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「ヤフーはスマホの会社に加えて、データの会社になる」

 6月にヤフーの代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に就任する予定の川邊健太郎氏は、1月24日の社長交代の記者会見で、自分に与えられたミッション(使命)をこう語った。

 次期社長に内定した川邊氏は現在、副社長兼COO(最高執行責任者)。1974年生まれの43歳で、社長兼CEOである宮坂学氏の社長就任時より1歳若い年齢での就任となる。

 川邊氏はネット黎明期の1995年、青山学院大学法学部在学中にウェブサイト制作を手掛ける「電脳隊」を立ち上げた学生起業家だ。大学卒業後の99年9月に社長に就任。2000年、ヤフーに買収されたのを機にヤフーに入社。その後、動画の「GYAO(ギャオ)」社長など、メディア関連の事業に携った。現在はコマースグループ長としてネットオークション「ヤオフク!」や、ネット通販「Yahoo!ショッピング」の事業を率いている。

 ヤフーは2月2日、2017年4〜12月期の連結決算(国際会計基準)を発表した。売上高は前年同期比4.4%増の6587億円と増収だが、本業の儲けを示す営業利益は同2.9%減の1478億円、純利益は同1.6%減の1031億円と減益だ。

 検索連動型をはじめとする広告関連売上高が増えたことや、前年度に電子書籍大手イーブックイニシアティブジャパンを連結子会社にしたことで増収。販促費やデータ分析用コンピュータ向け設備投資が増えて営業減益となった。

 セグメント別では、広告を収入源とするメディア事業の売上高は同3.1%増の2114億円、営業利益は同3.1%増の1234億円。営業利益率は58.4%と高い。パソコンからスマートフォン(スマホ)へのシフトが成功し、収益の柱となっている。

 これに対して、もうひとつの収益の柱と見込むEC(電子商取引)事業の成長は道半ばだ。ネットオークションやネットショッピングなどのコマース事業の売上高は同5.1%増の4379億円。しかし、営業利益は同5.4%減の619億円と落ち込んだ。営業利益率は14.1%で広告関連事業と大きな差がある。四半期の純利益が減益になった理由がここにある。

 今後のヤフーの成長は、EC事業の拡大にかかっているが、EC市場は競争が激しい。ヤフーの看板である検索サービスやネットオークションの足元が揺らいできている。

●ポータルサイトのシェアはグーグルが69.57%で圧勝

 ニュースや天気、辞書からメールの検索など、さまざまなサービスを集約したのがポータルサイトだ。インターネットの黎明期から続く、代表的なサービスといえる。

 ヤフーは、パソコンの時代にはポータルサイトの圧倒的な勝ち組だった。だが、スマホ時代を迎えるとヤフーの牙城は崩れ、グーグルに首位の座を奪われた。

 ブラウザや検索エンジン、SNSなどのシェアの引用元としてよく使われる情報サイトに「Stat Counter Global Stats」がある。日本国内の検索サービスの17年2月時点でのシェア調査には、驚くような数字が並ぶ。

 スマホではグーグルのシェアが69.57%、ヤフーが29.4%。パソコンでもグーグルが67.54%、ヤフーは23.2%。グーグルの圧勝で、ヤフーはもはや太刀打ちできない状況にまで陥っている。

 現在のヤフーの稼ぎ頭は、ネットオークションの「ヤフオク!」だ。かつては独り勝ちしていた分野だが、メルカリなど新興勢力の突き上げを受けている。スマホ視聴率データ「Nielsen Mobile NetView」の17年5月の利用者数データによると、ヤフーの厳しい現状が浮かび上がる。

 アプリとブラウザからの利用者合計であるトータルの数字でみると、メルカリの利用者数は1376万人、対してヤフオクは1533万人でヤフオクのほうが多い。しかし、アプリの利用者数に限定すると様相は一変する。メルカリは1299万人、ヤフオクは903万人で、メルカリの利用者数が400万人ほど多い。しかも、スマホアクティブユーザーの利用率は、メルカリが21.1%に対してヤフオクは14.7%にとどまる。

 ヤフオクはトータルの利用者数は減少傾向にあり、アプリ利用者数も増えていない。トータルの数字でも、メルカリがヤオフクに追いつき、追い越すのは時間の問題とみられている。明らかにメルカリのほうに勢いがある。

 ヤフーの業績は堅調だが、置かれた状況は厳しい。創業事業である検索サービスではグーグルに完敗し、主力の「ヤフオク!」もメルカリに追い上げられている。新興勢力に凌駕される「老舗」といった状況だ。

 その危機感が、川邊氏の「データ会社になる」発言につながっているとみる向きもある。データ会社になるとは、具体的にどういうことか。川邊氏は、ネット広告やECなど、すでにある事業のデータを活用して、他社に対するソリューションビジネスなどを構想しているという。ソリューションビジネスとは、顧客の業務上の要求や課題を分析・把握し、それを提案するための取り組みを支援する業務を指す。

 川邊氏は2月6日、今後の事業計画を発表した。

 企業や自治体と組んで、ビッグデータを活用する実証実験を本格的に始める。メーカーが持つ購買データなどとヤフーのサービスの利用履歴を組み合わせることで、より正確な消費者像を特定。新商品開発や効率的な行政サービスの運用に生かす。

 ヤフーはこうした企業間データ連携の取り組みを19年度に事業化する。これまでヤフーのニュース検索、ECなどの利用履歴は、同社の営業ツールとして利用者に合わせたコンテンツを紹介するためにだけ使われていた。

 今までは、データの強みを生かせていなかった。今後は外の企業にデータを開放することで、次の事業の柱にする。これが川邊氏の描く「データ会社になる」の意味とみられる。

 ちなみに、宮坂氏は社長退任後、新たな挑戦に乗り出す。新会社「Zコーポレーション」を設立し、代表に就任。ヤフーとは別組織で新規事業を開拓する。社名のZには「Y(ヤフー)の次」という意味を込めたという。
(文=編集部)