「道玄坂一丁目駅前地区」計画地付近より。左手奥が「渋谷スクランブルスクエア東棟」、右が「渋谷ストリーム」(筆者撮影)

複数の再開発プロジェクトが同時進行している渋谷駅周辺は、ここ数年、非常に混沌としている印象だが、ようやく全体像が見えてきた。


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2018年秋には渋谷駅と国道246号を挟んだ南側に「渋谷ストリーム」が開業し、渋谷-代官山間で地下化した東横線の線路跡地の一部には「渋谷代官山Rプロジェクト」が開業する予定だ。さらに、竣工後、渋谷エリア最高となる、高さ約230m、地上47階建ての渋谷駅直上の高層ビル「渋谷スクランブルスクエア東棟」も、2019年度の開業を目指して工事が進む。

そんな中、1月28日に、渋谷駅前エリアマネジメント協議会等が主催、東急電鉄、東急不動産が共催する、小学生参加型イベント「渋谷の街をレゴブロックでつくろう!」が、「渋谷ヒカリエ」8階のイベントスペースで開催された。

ジオラマで渋谷の街を再現

このイベントは、日本人初のレゴブロック認定プロビルダー、三井淳平氏が、およそ10万ピースを組み合わせて作り上げた渋谷の街のジオラマをベースに、三井氏の指導の下、小学生が高速道路や乗り物などの周辺部分を制作するという内容だ。「渋谷の街を自らの手で作ってもらうことで、未来の街づくりの担い手として、街づくりそのものに興味を持ってもらいたい」という趣旨の下、開催された。

冒頭挨拶に立った長谷部健・渋谷区長は、渋谷区内に大使館がある関係から、昨年12月に訪問したバルト三国の一つエストニアについて触れ、「エストニアは1990年代初めに旧ソ連から独立したばかりの若い国。子供たちが、ブロックチェーンを学ぶなどしており、すごいなと感じた。また、未来を自分たちが作るという心意気を口にしていた」と話し、今回のイベントへの参加を通じて「未来を自分たちが作るという気持ちを強くして欲しい。さらに、どうすればもっと街が良くなるか、もっと自分たちの生活が楽しくなるかを、自由に創造できるレゴブロックを通じて考えてみて欲しい」と、参加者を激励した。

続いて、挨拶に立った三井氏は、「特徴のある建物や、新しいビルはこんなのができるんだというのを一つ一つ感じながらジオラマを作った」と話した。午前中の低学年の部では高速道路の制作を行い、1時間半ほどで完成。完成した作品は、イベント後から、渋谷ヒカリエ11階に展示されている。


レゴブロックで渋谷の街を完成させた子供たち。保護者からは「自分が作ったものが街のパーツになるところが面白いのでは」との声がきかれた(筆者撮影)

さて、ジオラマで表現するとシンプルに見える渋谷の街だが、実際には、渋谷駅周辺では、東急グループが中心となって進める、再開発7大プロジェクトが同時進行し、かなり複雑になっている。現在、どのようなプロジェクトが進行し、今後、渋谷の街がどう変化するのかを整理してみよう。

まず、7大プロジェクトのうち、すでに完了しているのは、宮下公園近くの都営アパート跡地に2017年4月に開業した複合ビル「渋谷キャスト」だ。同施設は、事務所やシェアオフィスを中心に、13階から16階の4フロアが賃貸住宅になっているのが大きな特徴で、居住しながら働けるライフスタイルを提案している。

2018年秋にオープンするのが、「渋谷ストリーム」と「渋谷代官山Rプロジェクト」だ。渋谷ストリームは東横線地下化後の旧地上ホームと線路跡地を利用しており、オフィス、ホテル、商業の全賃貸区画について、すでに入居テナントが内定している。とくに14〜35階を占める全てのオフィス区画に、グーグル社の本社機能が2019年度に移転入居することが発表され、話題になっている。

渋谷駅直上の施設が2019年度に開業

渋谷ストリームの先の東横線跡地には、官民が連携して進められている渋谷川の再生事業とあわせ、約600mにわたる遊歩道とイベントスペースとして活用できる広場が整備される。さらにその先の渋谷清掃工場付近にオープンするのが、渋谷代官山Rプロジェクトだ。同施設は、店舗、事務所、ホテルのほか、保育所を入居させ、地域の課題解決を図るのが特徴だ。

