日産自動車が2017年10月に日本を皮切りに発売した電気自動車の新型「リーフ」。中国の拡販でも重要な役割を背負っている(撮影:大澤 誠)

「中国市場でトップ2に続く、第2グループの先頭にわれわれはいる。そこからジャンプする時だ」


日産の関潤専務執行役員。東風汽車有限公司の総裁を2014年1月から務める。市場の伸びを上回る成長を実現できるか、その手腕に注目が集まる(記者撮影)

日産自動車と東風汽車集団との合弁会社、東風汽車有限公司の関潤総裁(日産専務執行役員)は中国事業の成長に並々ならぬ決意を示した。日産は2月5日、中国で2022年までに年間販売台数を2017年比で100万台以上、率にして7割増の260万台に引き上げるという野心的な計画をブチ上げた。15日に日本で開いた中国事業説明会では、関総裁が計画達成に向けた周到な戦略を語った。

伸びしろが大きい中国に巨大投資

日産は今後5年間で、生産能力増強や電動車開発などに600億元(約1兆円)を投資し、20車種超の電動車を発売する方針だ。日産が中国に重きを置くのは言うまでもなく、世界最大市場で伸びしろが大きいからだ。2017年の中国全体の新車販売は前年比3%増の2890万台と小幅な伸びにとどまった一方、日産は12%増の152万台と大きく成長。中韓関係の悪化で販売が急落した韓国の現代自動車を抜いて3位に浮上した。

ただ、400万台以上を売る首位の独フォルクスワーゲン(VW)や2位の米ゼネラル・モーターズ(GM)の背中は依然として遠い。日系首位の座を維持こそしているが、後ろからはホンダが猛烈に追い上げている。大人気のSUV「ヴェゼル」「XR-V」を武器に、ホンダは昨年、日産を上回る15%の伸びを見せ、145万台を売った。

自動車メーカー各社が中国で台数を伸ばそうと画策する中、焦点になるのは「NEV(新エネルギー車)規制」への対応だ。2019年から導入され、自動車メーカーに一定割合のEVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの生産・販売を義務付ける。最近は、各社のEV投入計画の発表が相次ぐ。日産も2018〜19年に、「日産」、「東風」、低価格帯のローカルブランド「ヴェヌーシア」の3ブランドから計6車種を発売する計画だ。とはいえ、各メーカーにとって「NEV規制クリアはマスト」(関総裁)とも言え、この規制をテコに他社に差をつける戦略はなかなか難しい。

都市部ではナンバープレートが手に入らない

そこで市場攻略のカギを握るのが、大都市の主にガソリン車を対象にしたナンバープレート発給規制への対応だ。この規制は、可処分所得の増加でマイカーの購入意欲が強い中間層が急増する中、都市部の渋滞や大気汚染を緩和するために採用された政策。各都市に割り当てられた数のナンバープレートしか発行されず、取得できなければ新車を購入しても乗れない。日産によると、ナンバー規制が導入されているのは、北京や上海、広州など7都市。EVでは大半の都市で取得無料かつ割り当て制限がないのに対し、ガソリン車では抽選制度を採用する北京での当選確率は0.0012%、広州でも0.87%と超低確率だ。今後も採用都市は拡大していくとみられる。


中国の現地メーカーBYDが販売するPHV。ナンバー規制でEVやPHVの販売に追い風が吹く(編集部撮影)

一方で、NEVを購入すれば当選確率が高くなり、一定期間待てばナンバーが取得できる。「EVを積極的に買いたいという人がそんなにいるわけではないが、ナンバーを長期間待つよりはEVでいいという人がほとんど」(関総裁)という消費者意識の変容がある。EVをはじめとするNEVは補助金などを含めてもなお割高だが、その乗用車販売は、2017年に前年比7割増の57万台にまで成長。BYD(比亜迪)や北京汽車集団など現地メーカーが先行する。ナンバー規制が追い風となっているのは間違いない。

NEVの乗用車販売 は2020年には200万台まで増加するという予測もある。5年間で100万台以上上乗せしたい日産にとっては、この需要を取り込めるかが死活的に重要になる。関総裁も「(台数増の)ポイントはナンバー規制」と、規制への対応に勝機を見いだしていく考えだ。

日産は今後5年間に中国に投入する40車種以上のうち、半数超を電動化モデルにする方針だ。その主軸はやはりEVだ。現時点では、中国のEV市場はシェアの大半を現地メーカーが握っている。ただ、品ぞろえが少なく、デザインや機能性に不満を持つ消費者も多い。日産の予測では、2022年のEV需要139万台のうち、53%に当たる73万台がナンバー規制のある都市住民にあると見る。

商品次第で現地メーカーからシェアを取り返せる。そう考えた日産は、セダンだけでなくSUV(多目的スポーツ車)などEVの車種数を一気に増やして、需要を深掘りする戦略だ。2018年に投入する新型「リーフ」はその試金石と言え、量産型EVでは前モデルも含めて累計販売台数首位という実績が偶然ではないところを証明したいところだ。中国専用EVの開発も急ぐ。

「e-POWER」搭載車で台数増狙う

日産はナンバー規制で膨らむ需要の取り込みに向け余念がない。日産が投入する電動車モデルには、現在は日本のみで販売する「e-POWER」搭載車を含む。エンジンで発電してモーターで駆動するタイプの車だ。e-POWERは現状はガソリン車と同様にナンバー規制の対象となっている。これをナンバー規制の対象から外すよう、現地当局に働きかけているという。


日本で販売好調の日産「ノートe-POWER」。日産は「e-POWER」の搭載車種を2022年までに中国に投入する計画だ(撮影:尾形文繁)

小型車「ノートe-POWER」は、日産の国内販売を牽引している。「充電不要のEV」と打ち出したことで、EVに関心はあるが航続距離の短さを気にする消費者の取り込みに成功した。日産は現時点では中国で販売するe-POWERの車種を公表していない。e-POWERがナンバー規制でEVやPHVと同じ扱いを受けるようになれば、中国の都市部で一気に販売増を狙える。

今や、中国は日産にとっても世界販売台数の4分の1を占める屋台骨だ。日産の地域別販売台数では今年、中国が米国を抜き、首位に躍り出る可能性が高い。米国は競争激化による販売奨励金(インセンティブ)が高止まりし、収益性が急激に悪化している。北米の営業利益率は2017年度第3四半期にわずか1%にまで落ち込んだ。米国は全体需要も頭打ちで、日産にとって当面は大幅な台数増を狙える環境にない。世界最大市場で確実に成長できるか、中国事業の成否が日産の命運を左右することになりそうだ。