「特定の場所にいる人たちへ知らせなければならない気象情報をタイムリーに提供する」と語るウェザーニューズの石橋知博執行役員


 気象情報サービス大手のウェザーニューズとKDDIは2018年3月、屋外で活動する作業者の安全を守る「屋外作業現場向け安全管理ソリューションサービス」の実証実験に乗り出す。小型の気象センサーを使い、観測した局所的な気象データに基づいてゲリラ豪雨や雷の接近を高い精度で予測し、天候の急変が迫るエリアにいる作業者のスマートフォンにアラートを送る。建設工事やマンションの大規模改修など屋外の作業現場単位で正確に気象の変化を予測し、安全管理に役立てるためだ。

 ウェザーニューズは2017年7月、高い精度の局地的な気象予測モデルを開発し、本格運用を始めた。従来の予測モデルでは5kmメッシュだったきめ細かさを、1kmメッシュへと25倍に細密化。加えて、予測の更新頻度を従来モデルの1時間から5分間に縮めるなどして、天気予報の精度を平均3.3%、最大4%高めた。

 今回の実証実験では、この1kmメッシュの予測モデルと、小型気象センサーから収集した作業現場の気象データを組み合わせて気象を予測する。そうすることで、さらに細かいピンポイントで、危険性のある天候の急変を高い精度で捉えられるようになる。

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増えるゲリラ豪雨、高まる屋外作業の気象リスク

 新サービスに乗り出した背景には、被害をもたらす急激な天候の変化がこのところ目立って増え、屋外作業における気象リスクが高まってきたことがある。

 典型例が、1時間当たりの降水量が50mm以上になるゲリラ豪雨の発生件数だ。気象庁の調べでは、2007年から10年間の平均年間発生件数は232回あまり。1976年から1985年の10年間と比べ、約1.3倍に増えた。数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測した場合などに気象庁が災害への強い警戒を呼び掛ける「記録的短時間大雨情報」も、しばしば耳にするようになった。

 ゲリラ豪雨による足場や視界の悪化、高所での突風など、急激に悪くなる天候を読み誤ったり対応が遅れたりすれば、人命が危険にさらされる。そのため屋外作業の現場では、安全管理者や作業者自身が市区町村単位の天候や気温の予報、注意報に気を配っている。だが、実際に「その場」に迫りくる気象リスクを正確に把握するための「現場単位の細かい気象情報武装はまだ十分ではない」(ウェザーニューズの石橋執行役員)。

 市区町村単位の天気予報と作業現場の気象は、往々にしてズレが生じる。広域の予報より早く強い雨が降り始めることもあれば、予報より風が弱くなることもある。風通しが悪い作業現場で風が弱まると、局所的に高温多湿になり熱中症のリスクが高まることもある。新サービスはこうしたズレを見逃さず、屋外作業者へタイムリーに気象リスクを知らせて作業現場の安全を確保する。

気象センサーの観測データを気象予測システムにスマホで送信

ウェザーニューズの小型気象センサー「WxBeacon2」


 ピンポイントの気象予測に用いるのは、オムロンの協力を得て開発した小型気象センサー「WxBeacon2」である。気温、湿度、気圧、明るさ、紫外線、騒音のセンサーを内蔵し、1分ごとに6種類のデータを自動で観測する。身につけても屋外作業の妨げにならないよう、きょう体のサイズは縦46×横39×厚さ14.6mmと小型に設計するとともに、重さを16グラム(コイン型電池を含む)にとどめた。

 気象予測システムでは、前述した1kmメッシュの予測モデルが動いており、全国約1万3000地点に広がるウェザーニューズ独自の気象観測網のデータ、サービス会員の実況報告データ、過去の気象データなどを基に、5分ごとに天気予報を更新している。そして、この天気予報とWxBeacon2で観測したデータを組み合わせ、作業現場の気象変化をピンポイントで予測し、必要に応じてアラートを発する。

図 ピンポイントの気象予測とアラート発信の仕組み(ウェザーニューズ提供)


 屋外作業者は携帯するスマートフォンとWxBeacon2を、近距離無線通信技術「Bluetooth」で接続しておく。するとスマートフォンに搭載した専用アプリがWxBeacon2から観測データを5分ごとに取り込み、インターネット経由でウェザーニューズの気象予測システムに自動送信する。

 例えば、WxBeacon2の観測データから急激な気圧の低下などゲリラ豪雨や雷の急接近を検知すると、屋外作業者のスマートフォンにアラートを自動送信し、専用アプリの画面に「30分後にゲリラ豪雨が来ます」といった気象リスクの内容を表示する。また、天気予報とWxBeacon2の観測データを対比し、予報を上回る状態で気温や湿度が推移した場合にアラートを送り、熱中症への注意を促す。

 安全管理者は事務所に設置したパソコンの画面上で、気象アラートの送信状況と、屋外作業者がアラートを確認したかどうかを確認できる。これにより安全管理者は複数の現場の気象リスクを一元的に把握するだけでなく、気象リスクに対する屋外作業者の対応の遅れを防げる。

 スマートフォンへのアラート発信の仕組みや、管理者向け画面はKDDIが提供する。実証実験には、携帯電話の基地局のメンテナンスなどを手掛けるメディアクリエイトコミュニケーションズが協力し、屋外の高所作業における新サービスの有効性を検証すると同時に機能改善を図り、早期の実用化を目指す。

筆者:栗原 雅