新しく始まった専門医制度の1次募集結果が公開された。

 専門研修を行う若手医師の応募は大都市部の大学病院へ集中し、内科や外科の研修への応募は減少するという結果となった。

 この結果については制度開始前から危惧されていた通りであり、すでに様々な考察が出ている*1*2。

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専門医を取る必要はあるのか?

  本稿で述べたいのは、そもそも本当に専門医を取る必要があるのか、についてだ。かく言う私は専門医を取得するつもりはない。

 そう考えたのは、社会と医療とのつながりや、高齢社会における医療のあり方について早いうちに経験することが、高齢化が進む世界で医師として生きるうえで重要だと思ったからだ。

 それには、高齢化が進み、さらに震災からの復興によって状況が変化する相馬市は最適だ*3*4。

 これから医師としてのキャリアを積む医学生、初期研修医にはぜひ、自分が医師として何を重要と考えるか、を考えてほしい。そして、制度・資格に関係なく、そのために何が必要かを考えて最初の一歩を踏み出せばいい。

 そう考えるのは、医師の評価軸は1つではないからだ。私のように、専門医と無関係な軸を評価軸として持つ場合もある。

 さらに、専門医という資格自体が意味をなさなくなる可能性がある。

 例えば、外科であればすでに症例データベースが整備されているが、今後はウェアラブル端末を用いて医師個人の振る舞いを追跡することや、患者の満足度を評価することも可能だ。

ITで簡単に医師が評価される時代に

 そうすれば、医師個人が治療した患者の疾患名、治療成績、満足度や医師個人の勉強量、健康状態に至るまでリアルタイムで追跡可能になるかもしれない。

 そうすれば、「この3か月間で最も治療成績が良くて患者満足度も高く、心身ともに健康な専門家」を探すことも可能となる。このような方法が出てくると、専門医資格という硬直的な資格の意義はなくなる。

 なぜそう言えるのか、それはその方が患者にメリットがあるからだ。

 医師の既得権益にかかわらず、患者が求めるのであれば、それに応じるサービスは必ず出現するし、そのように社会が変化するのは摂理だ。

 患者にとって望ましい社会の変化は、若手医師にとってはチャンスが広がる変化だ。経験年数に関係なく、患者にとって望ましい医師が評価される時代となるからだ。

 だからこそ制度や資格に関係なく、患者の多い病院でたくさんの症例を経験する、メンターを探す、などすればよい。

 私のように、医療の課題解決、社会との関わりを勉強したければ、環境が激動する福島県の浜通りはお勧めだ。追い求めるのは経験・実績であり、資格ではない。

現在の制度に頼るのは危険

 そして、若手医師がそのように行動することは、医療界自体を良くすることにつながる。若手医師に選ばれなかった学会は、どうすれば学会構成員に価値を提供できるか、真剣に考えるきっかけとなる。

 そうして、専門家としての教育を学会が真剣に考え、取得する価値のある専門医資格ができれば、若手医師の入会も増えるだろう。

 だからこそ、「○○科だと早く専門医が取れる」などと現在の制度をあてにしてキャリアを決めるのはもったいない。それでは、専門医という資格の取得が目的化してしまっている。

 自分の目標に対して、制度が邪魔なら無視すればいい。社会が変化するスピードは

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 の順に起きる*5。

一番遅く変化するものに合わせて、個人が時代遅れの行動を取るのは、せっかく自動車に乗っているのに時速4キロで徐行するようなもので、時間もエネルギーも浪費してしまう。

 それはその個人にとっても、医療界にとっても損失だ。

 厚生労働省は、これからも様々な政策を打ち出すだろう。それを聞き流して自身の研鑽を積むのか、おつきあいするのか、決めるのは医師自身だ。

参考文献

*1=なぜ新専門医制度が地域医療を崩壊させるのか 安藤哲朗
http://www.huffingtonpost.jp/tetsuo-ando/new-medical-system_a_23340706/
*2= 日本専門医機構は言い逃れ会見をしている場合か。ただちに全情報を開示せよ! 遠藤希之
http://medg.jp/mt/?p=8103
*3=高齢者ケアで東京より圧倒的に先へ進んだ被災地 森田知宏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51806
*4=福島で気づいたグローバルな課題 森田知宏
http://www.huffingtonpost.jp/tomohiro-morita/global-fukushima_b_17525746.html
*5=『時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法』 佐藤航陽

筆者:森田 知宏