そして、2019年度には、渋谷駅直上に現在建設中の「渋谷スクランブルスクエア東棟」がいよいよオープンする。同施設は、渋谷駅周辺地区では最大級となる貸床面積約7.3万平米のオフィスと店舗面積約3万平米の商業施設という巨大な床面積が特徴だ。さらに最上部には、地上約230mの屋外展望施設が設けられ、都内・富士山の眺望のほか、眼下にはスクランブル交差点が見られるようになる。

このほか、2019年春には、東急不動産が入居していた新南平台東急ビルなどを建て替える「南平台プロジェクト」が、大規模なオフィスビルとして竣工。さらに、同年秋には、旧東急プラザ渋谷を含むエリアに、1階に空港リムジンバスも乗り入れるターミナルを含む複合施設「道玄坂一丁目駅前地区」がオープンし、都市型観光の拠点となる予定だ。

その後も、2023年の竣工を目指して「渋谷駅桜丘口地区」の整備が進み、2027年度に渋谷スクランブルスクエアの中央棟と西棟が開業し、渋谷の再開発は完了する予定になっている。

こうした再開発プロジェクトが進む中で、現在、渋谷の街が抱えている課題は、どのように解決されていくのか。

渋谷の街を歩いていて不便に感じるのは、谷地形であるため高低差が大きいことや、国道246号線や明治通りなどにより街が分断され、東西南北の移動がしづらいことが挙げられる。この問題について、まず、”縦動線”の改良については、2017年12月に、渋谷ストリーム計画地の横の16b出口にオープンして、”まるで宇宙船のようだ”と評判になっている「アーバン・コア」が、今後、複数設置されていく予定だという。

乗り換え動線が大幅に改善


2017年12月にオープンした「アーバン・コア」の内部(筆者撮影)

アーバン・コアとは、地下から地上への動線を分かりやすくするためにエレベーターやエスカレーターを独立した吹き抜けの縦軸空間に納めた施設だ。すでに渋谷ヒカリエ内にも設置されているほか、2019年度に開業する渋谷スクランブルスクエア東棟内にも設置され、地下の東横線・副都心線改札から地上のJR線改札、さらに、2019年度に東口の明治通り上に移設が完了し、供用開始される予定の東京メトロ銀座線新ホームへの乗り換えコンコースへも通じるようになる。

これに加え、周知の通り、2020年春の完成を目標に埼京線ホームを山手線と並列位置に移設する工事が進められている。これらの一連の施策ですべての課題が解決するとはいかないものの、渋谷駅の乗り換え動線は大幅に改善されよう。

一方、”横動線”の改良に力を発揮するのは、新設される歩行者デッキだ。東急電鉄都市創造本部渋谷まちづくり担当の亀田麻衣氏によれば、7大プロジェクトのうち、渋谷キャスト、Rプロジェクト、南平台を除く、駅周辺の4つの再開発計画地が、最終的に歩行者デッキで結ばれるという。例えば、今秋オープンする渋谷ストリームと渋谷駅との間は、東横線の高架橋を、デッキとして再利用して接続する。

もう一つ、渋谷の街が抱えてきた大きな問題は、都内の他地区と比べて空きオフィスが少ないことだ。今回、渋谷ストリームへの本社移転を決めたグーグルは、2001年に初めて日本法人を構えた際、渋谷の「セルリアンタワー」を本社としたが、後に手狭になり、六本木ヒルズに移転した経緯がある。グーグル同様、アマゾンやLINEなど、かつて渋谷に本社機能を構えた企業も、業容の拡大に伴い、渋谷を離れていった。


複数の再開発プロジェクトが同時進行し、混沌とした印象の渋谷駅周辺。「渋谷ヒカリエ」より(筆者撮影)

「最新オフィスビル市況」(三鬼商事)の2017年12月時点のデータを見ても、渋谷区・千代田区・中央区・港区・新宿区の都心5区の平均オフィス空室率が3.12%であるのに対して、渋谷区は1.67%と需要が高い一方、「東京の土地2016」(東京都都市整備局)によれば、区別事務所床面積は、渋谷区は587万平米と、港区の1799万平米や千代田区の1679万平米の3分の1しかなく、とくにハイグレードオフィスの絶対数が不足している。

