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重要な約束を忘れる。ボーっとしている時間が長い……実家の親の様子がおかしいとき、認知症を疑うべきかもしれない。動揺しては、事態は好転しない。冷静に正しく対応するため、必要な知識をご紹介しよう。第4回は「効果的な予防法は」――。(全5回)

■これが軽度認知症チェックリスト11項目

最近、認知症予防のための取り組みとして提唱されるようになった概念がある。それが軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)だ。現段階では認知症とはいえないものの、放っておけば認知症になる確率が高い状態を表す。

「認知症は前段階として記憶障害が発生することが多い。家庭生活はほぼ独力で営めるけれど、仕事や社会生活に支障をきたすほど記憶力に問題が生じ始めたら、MCIと診断されます」(伊古田氏)

ただしMCIと診断されても、全員が認知症になるとはかぎらない。MCIは誰でも経験する普通の老化の過程であって、約3割が健常に回復するという見解がある。その一方で、MCIと診断された人の5〜10%が1年後に、20〜40%が5年間で認知症に移行したという研究報告もある。

いずれにせよ、MCI診断の目的は、「早めに手を打って、認知症になるのを先送りする」こと。まずはあなたの親に次のような症状が見られないか確認して、なるべく早めに予防を勧めておくべきだろう。

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▼あなたの親も軽度の認知症? こんな症状が起きたら注意!
・同じことを何度も言ってしまうことが多い
・ボーっとしている時間が増えた
・財布や貯金通帳など、大切なものが見つからない
・約束や確認事項をよく忘れる
・待ち合わせの場所にうまく行けなくなった
・片付けや料理、車の運転がうまくできない
・同じようなミスを繰り返す
・テレビドラマの筋を追うことが面倒くさい
・身だしなみに気をつけなくなった
・電子機器の操作が困難
・趣味や好きなことに関心がなくなってきた
※伊古田俊夫氏の話をもとに作成

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それでは認知症を予防するために何をすればいいか。今のところ日本医学会がもっとも高いエビデンスがある行動として評価しているのが、運動だ。ウオーキングや軽いジョギング、ゆっくりした水泳などの有酸素運動を1日40〜50分、週4〜5回行う。すると認知症を遠ざけられるというデータがある。

「日常的に運動している人としていない人とでは、している人のほうがホルモンの分泌量が5〜10%多い。そうなると体の活動性が高まり、生活に対する生き生きとした姿勢が維持される。それが認知症の予防につながります」(同)

意外な予防手段としては、減塩がある。イギリスで政府が1日の塩分摂取量を6グラム以下(日本人の成人男性の平均塩分摂取量は11.0グラム)にするという減塩政策をとったところ、認知症の有病率が20年間で2〜3割減少する驚くべき結果が出た。減塩することで高血圧が減り、それにより脳卒中と脳血管障害が減ったのだ。また認知症はアルツハイマー型と診断されても、背後に脳動脈硬化や小さくて目立たない梗塞が隠れていることが多く、それらのケースにも効果があると予測できる。

予防は若いうちから取り組むほど有効だが、老いた親世代は何を意識すべきか。

「社会的交流を活発に保つことも重要です。軽い認知症だったのが、異性の友人ができたとたん進行が遅くなった患者さんもいます。孤独で引きこもると認知症は早く進行する。交友関係を広げておきましょう」(同)

「海馬の衰えは、しばしば認知症の記憶障害をもたらします。つまり海馬を日常的に使っていると、認知症になりにくい。自分のいる場所や目的地について考えるなど、空間認知に関わっているとき海馬は鍛えられるので、いろいろなところに出かけ、頭を使うことをお勧めします」(阿部氏)

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阿部和穂
1963年生まれ。武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳と薬。近著に『認知症 いま本当に知りたいこと101』(武蔵野大学出版会)
 

伊古田俊夫
1949年生まれ。勤医協中央病院名誉院長。社会脳科学の立場から認知症の臨床研究を進める。近著に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社ブルーバックス)
 

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(ライター&エディター 長山 清子 撮影=金子山 写真=iStock.com)