『インターネット白書』は1996年、iNTERNET magazineでの取材をもとに制作し、第1号を発行した。以来、IT/デジタル業界の年鑑として継続し、現在では一般財団法人インターネット協会(IAjapan)、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)の協力のもとに、株式会社インプレスR&Dから発行している。今回は、2月9日にリリースした『インターネット白書2018』(副題:デジタルエコノミー新時代の幕開け、編者:インターネット白書編集委員会)の巻頭カラーに掲載した「10大キーワードで読む2018年のインターネット」を引きながら、2018年版の着目点を紹介する。(iNTERNET magazine Reboot編集長・錦戸 陽子)

(1)仮想通貨(暗号通貨):ビットコインの過熱が他の通貨にも波及

 一般にも広く知られるようになった仮想通貨(暗号通貨)。2017年に改正資金決済法、いわゆる仮想通貨法が成立したことをきっかけに、この1年で認知度が高まり、取引高とユーザー数が増大した。国内では取引所やマイニングファーム(発掘事業)に参入するなど、仮想通貨ビジネスも拡大している。

 「第5部 社会動向」では、実利用よりも投機が先行したことや価格高騰の背景、ビットコイン分裂騒動を乗り越えた経緯などこの1年の仮想通貨をめぐる国際動向を解説、市場健全化に向けての課題を提示している。また、関連するブロックチェーン技術の現状については、「第2部 テクノロジーとプラットフォーム動向」で詳しく解説している。

(2)ICO:仮想通貨を基盤とした新しい資金調達法

 企業や事業プロジェクトなどが、独自のデジタルトークンを発行して資金調達するICO(イニシャル・コスト・オファリング)。日本ではICOと共通概念を持つ「VALU」をきっかけに広く知られるようになった。誰もがトークンを購入してプロジェクトを応援でき、また、トークンは、ICO後に一般取引所で扱われる仮想通貨として流通することもあり、これまでの金融商品とは異なる可能性に期待が膨らんだ。

 「第5部 社会動向」では、ICOの調達額が2017年に比べて巨額になり、ICOブームが仮想通貨を押し上げた一方で、詐欺行為も発生しており、投資家保護の観点からは対策や基準が必要だと述べている。

(3)スマートスピーカー:音声インターフェイスが日常生活にも浸透

 アメリカで大ヒットしたアマゾンのEchoや、グーグルの製品が2017年後半に日本に上陸したほか、LINEがいち早く参入したことでも話題になったスマートスピーカー(AIスピーカーとも呼ばれている)。

 「第2部 テクノロジーとプラットフォーム」では、このスマートスピーカーをポストスマートフォンデバイスと位置付け、機能、製品の核となる音声インターフェイス(AlexaやGoogle Assistant、Siriなど)、今後のトレンド、ビジネスモデルまで解説している。スマートスピーカーの活用範囲は広く、「第2部 ビジネス動向」でもEコマースの利用スタイルに大きな影響があると述べている。

(4)AI生活:身の回りにある製品のAI化が進む

 AI(人工知能)ブームは継続し、ビジネス活用はますます進むが、巻頭カラーでは、身近なコンシューマー製品に注目した。

 子ども向けの玩具や家電製品、ロボットでのAI採用が増えている。復活したソニーの犬型ロボット「aibo」もAIを搭載している。

 同じAIでも技術レベルはさまざまだが、「音声や画像の認識」「複雑な表現や自律的な動き」「学習に基づいた反応」などを“AIの特徴”として謳うものが多い。2017年は音声インターフェイスを備えた「ノールックAI家電」が注目されたが、従来ある家電製品にAIを取り入れる動きは今後さらに進むだろう。

