韓国で開催中の平昌オリンピックでは、連日白熱した試合が繰り広げられており、4K解像度で放送されるド迫力の映像は手に汗握るオリンピックの観戦をを盛り上げてくれます。試合の攻防だけでなく選手の表情まで鮮やかに切り取る放送用の高画質カメラでは、なんと2000万円を超えるレンズが使用されています。

Broadcast camera lenses at the Olympics can cost as much as a Lamborghini | Popular Science

https://www.popsci.com/olympic-camera-lenses-broadcast

オリンピックのような大きなスポーツイベントでは、100万円を超える高額のズームレンズを持ち込む熱心なファンが見られます。これらはカメラファンにとっては憧れのレンズですが、放送用のレンズに比べると、価格は比較的安価だとのこと。アメリカの放送ネットワークNBCが平昌オリンピック中継に使用しているのはキヤノンの「UHD-Digisuper 86」というレンズで、市場価格は22万2980ドル(約2360万円)だとのこと。Popular Scienceは「ランボルギーニと同じくらい高価」と表現しています。



カメラを含まないレンズ単体で2000万円オーバーというUHD-Digisuper 86は、サイズが250.6×255.5×637.4mm、質量が約27kgのレンズ。モデル名は、焦点距離が9.3mm〜800mmで86倍ズームを持つことから名付けられています。さらに、エクステンダーで焦点距離は2倍の18.6mm〜1600mmになり、アスリートの表情を鮮明にとらえることが可能です。



光を集めるレンズには、光の特性への対応が不可欠です。異なる波長の光が異なる角度で屈折することで起こるプリズム効果によって「色収差」と呼ばれる色のずれが生じることがあります。この色収差を防ぐために、キヤノンはガラスよりも屈折率が低い蛍石などの特殊な素材を使用しているそうです。



レンズエレメントの加工は、まずガラス素材から材料を削り出し、不完全さをを取り除くために手作業での研磨が行われます。キヤノンのラリー・ソープ氏によると、4Kカメラ用レンズでは、わずか2ナノメートルの誤差でも性能に影響する可能性があるとのこと。そのため、一般的なレンズよりも多くの時間を費やして研磨が行われているそうです。

ソープ氏によると、レンズの研磨作業の前にコンピューターシミュレーションを使って理想的なレンズ設計が行われるとのこと。「新しいレンズの試作品を作る前に、コンピューターによって何億もの可能性を考えます。寸法や形を分析するシミュレーションは数カ月かけて行われます」とソープ氏は述べています。

キヤノンでは光学性能をテストするために以下の2パターンのライトを使っているとのこと。左がレンズのフォーカス収差をテストするもので、右が広角での歪みをテストするものです。



UHD-Digisuper 86を装着する放送用カメラのセンサーは対角11mmの2/3インチセンサーを使用します。放送用カメラではHD画質を得るために非常に小さな領域に多くのピクセルを詰め込む必要があり、4K解像度ではその難度はさらに高くなります。HDテレビの世界では、1mmごとに100本の白黒ラインを含めなければならず、4Kでは求められる条件はさらに過酷になり、ソープ氏によると「光学的に不条理なレベルの精度」が必要になるそうです。

なお、レンズは両手で操作し、通常は右手でズーム、左手でフォーカスを調整するそうです。さらに、レンズは遠隔操作も可能で、放送室から補助することで、カメラマンは動きの速い被写体に集中出来るとのこと。ソープ氏は、「オリンピックのようなイベントのカメラオペレーターはとても熟練した腕を持ちます。世界中の人が見ている中、ハーフパイプを跳ぶスノーボーダーをカメラで追いかけるような責任を私は負いたくありませんね」と述べています。