笑顔で握手した第一生命の稲垣精二社長(左)と日本プロゴルフ協会の倉本昌弘会長(右)(筆者撮影)

日本プロゴルフ協会(PGA)と、第一生命保険が面白いコラボを2月1日に発表した。既にニュースでご存知の方がいるかもしれないが、金融業界としては初めて社会貢献活動に関する異業種(ゴルフ)との包括連携協定を結んだ。

もちろん、プロゴルフ界にとっても、保険会社との連携は初めてのことだ。第一生命とは、シニアツアーのスポンサーとして1987年から1997年までトーナメントを開催していたという関わりはある。今回は「お金を出す」「お金をもらう」という関係ではなく、ともにスポーツ振興や地域の活性化に連携して取り組もうということで、直接的な金銭のやり取りはない。

異業種間の連携で何を実現させるか

PGAと第一生命が一緒に何をやるか。包括連携協定に基づく主な取組事項を見ると、子どもの育成に関することとしては「スナッグゴルフ」というプラスチック製の子ども用の道具を使ったイベントなどを共同開催してゴルフを普及し、地域の子どもたちの育成の支援を行う。


スナッグゴルフのクラブを手にする倉本会長(中央左)と稲垣社長(右)(筆者撮影)

スポーツ振興に関することとしては、ビジネスコミュニケーションのツールとしてのゴルフに着目し、地域企業の新入・若手社員を対象に「ゴルフマナー研修」を共同開催してゴルフの魅力を伝えていく。

健康増進に関することとして、シニア層を対象にゴルフイベントなどを共同開催することでゴルフを通じてコミュニティづくりや健康増進、健康寿命延伸に向けて活動する。その他、地域社会の活性化を目指すというものだ

こうした例を聞いて「こんなものなの」という声もありそうだが、異業種間の連携なので、そこはこれからということ。ただ、互いにメリットはあるのだろうか。

第一生命の稲垣精二社長は「全国にネットワークがあり、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションはあるが、うちには提供するソフトがなかった」と話した。

第一生命は保険加入者約1000万人、全国に約1300の営業拠点があり、約4万人の「生涯設計デザイナー」、いわゆる生保レディらがいるという。拠点なり、デザイナーなりが顧客を持っているが、いまの顧客、これからの顧客に対してアピールするスポーツイベントなどのノウハウがなかったという。

対してPGAの倉本昌弘会長は「我々は全国に約5700人の会員がいて、ゴルフを教えられるが、これまでゴルフをやっていない人へのアプローチができなくて困っていた。今回の連携でゴルフをやっていない人を紹介してほしい」と話した。

これまで何度かこのコラムで書いてきたが、ゴルフ業界は右肩下がり、ゴルフ人口は減少し、ゴルフ用品、ゴルフ場、練習場などの売上も最盛期より激減している。PGAが中心になって市場再活性化の旗を振っているが、基盤となる新たなゴルファー創出に苦戦している。

これまではゴルフを始めたい人が手を挙げてくれるのを待っている状態で、ゴルフをやらない人にアプローチする方策を見つけられずにいた。ゴルフ関連の施設や店舗に「ゴルフ始めませんか」というポスターを張っても意味がないということなのだが、「ではどうする」の部分が分からずにいた。

いかにゴルフに興味をもってもらうか

今回の連携協定は、いわば「人」と「ゴルフ」を結びつけるための連携といえる。「(保険加入者)1000万人のうち大半がゴルフをやっていないと思う。その人たちには家族もいる。0.1%でもやってもらえたらすごい数字になる」と倉本会長はみる。

昨年、PGAはゴルフデビュープログラムを関東、関西の練習場1カ所ずつで始動し、新規ゴルファー創出の足場をつくったものの、肝心の生徒が集まらない状態。14回のレッスンでコースデビューまで指導して6万9000円(税別)という料金設定は相場的には高くはないのだが、数字だけ見ると高額という印象を与えた。

「今後は5回で2万9000円という料金設定をしていく」といい、ゴルフをやらない人の受け皿としてデビュープログラムと連動させていくチャンスも得た。

第一生命としても、これまでテニス、ランニングなどのイベント開催などはあったが、より高齢者や子どもでも取り組みやすいゴルフというツールを活用することで健康増進につながるとみている。「保険加入者が健康になってくれれば、入院給付金や成人病の給付金などを減らせる」と稲垣社長はいう。

2016年度の保険金・給付金・年金支払総額は、同社HPによると、死亡・高度障害・特定疾病等保険金4375億円、入院・手術等の給付金1268億円に、満期保険金・生存給付金・年金等1兆1057億円を加えると1兆6701億円になるという。保険金、給付金の支払いを少しでも先に延ばしていくのも、これからますます進行する高齢化社会においては保険会社としての大きな課題なのだろう。

ゴルフを始めたからといってすぐに健康になるとはいえないし、すぐに新規ゴルファーを万単位で創出できるとは思わない。それでも、お互いに「何かとっかかり」ができたことは確かなようだ。2015年に「ゴルフ市場再活性化への提言書」をゴルフ界に提示した倉本会長は「ずっと(具体的に)できなかったのが、ようやく1つできてきた」という。

PGA会員をどう巻き込んでいくか

「生涯スポーツ」としてゴルフを推進するPGAと、「一生涯のパートナー」をミッションとする第一生命。「生涯」というキーワードは一致している。あとは、この連携をどう生かしていくか。

PGAの側からいうと、19試合行われるシニアツアーのほか、PGAが関わるトーナメントの入場券を生保レディの営業ツールに使ってもらうことはすぐにできそうだ。ゴルフ場を生保レディの営業の場、第一生命の拠点を新規ゴルファー勧誘の場にすることも可能だろう。ゴルフのエチケットやマナーを基にしたセミナーなども含め「会議室でゴルフを知ってもらう」(倉本会長)機会もつくれるだろう。

問題は、全国にいるPGA会員がどう反応し、参加するか。これまでも、PGAが流す情報に対して「手ごたえがない」(倉本会長)という、さめた部分がある。これをチャンスととらえる会員が増えないことには「連携」にならなくなる。

生保レディとプロゴルファーがどう手を取り合っていけるか。