渋谷の回遊性が高まる

この点について亀田氏は、「渋谷スクランブルスクエア東棟だけでも、オフィス総賃貸面積が7.3万平米あり、7大プロジェクト全体では27.2万平米のオフィスが新たに創出される。新たにホテルを作り、出張で訪れた人たちに渋谷に泊まっていただくことなどとあわせ、ビジネスユースでの渋谷利用客の大幅な増加を見込んでいる」とする。

数字だけ見れば、新たなオフィスを加えても渋谷区の事務所床面積は港区や千代田区はもちろん、中央区の1227万平米にも遠く及ばないが、駅近にこれまで希少だったハイグレードオフィスが増えるだけでなく、インキュベーションオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなど多様なオフィス環境が用意されることは、数字以上の効果があるだろう。東横線・副都心線の直通運転開始により、渋谷駅が「乗り換え駅」から「通過駅」に変わりつつあるという分析もある中、上述の乗り換え動線の改良と相まって、渋谷の街の回遊性向上への期待が膨らむ。

最後に、長谷部・渋谷区長に、今後の渋谷の街づくり等について、インタビューした。

――この秋には新たな施設も完成するが、どのように期待するか。また、渋谷の街づくりにおいて、2018年はどのような時期と位置づけるか。


イベント冒頭の挨拶に立った、長谷部健・渋谷区長(筆者撮影)

まだまだ開発の途上ではあるが、この秋には現在建設中の最高層棟(渋谷スクランブルスクエア東棟)も、完成時の高さである約230mまで工事が進む予定であり、区役所も10月に竣工するなど、おぼろげながら渋谷駅周辺再開発の全体的な雰囲気が見えてくる。多くの人に、再開発後の渋谷はこのような街になるというイメージを共通認識としてもってもらいたい。一方で、(全体像が見えてくることで)もっと、こうしたいという声も出てくると思われるが、そういった声を集約したり、考えたりするには、いい時期であるとともに、最後の段階になるかもしれない。

ベンチャー企業の再集結に期待

――街づくりとのからみで、2020年東京オリンピック・パラリンピックは大きなファクターだ。渋谷区としてはどのように準備を進めるのか。

まず、渋谷区は競技会場を有しており、卓球、ハンドボールのほか、パラリンピック競技として、パラバドミントン、パラ卓球、ウィルチェアーラグビーが行われる。当該区としてこれらの競技を精一杯応援するのはもちろんだが、とくにウィルチェアーラグビーはリオに行く前からの付き合いがあり、日本代表合宿も渋谷区でやってもらうなど、区民の間では知名度が上がってきている。こうしたパラスポーツを広める動きにもっと拍車をかけていきたい。

地方行政は教育と福祉が大きな柱と考えるが、パラリンピックは、その両方に大きな影響を及ぼす。ロンドン・パラリンピックでは、パラ選手たちが練習や競技に臨む姿を次々に映し出す“Meet The Superhuman”というテレビCMを流すなど、キャンペーンが話題になった。こうしたいい前例に学びつつ、盛り上げる機運や気概を街中に広めていきたい。

――渋谷ストリームのオフィスにグーグルが本社機能を移転することになったが、その波及効果等については、どう考えるか。

渋谷区は、”ちがいをちからに変える街。”を基本構想に掲げているが、グーグルをはじめとするIT系企業は、多様な価値観が混ざり合って、新しいイノベーションを起こしてきているように見え、渋谷区が掲げるビジョンと方向性が一致する。この街でアクティブに事業を展開して欲しいと思う一方、家賃高騰等もあり、ベンチャー系が渋谷から離れているが、グーグルのような基幹企業を中心に再度、渋谷に集結することを期待している。東急電鉄が(2018年秋の施設オープン後、2019年のグーグル本社移転まで空きオフィスになるなどの条件もある中で)渋谷ストリームのオフィスをグーグルに全フロア1棟貸ししてくれたのは、大英断だと思う。