(図1)

写真拡大

2017年から1年ほど上昇基調を保ってきた米国の株価が、18年2月頭に急落しました。資産運用を始めるにあたり、「株価が高すぎるから投資するのを控えておこう」と考えていた方の中には、株価の急落を受け、ますます始めるタイミングに迷っている方も多いのではないでしょうか。しかし、「『長期・積立・分散』の資産運用なら、相場の動向に左右されず、なるべく早いタイミングで始めることをおすすめします」。こうアドバイスするのは、資産運用を自動化したサービス「WealthNavi」を提供する、ウェルスナビ代表の柴山和久さん。その理由を合理的に解説してもらい、「損をしたくない」という感情に振り回されずに正しい判断をするコツを聞きました。

感情が「正しい判断」の邪魔をする

 人間の脳は、投資には向いていません。感情に邪魔をされ、不合理な行動を取ってしまうことが多いからです。これは2017年のノーベル経済学賞で注目を集めた「行動経済学」でも実証されていますが、人間の脳は投資をするときに「正しい判断」をしづらいのです。

 人は「損をすること」を嫌います。

 「損をすること」による感情と、「得をすること」による感情を比べると、振れ幅は2倍近くになると言われています。たとえば、1万円札が入った財布をなくしてしまったときの心の痛みは、道で偶然1万円札を拾ったときの喜びをはるかに超えるインパクトがある、ということになります。

 「損をしたくない」というこの感情が罠となり、合理的な投資行動の邪魔をすることがよくあります。

相場の動きがわかっていても間違えることがある

 2017年頭からの1年ほど、世界の株式市場は、一時的なアップダウンはありながらも上昇基調を保ってきました。「今は株価が高すぎるから、いったん下がってから資産運用を始めよう」と考えていた人もいたかもしれません。

 株式市場がどう動くかはわかりませんが、もしわかっていたとしたら、「正しい判断」ができるのでしょうか―?ある条件のもとで、2人の個人投資家のどちらが高いリターンを得られるか予想していただきたいと思います。

 1月に1万円だった株価が下がり続けて4月に6500円となり、その後は上がり続けて12月には1万1000円になったとします(図1)。

 Aさんは「相場は気にせずコツコツと投資しよう」と思い、1月から12月まで毎月10万円ずつ積み立てます。Bさんは「1月の株価は高すぎるから、しばらく様子を見て株価が下がったところでスタートしよう」と思い、4月に株価が底を打ったのを確認して5月から12月まで毎月15万円ずつ積み立てます。投資にあてるお金(元本)は2人とも120万円です。

 さて、AさんとBさんでは、どちらが高いリターンを得られたでしょう?

 直感的に「相場が下がりきってから投資するBさんなのでは?」と思われたかもしれません。人間の脳は「損をする」ことを嫌うので、それはとても自然な感情です。

 しかしこのケースで、最終的に高いリターンを得られたのは、株価が下がる前から投資していたAさんでした。12月時点で、Aさんの資産は154万円(元本より34万円のプラス)、Bさんの資産は149万円(元本より29万円のプラス)となりました。一般的に、株価が下がって割安なときに投資をしておくと、株価が戻るスピードよりも速く、資産の評価額を回復させられます。

株価が下がったからこそ割安に買える

 AさんとBさんの平均購入価格を比べると、図2のようになります。株価が下がっている最中にも投資したAさんのほうが、Bさんより割安に株を買うことができています。割安なうちに多く買っておいたので、株価の値上がりの恩恵を大きく受けることができ、Bさんよりも高いリターンを得られたのです(ただし、株価やタイミングといった前提条件が変われば、Bさんのほうがリターンが高くなることもあります)。

 投資をするとき、「株価が下がる」ことにマイナスの印象を持つ方は多いでしょう。しかし長期で投資することを考えれば、株価が下がったからこそ「割安で買える」というプラスの面もあるのです。

 では、なぜ多くの人は「Bさんのほうがよさそうだ」と直感するのでしょうか。

 それは「損をしたくない」という感情のインパクトが大きすぎるからです。株価が大きく下がって上がるという動きを見たとき、多くの人は株価が1万円から6500円まで下がることを「怖い」と感じ、損をする可能性のある選択肢について考えるのを止めてしまいます。つまり、Aさんのように行動しないのは、人間の感情からすればとても自然なことなのです。

続きはこちら(ダイヤモンド・オンラインへの会員登録が必要な場合があります)