<短期的に景気が後退するとしても低金利政策によるバブルを軟着陸させたほうがいい>

2月1日以来、スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数は5%近く下げ、数年ぶりの大幅下落を記録した。

不動産関連株はさらに大きく下げた。最大規模の米不動産インデックスファンドは2月1日以来6%下げ、年初来10%の下落となった。

こうした大幅急落はほんの序章にすぎない。投資家はFRB(米連邦準備理事会)の新議長に就任したジェローム・パウエルが利上げペースを維持するか加速するとみており、株や不動産など、金利上昇から悪影響を受ける資産から資金を引き揚げている。

一部の投資家や市場の専門家からは、景気後退を引き起こさないよう利上げペースの緩和を求める声もあがっている。だがパウエルはそんな声を無視すべきだ。10年続いた超低金利政策は、貯金に老後を頼る中産階級を苦しめ、市場をゆがめた。

金利を急に従来の水準に戻せば、株価の下落や短期的な景気後退を引き起こすかもしれない。だがそれは、アメリカに残る自由な企業精神と自助の精神を守る唯一の方法だ。

ゼロ金利政策の巻き添え

2008年秋の金融危機に際して、FRBは融資と投資の刺激策として金利をゼロに引き下げた。景気後退のさなかの急激な利下げは筋が通っている。だが、その後に起きたことは前代未聞だった。09年に景気後退は一段落したのに、FRBは2015年12月までゼロ金利政策を継続したのだ。

FRBの決定は巻き添え被害をもたらした。特に大きな損失を被ったのはベビーブーム世代だ。高齢者や退職間近の人々は従来、資産を譲渡性預金(CD)や国債といった安全資産に預けてきた。

だがこれらの資産は近年、ほとんど利息がつかない。1年物CDの金利は現在約1.8%。インフレ率が1.8%前後で推移していることからすれば、実質金利はゼロだ。多くのエコノミストは、政府のモデルがインフレ率を過小評価していると感じている。つまりCDでは実質的に資産が目減りしている可能性もある。

一方、10年物米国債の利回りは現在約2.8%で、2013年以降利回りが3%を超えたことがない。

こうした金融商品のリターンがあまりにも低いため、退職者には2つの選択肢しかなくなった。元金を取り崩しながら生活するか、高リターンを求めて株やジャンク債のようにリスクの高い投資に手を出すか。

先週の株価急落は、強気相場が永遠に続かないことを示している。株式は本質的に変動しやすく、株価は過去最高水準に近い。著名投資家ウォーレン・バフェットはかなり前から人々に警告してきた。「短期間で株価が50%下落して困る人は、株を買うべきではない」

虎の子の蓄えが半分に目減りした退職者の心境は察するに余りある。

トッド・スタイン(米投資銀行ブレイサイド・キャピタル社長)