2月9日の平昌(ピョンチャン)冬季五輪開幕を機に韓国では、五輪のニュースが満載だ。一方で、ネットで意外な話題になったのが、「日本への旅行」だった。

 韓国のニュースは、開幕式前後には、「北朝鮮」一色だった。

 金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長や金正恩(キム・ジョンウン)委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長の訪韓、「三池淵(サムジヨン)管弦楽団」の公演、「美女応援団」・・・猛烈な「平和」攻勢だった。

 ところが、韓国で一般国民の関心が高いかと言えば、以前の「応援団」の登場や「南北共同行進」ほどの盛り上がりはない。

 ネットの話題を見ると、意外な項目が上位に入っていた。

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冬季五輪開催中に旧正月連休

 「日本への旅行」だった。

 平昌冬季五輪の期間中である2月15〜18日は、韓国では「旧正月」の連休だ。土日を含めて4日間と決して長くはない。五輪開催中で、「テレビ観戦三昧か」と思いきや、この間に海外旅行に出かける人たちが予想外に多いのだ。

 大手旅行者などの話を総合すると、「2017年の連休に比べて海外旅行に出かける人は、10〜15%増になりそうだ」という。

 2017年の旧正月の連休(1月末)期間中、仁川(インチョン)や金浦(キンポ)など韓国内の14の空港から1日平均11万人が出国した。過去最高だったが、これを大きく上回るという見方が多い。

 ではどこへ出かけるのか?

 韓国で話題になったのが、電子商取引会社が発表した「連休期間中の航空券予約記録分析」だった。

 旅行先の人気上位をみると、1位は韓国で最も人気が高い済州島。不動のトップで誰もが納得だが、2位以下を見ると、大阪、福岡、東京と2位から4位までを日本が占めたのだ。

 ニュース番組などでも、「国内外を含めた人気スポットの2位から4位までを日本が占めた」が大きな話題になっている。

 あるラジオニュース番組を聴いていたらの司会者が「済州島の次を日本の都市が独占したとは驚きだ」と言うと、ゲストコメンテーターが「私も行きます」という場面があった。

 もちろん、連休期間が比較的短いこともあるが、今回の連休だけでなく最近、韓国では「日本旅行ブーム」といえるほどの様相だ。

 筆者の周辺にも、「連休に日本に行く」という知人が本当に多い。

 行き先も、「東京や大阪のほか、九州の温泉、沖縄、高松・・・」と多様だ。

 韓国観光公社が、日本政府観光局の統計をもとにまとめた統計資料によると、2017年に日本を訪問した韓国人は714万人で前年比40.3%増だった。

日韓路線は週1000便以上

 「日本への旅行ブーム」は東日本大震災の後の2012年頃から顕著になっていた。日本への旅行者数は、以下のような増え方だ。

2012年 204万3000人
2013年 245万6000人
2014年 275万5000人
2015年 400万2000人
2016年 509万人

 特に2015年以降は、一気に伸びている。

 韓国の大手旅行会社によると、「1週間に日韓間を行き来する航空便は1000便を超えている。韓国発では、圧倒的な便数だ」という。

 どうしてこんなことが起きているのか。

 1つは、LCC(低価格航空会社)の相次ぐ就航で、手軽に日本各地に旅行できるようになったことだ。

 仁川空港発なら、日本の地方空港へも直行便を簡単に探すことができる。これとも関係するが、もう1つは、「コスト」だ。

 LCCに便数が増加したことで、低価格の航空券が簡単に手に入る。

 筆者は、2017年12月に福岡に用事で行ったが、このとき、仁川空港と福岡空港間を韓国の「イースター航空」で往復した際、料金は往復で12万ウォン(1円=10ウォン)だった。1万2000円だ。

 ソウルと釜山間のKTXの往復料金(11万9600ウォン=一般席普通料金)とほぼ同じだ。往復10万ウォン以下の仁川ー成田便を最近ネットで予約して旅行してきた知人もいる。

