平昌(ピョンチャン)五輪が近づくなか、韓国では「平和(へいわ)五輪」VS「平壌(ピョンヤン)五輪」のバトルが深刻化している。

 韓国語では平昌、平和、平壌の「平」は「ピョン」と発音が同じだ。

 平昌は、冬季五輪候補地として3度も名乗りをあげ、3回目でやっと開催地に選ばれた。しかし、冬季五輪開催の決定に当時は喜んだものの、韓国人の関心は次第に薄れていった。

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キム・ヨナ引退後は人材払底

 韓国にとっては非人気種目が多いからだ。金妍兒(キム・ヨナ)引退後は、フィギュアスケートの人材もいない。

 前政権では不祥事も重なり五輪の準備は遅々として進まず、開催日だけが近づいた。

 それなのに、平昌では書き入れ時とばかりに宿泊業者たちは法外な値段で予約を取り、それも非難の対象になった。

 観客席も売れ残り、文在寅(ムン・ジェイン)政権は大手企業に観客席購入を促すことも辞さなかった。しかし、大手企業はあまり手を貸したがらない。

 背景には、2015年に制定された「不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律(公職者が職務関連性と関係なく金品を受け取ると刑事処罰を受ける法律で、食事3万ウォン、贈呈品5万ウォン、慶弔費10万ウォン以上だと処罰対象となる)」や文政権の大企業バッシングがある。

 そんな矢先、文政権は北朝鮮と仲良くすることで突破口を見出した。

 昨年から続く北朝鮮の脅威は、平昌五輪の前途を阻んでいた。五輪参加国からはリスクが高すぎるから選手団を派遣したくないという話も聞かれた。

 それなら北朝鮮と仲良くするしかないでしょうということで、北朝鮮と急な話し合いの場を設け、平昌五輪開幕式では合同で入場することになったわけだ。

韓国で大流行し始めたラップ

 それだけではない。せっかく一緒になるんだったら、合同チームなど組んじゃいましょうということで、女子ホッケーチームを南北合同チームにすると発表した。

 しかし、そういうことは韓国人の合意によってなされたものではない。

 そこで、急にネットで流行り出したラップがあるので、紹介しよう。1月31日ユーチューブで50万回以上再生されている(参照=https://www.youtube.com/watch?v=Lu8Zh5TJ1Og&app=desktop)。

 タイトルは、「平昌遺憾」でラッパーは「虫少年」である。

 内容は、文政権は平和オリンピックと言っているが、北朝鮮の言いなりになっていることについての批判だ。かいつまんで訳すと、

 「仕事を増やすと言ってたのに減る一方、北朝鮮への貢ぎ物だけが増え、ここが北朝鮮なのか韓国なのか分からない」

 「俺らは平壌オリンピックなんてまっぴらだ。 韓国民の汗より北朝鮮の選手の方が重要なのか。そんな屈辱が平和だと思ってるのか」

 「自分勝手に単一チームを強要、誘致過程の涙や汗は知ったこっちゃない、オリンピック選手すら自分たちの勝手なんだな、こんなオリンピックくそくらえ」

 過激な表現が多い。

北朝鮮と同じ民族という認識は希薄に

 この「平昌遺憾」に対し、ネットでの反応は、自分の言いたいことをちゃんと言ってくれて嬉しいという書き込みが目立つ。

 今の20代や30代にとっては、北朝鮮と同じ民族だという認識はあまりない。だから、北朝鮮とホッケーの合同チームを構成すると発表した途端、文大統領の支持率は下がった。

 朴槿恵前大統領弾劾の時もそうだったが、いまだに大韓民国は二分している。

 先日、知人が「私はパクサモ(朴槿恵を支持する人たちの会)で、弟は江南左派(富裕層だけれど左翼:現在のムン政権を支持する)なんだよね」と言う。

 家族の仲さえ分断してしまっている。互いに相容れず、双方が全く理解不能なのだ。

 朴槿恵政権が慰安婦問題で日本と合意したことを批判していた文政権は、今度は国民の合意なく、勝手に北朝鮮の選手を女子ホッケーチームに入れたり、北朝鮮の言いなりになっている。

 選挙前は、あれだけ国民が願わないことはやらないと啖呵を切っていたのに、全く忘れてしまったようだ。

日本に対しては団結できても・・・

 慰安婦問題は日本に対する問題であったので、韓国民が一致団結することができたが、今回は国内の問題であるため、どうしても二分するしかないのだ。

 あろうことかイ・ナクヨン国務総理は、「女子アイスホッケーチームはメダル圏内にないから南北単一チームを構成すべきだ」ともらしてしまった。

 オリンピックにはメダルを取れる人たちしか価値がないと言わんばかりの発言である。一国の国務総理として失態を犯したと本人も気づいたらしくすぐに謝ったが、時すでに遅し。ほとんどの人たちがニュースを通じて彼の本音を知ってしまった。

 平昌五輪をぜひ平和五輪として印象づけたいがために、北朝鮮と手を結んだが、反発する人たちは今回の五輪を「平壌五輪」と呼び、韓国内は南と北を分断する以上の心の溝が深くなってしまっている。

筆者:アン・ヨンヒ