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●端末事業の狙いどころ

2月9日、モバイル業界を騒がせてきた「FREETEL」の新製品発表会が開催された。プラスワン・マーケティング(POM)から端末事業を買い取ったMAYA SYSTEMのもとで、新生FREETELとして再出発する。

2017年末に経営が悪化し、格安スマホ「淘汰の時代」を象徴する存在になってしまったFREETELだが、果たしてその端末事業を引き継いだ狙いはどこにあるのだろうか。

○「儲からない」MVNO事業を捨て、端末事業で再出発

MAYA SYSTEMとは、MAYAグループの一角としてITソリューション事業を手がけており、クラウドSIMを利用したWi-Fiルーター「jetfi」を展開してきた会社だという。発表会に登壇した代表取締役の吉田利一氏は、NTTコミュニケーションズの出身で、通信業界にも造詣が深い。

FREETELの端末事業については、2018年1月9日にPOMからの譲り受けが完了。POMが提供していた残債免除で端末を交換するサービスなど、MVNO事業を承継した楽天側との協議事項は残っているが、1月15日からは端末の販売も再開したという。

果たしてFREETELの端末事業を買って「よかった」と言えるのか。吉田氏は自問自答する形で問いを投げかけ、「答えはイエスだ。優秀な社員や、30万人近いFREETEL端末のユーザー、販売チャネル、ブランドが手に入り、全体では非常にプラスになった」と好感触を語った。

POMが失敗した原因はどこにあったのか。吉田氏はNTTコミュニケーションズ時代の経験を踏まえ、「MVNO事業は(FREETELの)30万人程度では儲からない。最低でも100万人は必要」と規模感を指摘する。POMもユーザー獲得のためTVCMや店舗展開を急速に推し進めたが、コストがかさみ頓挫した。

その端末事業を受け継いだMAYA SYSTEMの印象は、「現実路線」だ。POM時代には増田薫社長が「10年で世界一を目指す」とぶち上げ、世界戦略を語った。だがMAYAは対照的に足場固めを優先する。国内SIMフリー市場はファーウェイなどが強いことを念頭におき、端末ラインアップは広げすぎず、やや特化した端末に集中していくという。

最初のステップとして吉田氏は、一連の騒動でついたFREETELの「悪いブランドイメージ」を払拭したいと語る。まずはグループ会社が手がけるコールセンターの受託事業を活用し、3月から4月にかけて自社でサポート体制を立ち上げるとした。

●MAYAが見据えるもの

○「eSIMスマホ」でMVNOの弱点を補完へ

サポート体制強化の次のステップとしてMAYAが見据えるのが、FREETELの開発能力を活かした「海外eSIMスマートフォン」の実現だ。

すでにMAYAが販売するWi-Fiルーターは、eSIMを利用して海外の現地キャリアに接続するサービスを提供している。この技術をスマートフォンに搭載することを目指しており、今夏の提供に向けてテストに着手しているという。

メリットは、国内のMVNOが提供していない「海外データローミング」を補完できる点にある。eSIMスマホが実現すれば、国内ではMVNOの格安SIMを使いつつ、海外では現地キャリアの安価なデータ通信を使う、「いいとこ取り」が可能になる。

その中核となっているのが、POMからMAYAに移籍した端末開発部隊だ。発表会ではPOM時代から開発を進めていた新製品として、デュアルカメラ搭載の「REI 2 Dual」や、低価格機の「Priori 5」を発表した。資金繰りの悪化によりお蔵入りになりかけたところを、MAYAの支援や関係者の尽力で発売にこぎ着けたという。

特徴は、従来のFREETEL端末のようにODM企業のベースモデルを改良するのではなく、初めて自社で端末を設計した点にある。POM時代から取り組んできたソフトウェアの改良も進んでおり、着実にレベルアップしている印象だ。

MAYAも認める通り、SIMフリー市場での生き残りは容易ではない。だが「eSIM」という特徴を活かした事業展開が軌道に乗れば、グローバルの端末メーカーとはひと味違う存在になりそうだ。