くらいで、ハチミツに大根の汁が溶け出て、なめらかなハチミツが出来上がります。そのまま飲んでもおいしいですし、飲み物に入れてもおいしいですよ。まだ飲んだことがないという方はぜひ!お試しあれ!!

最後に。喉の痛みはかぜ症状の一種ですから、全体に免疫力が落ちているとも言えます。いろいろな対処法をご紹介してきましたが、まずはバランスの取れた食事と十分な休養、睡眠を取ることを優先して対処してください。

「のどあめ」でなくても、あめをなめれば唾液で喉の乾燥を防げます。



■賢人のまとめ
10日以上、喉の痛みがある人は病院で診察を受けましょう。炎症を慢性にしてしまうのが一番いけません。ふだんからの注意点として、マスクをする、寝るときに喉を乾燥させない、喉に刺激のあるものを食べないなど。タバコの副流煙やお酒の飲み過ぎにも気をつけましょう。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)など。