執筆:月刊『からだにいいこと』編集 -株式会社からだにいいこと

忙しい現代人にとって、毎日十分な睡眠時間を確保するのは至難の業。その睡眠不足が蓄積すると体に危険なことが起こる睡眠負債について、まとめました。

少しずつ睡眠不足が積み重なって体に悪影響が

毎朝、「もうちょっと寝たい……」と思いながら、重い体をどうにかベッドから起こす。そんな、毎日を送っていませんか? この「もうちょっと寝たい」という日々の睡眠不足が借金のように積み重なっていくことを「睡眠負債」といいます。

睡眠時間の目安は7時間。厚生労働省の調査によると、平均睡眠時間が6時間未満の人が4割、また10人に1人は5時間未満の睡眠で生活しているそう。7時間睡眠が理想的な人が、平日5時間しか寝られない場合、2週間でたまる睡眠負債は、20時間。ほぼ、1日に近い時間になってしまいます。睡眠負債が怖いのは、自分では気づきにくいところです。

ペンシルバニア大学の実験で、6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜した脳とほぼ同じ状態になったそう。これは、被験者を2つのグループにわけ、一方は2日間徹夜、もう一方は2週間6時間睡眠を続けてもらい、注意力や集中力を調べるテストを行ったもの*。睡眠負債を抱えた場合は、自分では気づかないうちに、注意力や集中力といった脳の機能が低下しているのです。下記のような症状がある場合は、睡眠負債を抱えているかもしれません。

・イライラしやすくなった

睡眠不足だと、脳の前頭葉の働きが低下します。すると、感情の抑制がきかなくなり、イライラしたり、落ち込んだりなど、情緒が不安定に。日常のちょっとしたことでイライラする人は、睡眠負債を抱えているかもしれません。

・日常で小さなミスが増えてきた

睡眠と脳についての研究で、睡眠負債を抱えると注意力や集中力が低下することがわかっています。そのほか、判断力が鈍る、物事を論理的に考えられない、発想が乏しくなるなどの影響も。仕事や家事で、小さなうっかりミスが増えたり、判断力が鈍って人の意見に流されやすくなったりする傾向もあります。

・太りやすくなってきた

睡眠不足が続くと、脳で分泌される「レプチン」という、食欲を抑えるホルモンが減少。逆に、食欲を増す「グレリン」というホルモンが増えるので、食欲が増してしまいます。良質な睡眠がとれていると、睡眠中に成長ホルモンが分泌して、寝ている間の新陳代謝を促しますが、睡眠不足だと成長ホルモンの分泌も低下するため、代謝もダウンします。

適切な睡眠時間は人によってさまざま

ショートスリーパーといって、短い時間で睡眠が十分な人もいれば、8時間睡眠が必要な人もいます。自分の適切な睡眠時間を知るためには、体調と睡眠時間の関係を意識しましょう。

自分が何時間寝たら体調がよいのか、日頃から気にかけておくとともに、起きてから4時間後に眠気があるかどうかも、目安のひとつだそう。起床から4時間後は一番脳が活性化している時間。この時に眠気がある場合は、睡眠が足りていないということになります。

睡眠時間が足りていない場合は、平日の睡眠不足を補うためには土日にたっぷり眠りましょう。ただし、目覚ましをかけずに心ゆくまで眠るという方法では、逆に体内時計が狂ってしまい、睡眠の質の低下につながります。土日の朝寝坊は、いつもの起床時間のプラス2時間以内にすること。そして、朝食を食べたり、朝日を浴びたりして、体を起こしたあとに、二度寝をしましょう。夜はいつもの時間に就寝してください。これで睡眠負債を調節して、生活の質を上げましょう。

*Sleep. 2003 Mar 15;26(2):117-26.