日本に本当にカジノは必要なのか?(写真はイメージ)


 日本にもカジノができるそうです。

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」という法律が可決・成立したのは2016年末でした。通称は「IR法案」。IR(Integrated Resort)、すなわち、カジノを中心に宿泊施設、会議施設、テーマパーク、商業施設などを一体的に整備する統合型リゾートの設立を推進する基本法です。日本で禁じられてきたカジノの解禁につながることから「カジノ法」「カジノ解禁法」「カジノ推進法」などとも呼ばれています。

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「日本はギャンブル依存症の先進国」

 このIRの「実施」法案の成立に向け、今国会でギャンブル依存症対策が審議される予定です。これについて、1月末にNHKの「日曜討論会」で各党の政策責任者がそれぞれの立場を表明していました。

 推進の中心にある自民党は、「観光先進国になろうという中で、日本に世界中から訪れる魅力を持った拠点をつくる」と強い決意を述べています。

 公明党は、「推進法が成立した以上、どのように実効性あるものにしていくかが大事」と自民党に協調しながらも、「ギャンブル依存症対策をしっかりするのが大前提だが、対策ができたからそれでいいというわけでもない」と慎重な姿勢を見せています。

「減っていく人口を補うとき、外国人観光客は重要な役割を果たす」とガンガン後押しするのは維新。

「日本型IRは可能性がある」として好意的な希望の党は、一方で「政府のギャンブル依存症対策予算は不十分」とチクリ。

 これに対し、真っ向から反対の意向を表明しているのが立憲民主党。「日本はギャンブル依存症の先進国だ。パチンコに加えてカジノを解禁すれば間違いなく依存症は増える」としています。共産党も「依存症対策をするぐらいなら、そもそもカジノなんかつくるな」とグサリ。

 いずれにしても、公明党や野党が懸念するギャンブル依存症対策に関して一定の落とし前をつけたうえでIR実施法案が可決・成立するのは時間の問題といえるでしょう。

カジノなしでも訪日外国人は2000万人突破

 そういう意味では今さら反対を唱えたところで詮ないのですが、これまでのIR法案をめぐる議論にはどうしても違和感を抱かずにいられません。本当に日本にカジノを作る必要があるのでしょうか。

 たとえば「日曜討論会」に出演した自民党の新藤義孝政調会長代理は「日本に世界中から訪れる魅力を持った拠点をつくる」というのですが、全国の観光地がすでに外国人で溢れ返っているのは誰の目にも明らかです。2020年までに訪日外国人2000万人などという目標を掲げていたのも今や懐かしい話で、2017年にはあっさりと2800万人を超え、いつの間にか、国も目標を2倍の4000万人に引き上げているのが現状です。

 京都など伝統的な観光地以外にも、日本には「魅力を持った拠点」がたくさんあります。歴史的遺産を見物に来るだけでなく、アニメなど日本のポップカルチャーに直接触れたくて訪れる観光客も増えています。キョウト、アサクサ、アキハバラだけではないのです。シブヤ、ナカノ、イケブクロ、ハラジュクも外国人観光客だらけです。

 ビザ発給要件の緩和や長い円安といった後押しもあったでしょうが、海外のお客さんは日本のいろいろないい所を自ら見つけてくれますし、民間も英語や中国語に対応するなど、それなりに努力してきた成果が表れているのだと思います。

 今後、情報メディアやSNSなどを通じて日本ファンはさらに増え続けることでしょう。カジノなどなくても観光客はどんどん増えていくはずだと考えるのはあまりに楽観的すぎるでしょうか。

犯罪の巣窟になるのは必至

 さらに言うと、日本には、純粋に日本の風土や文化に触れたい人々に来てほしいのです。カジノなどを目当てに日本に来てほしくないというのが筆者の偽らざる本音です。

 日本のことが好きで、日本という国を楽しみにやってくる観光客なら、それこそ「おもてなし」の精神で歓迎してあげたくもなりますが、賭け事目当てにやって来た欲望丸出しの外国人に街をうろつかれたら、たまったものではあまりません。カジノに行きたいのなら、マカオかシンガポールにでもどうぞ。今どきはフィリピンもカジノで客寄せをしています。

 それに、あぶく銭の渦巻く場所は間違いなく犯罪の巣窟になるでしょう。安倍晋三総理が「クリーンなカジノを含んだ魅力ある日本型IRをつくりあげたいと思います」と発言していますが、そんな場所は海外の富裕層にはまったく魅力のないものになること請け合いです。

 古今東西、「飲む」「打つ」「買う」はセットとされ、カジノ付きリゾートとなれば売春が合法化されているラスベガスと同じようなサービスを期待されるのは必然です。警視庁OBによれば、管理売春に限らず違法薬物、恐喝、暴力、窃盗、さらには賭けですった金を「盗られた」と偽る狂言強盗まで、発生しうる犯罪は枚挙に暇がないようです。

日本の品格が問われている

 カジノの語源は、「家」を意味するイタリア語の「casa」に、縮小の語尾である「-ino」が付いたもの。電通は「カジノ」という言葉に染み付いたイメージを変えようと、IR推進において「カッシーノ」という言葉を用いることを提唱したそうです。しかし、何と呼ぼうと賭博場であることに変わりはありません。

 賭博は金品を賭けて勝負を争う遊戯です。財物を賭けて勝負を行い、その勝負の結果によって、負けた方は賭けた財物を失い、勝った方は財物を得ることになります。賭けの見返りはゲームに勝った報奨として正当にもらうことができます。しかし、見返りの原資は負けた人から奪い取った金です。つまり、カジノは他人の金を奪い取るために人々が血眼になる場所です。

 さらに言うなら、これだけのギャンブル大国にまた新たなギャンブルを加えることにも疑問があります。三競オート(競馬、競艇、競輪、オートレース)に加えて、宝くじ、名目上は遊戯ながら実質的にはギャンブルの王様である20兆円市場のパチンコがあります。宝くじ関連も、ここ20年で、toto、ロト、ナンバーズなどずいぶん増えました。この上さらに国民の射幸心を煽るようなものを増やしてどうするのでしょうか。

 カジノリゾートの推進には巨大な利権が絡み合っています。力学的にいって簡単に止まるものではないでしょう。ならば百歩譲って、せめて日本人はカジノに立ち入れないようにしてもらうわけにはいかないものでしょうか。外国人観光客を増やすのが目的だというのなら、日本人を締め出すことに異議はないはずです。それに、日本人が対象外ならギャンブル依存症対策についてうるさく言われることもありません。

 国会がどんな議論をしてどんな結論を出すのか。いろいろな意味で、いま日本の品格が問われています。

筆者:小谷 隆