ビールに唐揚げの最強コンビが人気の吉野家「吉呑み」

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 いま、「吉野家」が実施する牛丼無料キャンペーンの行列に話題が集まっているが、数年前から懐の寂しいサラリーマンを中心に「気軽に安く飲める」と人気になっているのが、牛丼チェーンの仕掛ける“ちょい飲み”店舗だ。いまや吉野家だけでなく、「すき家」も試験的にちょい飲みメニューを増やしている。フードアナリストの重盛高雄氏が、“吉呑み”“呑みすき”のライバル対決を飲み歩きレポートする。

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 景気回復の波が全国津々浦々に及んでいる──と述べられている今の国会。なんでもエンゲル係数が上昇したことから景気が回復し、食費の支出が増えていると解説されている。

 日本フードサービス協会による外食産業の動向を見ても、売上高前年比は2017年1〜12月通年で100%を上回っている。ファストフード業態やファミリーレスト業態が全体をけん引していることから、外食産業全体としては好調といえよう。

 その中にあって、苦戦しているのが居酒屋業態だ。2017年全体でも100%を上回ったのは半分以下の5か月間。ボーナス時期の5、6、11、12月、そして卒業時期の3月のみであった。そういわれてみると、最近居酒屋に行った記憶は少ないという人が多いのではないだろうか。

 居酒屋といえば、歓送迎会や飲み会の定番として使われてきたものの、ここ数年各社とも苦戦している。総合居酒屋の苦戦をしり目に、成長を遂げているのが専門居酒屋だ。特に「鶏」をテーマにした定額居酒屋が好調だ。テーブルチャージやお通しといった消費者にとって「?」な金額を支払うよりは、明瞭な価格設定で人気を博している。

 そして、庶民の居場所として脚光を浴びてきたのが「ちょい飲み」。居酒屋やバーでがっつり飲むのではなく、食事とともにちょっと飲むという需要だ。当然財布にも優しい価格設定であることはいうまでもない。

 2015年にちょい飲み需要の受け皿として登場したのが「吉呑み」だ。今までもアルコール類は提供していたが、「ビールは3本まで」などとどちらかといえば食事をする場所である、という雰囲気を漂わせていた吉野家。

 夕方の時間から本格的にちょい飲み需要の取り組みを開始した。厨房設備の関係から、軽めのおつまみと締めの牛丼が定番コース。駅前立地の多い吉野家の店舗は、帰宅前のちょい飲みにはぴったりのシーンを提供してくれる。

 牛丼(並盛り380円)を食べながら、生ビール(ジョッキ350円)を嗜む。紅ショウガだけでも十分なアクセントとして存在感を発揮するが、ビールは牛丼とともに喉の奥に次々に消えていく。

 意外にグラスビール(180円)も人気の商品だ。ビールと牛皿、またはビールと牛煮込み(350円)に牛丼を加えても1000円でおつりがくる計算だ。ひと昔前に流行った“せんべろ(1000円でべろべろに酔える)”とまでいかないかも知れないが、吉野家でも可能な価格帯。コスパだけでなく、満足度も高い印象を受けた。

 有楽町駅前にある2店の吉野家は、1店舗は吉呑み提灯が下がっているが、ごく至近にあるもう1店舗は提灯がない。当然ながら、提灯の下がっていない店舗は、お客様の回転が高い。食事をメインにするのであれば、提灯のない店舗を選択することもありではないだろうか。

 恵比寿店では、吉野家らしくないちょい飲みも可能。生ビールとから揚げ(3個360円)の組み合わせも注文できる。明るい店内と広くゆったりとした空間の中で、から揚げをつまみにビールを飲む。なんて吉野家らしくない雰囲気。同店舗にはカウンターは存在しない。入口右手のカウンターで注文し、先の窓口で商品を受け取る。いわゆるセルフサービスの形態だ。意外にも女性客の姿も見受けられる。これも吉野家らしくない、と感じた一因かもしれない。

 吉野家が新しい店舗戦略として打ち出しているのは「女性も入りやすい」店舗。恵比寿、五反田、秋葉原、大井町などに新しいコンセプトで店舗を設定している。それぞれの店舗形態・サービス形態が同一でなく、吉野家も試行錯誤している様を見ることが出来る。これからの吉野家を占うつもりで来店してみると面白い。

 恵比寿と大井町の店舗はセルフサービスを基本とし、喫煙スペースを確保している。受動喫煙防止の観点から、男性女性を問わず喫煙可能な店舗が少なくなっている中で、喫煙スペースの設置は試行錯誤の一つなのだろう。

 キッチンスペースの見直しにより、他の店舗と異なり「揚げ物」が提供可能となっている点も強みだ。取り扱う品目が増えることは、消費者から選ばれる機会も増えることだろう。大井町店では夕食に力を入れている。とんかつ定食も提供しているため、家族連れで来店している風景も見ることができた。

 いろいろな店舗展開を試みながら、提供する商品を拡充しつつある吉野家の吉呑み。店舗によりおつまみメニューが異なるので、店舗をはしごするのも楽しいと考えられる。

 一方、吉野家に遅れること2016年。外食産業の雄であるすき家がちょい飲み需要取り込みの実験を開始した。その名も「呑みすき」。まだ実験中のため、ほとんどお目にかからないかも知れない。品川から至近にある高輪三丁目店や三田店を覗いてみた。

 三田店は店舗の2階スペースを呑みすきとして設定。訪問時は女性客の姿も見られた。2階ということで人目に触れないからかも知れない。また同店舗2階には喫煙スペースも完備されており、アルコール飲料だけでなく、喫煙する人にも選ばれる店舗のひとつだろう。

 呑みすきで特筆すべきメニューが、バッファローチキン(5本220円)。フライヤー設置のすき家ならではの商品。単体でも揚げたてで美味しい。ますますビールが進む味わいである。ひとつのサイズが小さいので、一人で10本注文しても大丈夫と思われる。枝豆(1皿150円)は冷たかったが、牛すじ煮込み(1皿300円)は温かく美味しい仕上がり。

 実験中ということで、店舗により提供しているアルコール類は異なる。また余談であるが三田店は2階で呑みすきを展開している関係上か、スタッフの人員によっては「2階お休み」という日もあった。

 高輪3丁目店は、1階で呑みすきを展開している。通常店舗と共有して展開しているため、キッチンから温かい料理が運ばれてくる。

 こちらの店舗では、家族連れだけでなく女性一人客の姿も見られた。飲みだけでなく食事のメニューも多いため、食事メインとしての使われ方も多いと見受けられる。同店舗は駅前立地ではないため、会社員が帰りに寄ってというよりは、目的を持って訪れる店舗という位置付けだ。

 実験段階とはいえ、メニューのバラエティーさではすき家が一歩リードしているが、現時点において営業展開する店舗数と女性が来店しやすい環境つくりを念頭に置いた新型店舗、そして唐揚げを代表とする「揚げ物」の設定を考えると、ちょい飲み対決はやはり吉野家に軍配が上がる。

 いずれにせよ、消費者からみれば手軽な費用で美味しく食べてちょっと飲んで、という「ちょい飲み」はまだまだ需要が多いのではないだろうか。おひとり様で居酒屋に入ることは、なかなか難しい。だが、お通しで300〜400円支払うのであれば、吉野家の吉呑みやすき家の呑みすきのほうが、価格だけでなく品質の面でも安心して入りやすい店といえる。