航空券だけではない「安さ」

 「コスト」は、航空券だけではない。

 「朝鮮日報」は2月7日付で「“韓国より安いね”・・・それで日本にまた行きます」という記事を載せた。

 日本と韓国の大手コンビニエンスストアと外食チェーンでの価格を比較した表も載せた。

 それによると、コカコーラ(500ミリリットル)、牛乳(500ミリリットル)、エビアンミネラルウォーター(330ミリリットル)などの価格が、軒並み日本の方が安い。

 スターバックスの「アメリカン・トールサイズ」も、韓国4100ウォンに対して日本3190ウォンで、1000ウォンほどの差があることが分かった。

 「東京の物価は世界一高い」と言われたのはいつのことだったか?

 多くの韓国の旅行者が、「日本の物価は予想していたほど高くないどころか、多くの品目で韓国よりも安い」と感じているのだ。

 もちろん背景には「超円高是正」もある。

 韓国銀行の統計によると、2011年8月には、1円=15.3ウォンだった。ところが、2013年秋以降、1円=10ウォン前後になった。2017年秋以降は、1円=9ウォン台で推移している。

 これだけ「ウォン高円安」になれば、ウォン換算での日本の物価が安くなるのも当然だ。

 筆者の周辺の駐在員の生活も変わった。

 先日、羽田空港でソウルからの便の荷物を待っていたら、何人かの駐在員に会った。みんな大きなトランクを持っているから「何をそんなに?」と聞いたら、「ああ、ほとんど空っぽ。日本で買い物をしてソウルに持ち帰るためですよ」ということだった。

 「衣類も食料品も、日本の方が安くて品揃えも多いから、買い物はもっぱら日本でする」ということだった。

 「朝鮮日報」によると、2017年に韓国を訪問した日本人は231万人。2015年の183万人から2016年に229万人と急増したが、2017年はほぼ前年並みにとどまった。

 日本を訪問した韓国人が、韓国を訪問した日本人よりも3倍多い。

サービスも好評

 韓国を訪問する日本人は、「あまり買い物はしない」という。

 朝鮮日報のこの記事は、「コスト」以外に、サービスの良さも「日本人気」の原因だと指摘する。

 「東京でラーメン一杯食べただけでも、従業員が心がこもった対応をしてくれる」。先月、東京を訪問した20代の感想も紹介している。

 それにしても、韓国人の間での「海外旅行ブーム」は熱くなる一方だ。

 2017年の韓国観光公社の統計を見ると、海外に行った韓国人は2649万6000人で同18.4%増だった。

 韓国紙デスクはこう話す。

 「2018年は、海外に出る韓国人が3000万人を突破する勢いだ。人口が5000万人だから、相当な比率だ」

 「平昌冬季五輪の開催を機に、外国人観光客が韓国に大量にやって来るという話はほとんど聞かず、韓国人がどんどん海外に行くという話ばかり話題になるのも、なにか、変な話だが・・・」

 外国人観光客の誘致に力を入れる日本政府とや自治体にとっては、なんともありがたい話だ。

 だが、韓国を訪問した外国人は2017年には1333万人で、前年比22%減となってしまった。韓国の「地上配備型ミサイ迎撃システム(サード)」配備に中国政府が反発して、「経済報復」の一環として韓国向け団体観光客を制限したためという見方が韓国内では多い。

 中国からの来訪者は、2016年の806万人から2017年には416万人と48%減になってしまった。

 これに嫌気が差してか、韓国からの中国訪問者も減少しており、これも「日本への訪問者数増加」の一因になっている。

 それにしても、2017年の日本からの海外旅行者数が1788万9300人だったことを考えると(日本政府観光局統計)、年間3000万人とは韓国の海外旅行はすごいブームで、冬季五輪開催もこの勢いを止められないようだ。

筆者:玉置 直司