「JR九州」といえば多彩な特急列車を連想する人も多いであろう。こうした花形特急は多くの利用客を集め、週末は満席になることも多いが、一部は減便対象となった(博多駅、大分行の特急「ソニック」)

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「かなりの効率化をやっても収支を上向きに改善させるのは難しい。ローカル線は効率化できなければ長く維持できない――」

 2018年1月26日に行われたJR九州の記者会見で青柳俊彦社長はこう述べ、3月のダイヤ改正で実施される大規模減便や無人駅拡大への理解を求めた。

 JR九州が2017年12月に発表した「大規模減便」の方針は、沿線自治体に大きな衝撃をもたらした。「どうせ減便されるのは閑散線区だろう」と思う読者もいるであろうが、決してそうではない。減便される路線はJR九州の全路線に当たる22路線、1日当たり117本(2月15日現在)にも上る予定で、九州の大動脈である九州新幹線や、多くの客で混み合う福岡都市圏まで対象とされたのだから、その深刻さは明らかだ。

 JR北海道、四国、九州3社は「三島会社」と呼ばれ、民営化直後から経営基盤が脆弱だと指摘されていたが、そうしたなか、JR各社のなかで初の新型特急電車を導入したのはJR九州であった。その後は工業デザイナーである水戸岡鋭治氏との連携により観光列車を続々と投入するなど積極投資を続け、九州全体のイメージアップにも貢献。2016年には悲願の株式上場を果たした。

 しかし、現在のJR九州の売上高のうち鉄道事業は約4割程度。その屋台骨は、鉄道事業ではなく駅ビルやドラッグストアなどの運営、マンション分譲などの流通事業や不動産事業だ。

 とはいえ、JR九州にとって開業以来赤字が続いている鉄道事業の立て直しは喫緊の課題だ。

 JR九州の2017年3月期の鉄道事業は約87億円の赤字。2017年に起きた九州北部豪雨や台風被害で被災した鉄道の復旧費用は総額約118億円もかかると見込まれており、2016年に起きた熊本地震も含めて被災路線の一部は未だに復旧の目途さえも立っていない。

 そうしたなか、2018年度には鉄道事業の固定資産税の減免措置が失効。今後はさらに毎年約55億円前後もの税負担が増える見込みであり、上場企業となった以上、株主から鉄道事業のさらなる合理化を迫る声が上がることは必至だ。

 JR九州としては、今回の大規模減便や無人駅の拡大でその先手を打ったかたちだが、沿線自治体の反発は小さくなかった。

◆「合理化」の影響を受ける自治体、その動きは早かったが……

 大規模減便の発表を受けた各自治体の動きは比較的早かった。

 減便の対象となった多くの沿線自治体が減便への反対を表明。2月までに九州全県と山口県の一部自治体がJR九州への改善要望を提出するに至っており、そのうち一部は住民意見の集約なども実施するなど、減便に対する危機意識はそれだけ強かった。

 なかでも、JR3路線が集まる「鉄道の要衝」となっている大分県大分市は、九州全体の減便対象列車の3割弱に当たる29本が大分駅を発着するなど、影響を最も大きな受ける都市の1つだ。

 大分市は人口約48万人。隣接する別府市などを含めると都市圏人口は約75万人にも上る。その中心駅であるJR大分駅の乗降客数は九州4位の1日約4万人。2015年に建て替えられたばかりの駅ビル「JRおおいたシティ」は22階建てで、都内の駅ビル「ルミネ」にも引けを取らないテナントを揃え、年間約2500万人以上を集客するという日本有数の規模の駅ビルだ。

 駅ビルの開業直前には市内を走る3路線がともに増発され、増発後の大分駅の乗降客は2010年ごろと比較して2割近く増えるなど鉄道利用客は順調に増加。JR九州に対する市民の満足度は比較的高かった。それだけに今回の大規模減便を残念に思う人は少なくない。

 JR九州は「お客さまの利用状況を見て削減する列車を決めた」としているが、今回削減される列車のなかにはラッシュ時に運行される利用客が非常に多いものも含まれているため、疑問を抱く市民も多い。