今年も就活生に有利な「売り手市場」が予想される中、大手企業の採用には変化の兆しが・・・ (写真:Fast&Slow / PIXTA)

新卒、中途採用を問わず、就職活動では「売り手市場」が続いている。もちろん、2019年卒の新卒採用についても、企業の採用意欲は引き続き高い。そんな中で多くの就活生が注目する大手企業の動きはどうなっているのか? 採用の現場を最前線で見ているわれわれが、実際の状況と、学生がこの時期からできることについて、解説していきたい。

働き方改革やAIで離職者が減る

大手企業についても採用意欲は高く、昨年並みかそれ以上の採用数を確保した企業が多い。だが一部では違う動きも見られる。


特に金融業界では、営業窓口など顧客と接する業務の見直しを行っており、すでに大手銀行の中には、以前から採用人数を減らしているところがある。今年も同様に採用数を絞り込む気配があり、その採用数削減の動きは、生命保険会社・損害保険会社にも広がっている。

背景には、働き方改革等の取り組みにより、離職者が減って人材定着が一層改善していることに加え、AI(人工知能)を活用した業務改革がある。仕事の定型化や自動化が進むと同時に、人に求められることも変化してくる。上記で触れた業界では「社員一人ひとりにより高い次元の能力を求める」とする企業が増えているのが現状だ。

一方、商社は、もともと100〜150人程度と、銀行や保険に比べれば採用規模が小さいこともあって、2019年卒も採用人数は変わらない見通しだ。商社はこれまでも、「より優秀な人材がほしい」というスタンスで採用活動を行ってきており、その方針にも変化はないと思われる。

ただ、商社の採用の変化を挙げるとすれば、「求める人材」の志向だろう。今までは、どちらかと言うと外資系銀行を採用の競合として意識していたが、ここ最近はベンチャー企業を意識している。会社の将来を考え、起業意欲のある学生など、ゼロからビジネスを作り出すような志向や経験を持った人材を求める傾向になっている。

メーカーも人数の増減はないが、質的な変化が見られる。自動車メーカーや電機メーカーでは、自動運転技術やIoT(モノのインターネット)などに対応するため、情報系の技術や知識を持つ学生が求められている。さらに素材メーカーなどは好調な業績を背景に研究開発に力を入れており、情報系の技術職に加えて研究職の採用人数を増やす傾向にある。

AIや機械学習に関する技術を持つ人材は、メーカーだけでなく、他の業種でもほしい人材だ。しばらくはそうした人材の争奪戦が繰り広げられると思われる。

企業が説明会やセミナーを”絞る”意味

求める人材の変化に合わせ、大手企業の広報活動にも変化が起きつつある。それを見極めることも必要だ。

たとえば、合同説明会などの就職イベントでは、同じ企業が何度も出展、毎回同じ話をしているイメージがあるかもしれない。しかし、企業は、開催する時期や場所、来場する学生の傾向を把握したうえで出展している。つまり、意図を持って、イベントに参加しているのだ。どのイベントに出展しているかは、企業が求める人材を知る貴重な情報といえる。

また、採用人数を絞る企業は、合同企業説明会やセミナー、イベントなどへの出展を減らす可能性もある。そう考えると、関心を持っている企業が出るイベントを見つけたら、機会を逃さずに足を運ぶほうがいい。合同企業説明会やイベントが集中する時期には、どういう趣旨のイベントで、どんな企業が参加しているのかを確認したうえで、行くべきイベントを見極める必要があるだろう。

また働き方改革は、採用の舞台裏にも影響を及ぼしている。メーカーや商社などは、OB・OGや若手社員をはじめとしたリクルーターに、多くの社員を投入していた。が、企業が残業時間の削減を推進していれば、業務負担を減らすため、リクルーターの数を減らすことは容易に想像できる。その場合、企業は限られたリクルーター人材を、どう有効に活用したいか考えているはずだ。

だからこそ、リクルーターと接触したいと考えているならば、自分の意欲をきちんとアピールすることも大切になってくる。企業に問い合わせをしたりして、興味や関心があることを、まず行動として見せる。そして、リクルーターとの話をより密度の濃いものにするべく、予習をしっかりしておくことも大事だろう。

リクルーターが減れば、接触回数も少なくなる可能性がある。先輩から、「あの企業のリクルーターとは3回面談してもらった」と聞いていても、2回になる可能性がある。同じ就活生の間でも、住んでいる地域や企業と大学との距離によって、会う回数も違ってくる。それを受けて、「会う回数が他の人より少ないから自分には見込みがないのか」と思い、選考を受けずに勝手に諦めてしまうのはもったいない。リクルーターの接触有無が選考の絶対条件ではないし、企業や部署ごとにリクルーターの実施有無・人数も異なることを認識しておいたほうがいい。

また、「あの企業は会いに来ないから採用意欲は低いようだ」と、安直に判断しないほうがいい。とにかく意中の企業があるのなら、過去の例や周囲の状況は気にせずにちゃんと選考に参加し、結果が出るまで勝手な思い込みはしない方がいい。

ちなみに理系学生の場合、「推薦」で志望するタイミングに留意したい。大手メーカーが理系学生を技術職として採用する場合、大学や教授等の推薦状を求められるケースが多い。ところが、推薦枠での採用になると、他企業に就職する選択肢が閉ざされることにつながる。早く内定を得ることを優先し、第一志望群ではない企業を推薦で受けてしまう例を耳にする。意中の企業があるなら、その採用スケジュールを把握し、どの段階で決断する必要があるのか、整理しておいたほうがいいだろう。

アンテナを張り、多角的に情報収集を

大切なのは「企業の情報をきちんと集める」ことだ。当たり前のことだと思うかもしれないが、その本当の意味を知っている学生はまだまだ少ないはず。「説明会に参加しても無駄」、「企業ページに載っている情報は役に立たない」などと言う先輩もいるかもしれないが、無駄な情報などないといってもいい。

説明会では事業の説明が得られるだけでなく、社員との座談会が設けられていることもある。短い時間に複数の社員と話す絶好の機会にもなる。OB・OG訪問は1人の人からじっくり情報を引き出すチャンスになる。他にもホームページ、パンフレット、ウェブセミナー、先輩社員の話など、企業は採用につなげたいからこそ、時間や費用を投資してさまざまな手段で情報を発信しているのだ。それを無駄と言い切ることはできない。

情報を集めることは、企業の姿を多角的にとらえるためにも、必要な作業なのである。

どんな仕事ができるのか、働いている人はどんな人なのか、その業界ではどんな立ち位置なのか、他の業界とはどのようにかかわっているのか、そして世の中でなぜ必要とされているのか――。さまざまな視点で情報を集め、それを確認していくことで、初めて、この企業は自分に合っているのか、生き生きと働くことができるのかを、考えることができる。

そのためにも、企業が情報発信する機会を逃さず、いろいろな方法で情報を集める必要があるだろう。大手企業の採用動向の変化を読み、自分に合った企業を選択できるよう、アンテナを張り、「情報を集めるという姿勢」を忘れないようにしてほしい。