(5)VR:デバイスの進化とプラットフォームの乱立

 「第2部 テクノロジーとプラットフォーム」の解説によると、2017年のVR市場を伸ばしたのは「ロケーションベースVR」と呼ばれるゲームセンターのような遊戯型体験施設である。国内では27ものVRの施設が創られ、一般社団法人ロケーションベースVR協会も設立された。また、B2B向け市場ではVRの理解が進み、これまで認知されていた建築以外の分野でも、企業内の教育に利用された事例があるという。一方で個人向けVRコンテンツの利用はまだ限定的であり、2017年は成長手前であったと分析している。

 しかしデバイスは着実に進化しており、グーグル、マイクロソフト、アップルなどはOSレベルでのVR/MR対応を進めている。2018年も引き続きプラットフォームの動向に注目していきたい。

(6)動画メディア:TVコンテンツの座を獲得しつつあるVOD

 プロ棋士の藤井聡太四段(当時)の対局番組や元SMAPの人気タレントをテレビ局に先駆けて起用するなどニーズをとらえた企画力と製作力の高さで存在感を示した「AmebaTV」。また、年間60億ドルともいわれる巨額の予算を投じて質の高いコンテンツを生み出す「Netflix」。

 既存のテレビ局がインターネット同時配信の実験を進める中、この1年はインターネット発のプレイヤーの快進撃が目立ち、VOD市場が成長した。

 一方、スマホ世代の間では、LINE LIVEやインタラクティブにECを行うライブコマースなど、ライブ(生中継)の動画メディアが注目されている。

(7)5G:2020年の開始に向けた実証実験が本格化

 国内では2020年のサービス開始を目指し、各社も5Gの実証実験を進めている。NTTドコモは一般客向けに5Gのサービスを体験できる企画を行うなど、市場への訴求も始まっている。

 2017年12月には、3GPPにおける5G NR標準仕様の初版策定が完了し、最終的な規格決定へ秒読み段階に入っている。

 2019年開催予定のITUの国際会議では24GHz以上の5G候補周波数11バンドからIMTバンドが追加配分される見通しである。

(8)LPWA:IoT通信基盤として全国各地で活用事例

 IoTの通信基盤として期待されているLPWA(低消費電力型広域無線)。NB-IoT/LTE-M(セルラーLPWA)は、世界32か所で商用サービスを展開。SIGFOX/LoRaWAN(非セルラーLPWA)市場にはSony's LPWAが参戦するなど、動きが激しい。

 国内ではKDDIが日本初のセルラーLPWA「LTE-M」の商用サービスを開始した。また、地域レベルでネットワークを構築し、事業化を進めやすいため、自治体などが地域活性化や地方創生の施策として取り組むケースも増えている。

 「第2部 テクノロジーとプラットフォーム」では世界視点でLPWAの動きを解説し、日本の取り組みの後れを指摘している。

(9)ネットワーク中立性:FCCの決定に対する反発と懸念が継続中

 2017年12月、FCC(連邦通信委員会)はネット中立性のための規制撤廃を決定した。この規制は、FCCが2015年に示した「オープンインターネット命令」の下で実施されていたが、政権交代の影響もあって撤廃された。一方で、規制の恩恵を受けていた側からは反対や懸念の声が上がっており、議論はしばらく続くとみられる。

 日本でも、モバイル通信のゼロレーティングでネット中立性の議論が小さいながらも生まれている。

(10)xTech(クロステック、エックステック):あらゆる産業分野で起きつつある構造変革

 iNTERNET magazine Rebootでも注目したxTech(クロステック、エックステック)。金融、保険、農業、医療、交通といった既存産業とインターネットやビッグデータ、AIといった最新の技術を組み合わせることで、新たなビジネスや価値を創出しようとする「○○Tech」の波が押し寄せている。デジタル化や技術の導入は入り口でしかなく、その本質は、技術が橋渡しとなって、これまで異なる分野として棲み分けられていた企業や組織を結び付けることで、協業/競合相手が変わる構造変革である。

 「第1部 ビジネス動向」では、分野別のxTechの動きを紹介しているが、日本ではまだ個別最適の段階であり、世界市場に打って出るためには視点の転換が必要だと述べている。