都立の進学校、東京・昭島市にある昭和高校のソフトテニス部(男女)はここ10年のうち9年間、個人・団体戦で選手を関東大会に送り込んでいる。そのうち2回は全国高校総体に進出。スポーツ推薦はないものの、その活動や実績が評価され、先月、都の「スポーツ特別強化校」に指定された(平成30年度より3年間)。

 部員は現在1、2年生で男子6人、女子10人。中学時代は無名の選手ばかりだ。文武両道がモットーで、平日の練習は2時間程度。「その中で結果を出すには、まずフィジカル面の強化が最重要」と鈴木秀彦監督(54)は、入部直後の選手と保護者を対象に「勝つための栄養補給」の講義を実施している。

■保護者も全面バックアップ

 配布される8枚つづりのプリントには「なぜ食事が大切なのか」「アスリートは一般の生徒よりも多くの食事量、栄養素が必要」「試合でパフォーマンスを発揮するための食事」「食品構成表」などが、分かりやすくまとめられている。

 大半の選手と保護者は、食事がパフォーマンスを左右するといったことを、ここで初めて知る。「勝つためには食事が大切。そのためには家庭の協力が不可欠です」と熱弁する鈴木監督に、「それを知ったからにはやるしかない」と保護者も全面協力、バックアップ体制が整うという。

 線が細く、小食だった選手も3カ月もたつと食事量が明らかに変わり、体がひと回り大きくなる。伊藤明日佳選手(1年)はもらったプリントを撮影し、スマホアプリで家族と共有。「いつでも見返せるようにしているし、この中から食べたいものを家族に伝えたりしている」とフル活用している。男子のキャプテン、畑中光一選手(2年)は毎夕必ず、鶏ささみの「棒々鶏」を大皿で食べてタンパク質を補給。そのかいあって「肩周りやふくらはぎの筋力がアップし、球の威力が増した」と笑顔を見せた。

■食べ合わせや食べる順番も

 夏場、炎天下でプレーするための水分補給や熱中症予防、さらに「時間栄養学」として食べる順番や時間も指導している。管理栄養士で、中野区の中学校の栄養教諭でもある友美夫人の協力を得ながら、食べ合わせや食べるタイミングなどをプリントにまとめて配布。また、企業の管理栄養士から得た情報をまとめ直すなどし、効果的な食事のポイントを伝えている。

 選手たちは、練習後30分以内のタンパク質摂取はもちろんだが、血糖値の急激な上昇を防ぎ、集中力を持続させるため、「野菜から食べるようになった」と口を揃える。「豆腐+ミョウガ」「豚肉+ニンニク」などの組み合わせで、ビタミンB1の吸収率を高めるよう意識もするようになった。

■「なぜ」を常に考えさせる

 鈴木監督は学生時代、大成した選手ではない。26年前、新任の学校で部活動の顧問になったことから指導法を学び、選手とともに成長してきた。

 「ソフトテニスにおいて、才能や遺伝は競技力全体の約15%しか影響しない」と言い切る。高校から始めても、しっかりとした食事、休養(睡眠)で体力をつければ、高度なスキルが身に付くという考え方だ。

 ただし「効率良く」。体を作る材料を入れたら、よりよく吸収させ、せっかく筋肉を作ったなら、それを壊さない。そのためにはどうしたらいいのか。「なぜ、後半にバテたのか」「最後まで集中力が保てなかったのか」を選手自身に考えさせ、やるべきことを継続するよう促している。

 年明けから全国の強豪校との練習をこなし、全国レベルを肌で感じている。選手たちの大きな目標は「全国大会出場」。しかし、その前に毎日の練習と回復、1つ1つをこなしながら強く、大きくなっていく。

■人間形成に重き「食事は一生のもの」

○…ソフトテニスは硬式テニスと違い、プロがある競技ではない。鈴木監督は部活動という「教育」の一環、人間形成に重きを置いている。「食事は一生のもの。これを基盤に、社会人になるとき、親になるとき、その時々で胸を張れる人間でいられるように」。そう願い、常々、「学んだことを人に教えられるようになれ」と言っているからか、教師、管理栄養士、保健師、理学療法士、保育士、看護師と、栄養にも関係する専門職に就くOB、OGが多いようだ。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】