ビルの内部イメージ。(画像: 住友林業の発表資料より)

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 今どき高層ビルは珍しくないが、頭に“鉄筋コンクリート”が付かない、しかも木材で70階の高層ビルとなると、硬くなった頭では付いていけなくなる人も出て来るのではないだろうか?

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 8日、木材関連事業にひと際強いこだわりを持つ住友林業が、都内に主部材が木材で構成された地上70階建ての高層ビルを、2041年までに建築するプランを発表した。建物の高さはおよそ350mで、一部に鉄骨を含むにしろ、7階以上の「木質」建築は日本初である。

 木造の高層建築物が今まで存在しなかったのは、木材の燃えやすい属性を懸念した建築基準法の規制による。2000年に同法の改正があり、それまで素材によって規制されていた基準が、性能基準に変更されたことで理論的には木材での高層建築が可能になった。性能基準の耐火認定は1時間耐火仕様の場合は概ね従来の建物、2時間耐火仕様になっても上限14階建てまでという規制があり、3時間耐火仕様の場合に初めて階数制限がなくなり、15階以上の高層ビルに木材を組み入れることが可能となった。しかし、3時間耐火仕様とは、バーナーを使用した1000度超の炉内で3時間燃焼した上、そのまま9時間炉内で放置しても、中心部の木材に焦げ目が付かない、という過酷な条件を満たすことが求められている。この条件が高いハードルになって、これまで3時間耐火仕様の条件を満たした高層ビルは建築されていなかった。

 17年11月、住友林業は熊谷組と資本業務提携を締結して、中・大型建築事業に注力する方針を鮮明にしている。その熊谷組が同月28日付のプレスリリースで、「木造建築の3時間耐火にめど」とし、「独自技術により被覆厚さ75mmの試験体で性能確認」 したことを公表した。住友林業は耐火木材の開発を自社で行うとしているが、熊谷組が3時間耐火に目途を付けたことは心強いに違いない。

 技術開発の切磋琢磨はこの分野でも同様である。木造建築を手掛けるシェルター(山形市)は1月17日、同社が開発した木質耐火部材が“日本で初めて”3時間耐火の国土交通相認定を受けたことを発表したと日経新聞が報じている。シェルターの技術も固有の事業分野で生かされる筈である。

 昨年6月にはカナダのバンクーバーに、柱や床等の主要構造材に木材を用い、高さ世界一になる、18建ての「高層木造ビル」が完成した。ブリティッシュコロンビア大学(UBC)が建設した学生寮で、同月からすでに供用を開始している。

 森林資源の豊富な日本には、古来より伝わる木造建築物が多い。戦後盛んに進められた植林によって、樹齢50年以上の人工林は50%以上の割合を占める状況で、森林資源蓄積量は50億立法メートル以上となっている。すでに森林資源を活用するための伐採や、その後の植え替えを行う時期が到来している。しかし、利用量は2000万立方メートル程に止まっており、1億立方メートルと見られる年間成長量の1/5しか活用されていない。

 住友林業の木造高層ビルは建設地を東京・丸の内と想定し、延べ床面積45万平方メートルで、同社が得意とする注文住宅8000棟分に相当する18万5000立方メートルの木材を使用する予定だ。店舗・オフィス・ホテルに住居を含めた併用型で、現時点では総工費を6,000億円と試算している。

 これまで木材を利用した建築物といえば主に住宅だったが、少子化の進展による人口減少によって、将来の住宅着工件数の減少は避けられない。このままでは需要が減少する木材を、有効活用することは社会的な急務であるとも言える。また、コンクリートや鉄を製造する際には大量のエネルギーを消費し、地球温暖化を進行させる多くのCO2(二酸化炭素)を排出するのに比べて、木材は環境負荷が少ない。社会や環境への配慮を優先させた「エシカル(倫理的)消費」の流れに沿ったものであり、社会での認知度向上が大いに期待されるものである。