増加を続ける中国人訪日客。日本での楽しみ方にも変化が表れている(撮影:尾形文繁)

街でとにかく中国人を見掛ける――。そう思った方も多いのではないだろうか。2月16日は中国の春節(旧正月)。休暇を利用して多くの中国人が大移動することで知られ、日本にも毎年多くの中国人が訪れる。今年の春節シーズンは15〜21日で、日本観光振興協会によると、訪日客のピークは17日になる見通しだという。

昨年、中国からの訪日客は過去最高の735万人に及んだ。今年もさらに伸びていく見通しだが、これまでの団体客中心から「個人旅行化が急速に進んでいる」(日本政府観光局)。その中で、中国人の日本での楽しみ方も変わってきている。

いま注目されているのが、モノではなく「コト」消費だ。「コト」、すなわち体験型ツアーのことだが、消費する金額も大きい。「コト」需要そのものは多岐にわたり、”忍者体験ツアー”、”着物着付けツアー”などがあるが、その1つとして利用者が増えているのが、中国人旅行客の「美容体験ツアー」だ。

月20〜30組が参加

中国人が日本の美容技術に持っている評価は、あこがれに近いほど高いとされている。そのため、単に日本の化粧品を買うだけでなく、美容を組み込んだツアーを体験することが新しいトレンドとなっているのだ。

この動きにいち早く対応しているのが、日本のヘアサロン、ネイルサロン、エステサロンなどを検索できる中国人旅行客向けの美容ポータルサイト「ビューティパークチャイナ」(玩美花园)を運営しているオーエス(東京都豊島区)である。

「ビューティパークチャイナ」は、2017年4月に中国人旅行客向けにスタートし、月平均のページビュー(PV)は133万といった状況。問い合わせはスマートフォン(ウイチャット)などを通じて月平均で30〜40件あり、月20〜30組が美容ツアーに参加している。「組」というのは、友人、親子、夫婦、カップルなど2人以上で美容を組み込んだツアーを体験するのが一般的なケースとなっているためである。

現在の中国人旅行客の受け入れ提携加盟店は、東京16店、大阪7店のヘアサロン、ネイルサロン、エステサロン。「ビューティパークチャイナ」は提携加盟店から初期手数料10万円、月手数料1万円を得ており、中国人旅行客が美容サロンで落とした費用の20%が手数料として得られるシステムとなっている。

「当初、美容サロンに中国人のお客がいたら、日本人のお客が嫌がるのではないかなど懸念があった。だが、ふたを開けてみると中国人旅行客は富裕層のハイクラスの方が多く、マナーがよくて問題はまったくなかった。富裕層ですから、おカネは持っている。日本人のお客から違和感などのクレームは出ていない」(オーエスの織田光一代表取締役)

美容に9万円を使った中国の女性客

「ビューティパークチャイナ」は、事前予約制が基本のシステムだ。中国人の女性コンシェルジュが、中国人旅行客のスマホ(ウイチャット)からの問い合わせに綿密なカウンセリングで対応して提携加盟店への予約を代行する。


「日本の若い人と同じヘアスタイルにしてほしい」という要望が多いという(写真:オーエス)

「日本の若い人と同じヘアスタイルにしてほしい」「石原さとみのような髪形にしてほしい」「競争社会に疲れているので癒やし系のエステに行きたい」などの中国人客の要望に対してそうとうきめ細かく対応する。料金は前払い制が原則で、ウイチャットなどで決済を行って予約が完了する。加盟店としてはドタキャンなどを最も恐れており、それがないように工夫されている。美容サロンでの化粧品のオプション購入などでも、ウイチャット、デビットカードなどで決済する。

これまでに「30〜40代の女性のお客が2人で美容に8万〜9万円を使ったケースがあった。ヘッドスパ、パーフェクトホワイトニング、全身スパなどを2日にわたって体験した」(織田代表)という。

美容サロンでの言葉=コミュニケーションの問題は、独自開発した接客アプリで対応する。美容サロンでも、中国人旅行客の細かい要望に応える必要があるためだ。ほとんど接客アプリで解決しているが、どうにもならない場合はコールセンター(コンシェルジュ)に連絡してコミュニケーション問題の解決を図っている。


美容サロンでは顧客とのコミュニケーションも重要な要素だ(写真:オーエス)

オーエスは、もともと美容院のホームページを制作していたのだが、2012年から国内で美容サロンの予約検索ポータルサイト「ビューティパーク」を運営している。同サイトは全国のヘアサロン、ネイルサロン、エステサロンなど9万8000店舗を網羅する。

中国の旅行会社と提携しツアー客を取り込み

美容サロンのポータルサイトでは「ホットペッパービューティー」(リクルートライフスタイル)が有名だが、こちらは広告料収入をビジネスモデルとしている。一方、「ビューティパーク」は美容サロンにお客を紹介する成果報酬方式(一律1000円)を基本とする。サイトからの送客を増やす必要があり、美容院とのより深い連携が必要になる。

「日本の美容サロン業界は、店舗過剰で過当競争。働いている人は、長時間労働で賃金は安い。国内のパイを取り合うのではなく、訪日客をお客様にしてパイを大きくする。日本の美容業界を変えたいという思いを持っている」(織田代表)

オーエスは中国の旅行会社・上海春秋国際旅行と提携し、中国人美容体験ツアー客の取り込みを本格化させる。それに合わせ、「ビューティパークチャイナ」の提携加盟店は2018年3月末に30店舗へ拡大する見込み。2019年3月までには、東京20、大阪15、福岡5、名古屋5、北海道5の全国50店舗体制を構築する計画だ。