スキージャンプ男子ノーマルヒルは風の影響による中断が続き、試合は午前0時をまわっても終わらず、観客席の客も次々と引き上げていった=11日未明、韓国・平昌のアルペンシア・ジャンプセンター (撮影・早坂洋祐)

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 平昌五輪は第3日の11日、強風でアルペンスキー・男子滑降が延期、スノーボード・女子スロープスタイル予選が中止になった。

 強行開催した競技でも、風に翻弄されて勝負技を繰り出せないなど影響が出ている。ただでさえ屋外競技場の気温が氷点下10度以下になる“極寒五輪”。アスリート・ファーストとはほど遠い環境に選手は悪戦苦闘している。(岡野祐己、奥山次郎、浜田慎太郎)

 「もう信じられない。気持ちがひるんじゃう。『こんなの中止でしょう』と心の隅で文句を言いながら寒さに耐えていた」

 8度目の五輪となる45歳の大ベテラン、葛西紀明が強風と寒さに思わず悲鳴を上げた。10日夜のジャンプ・男子個人ノーマルヒルは、時に秒速5メートルを超える強風で競技がたびたび中断。スタートゲート付近の選手は、スタッフに毛布でさすられたり、コートを身にまとったり。寒風に凍えながら順番を待った。

 五輪金メダルを4個持つシモン・アマン(スイス)は特に悲惨だった。気まぐれな風に弄ばれ、スタート位置で構えたり、待機場所に戻ったり。通常は飛躍までに1分ほどのところを10分以上要した。体力面だけでなく精神面に与えた影響は計り知れない。

 11日のスノーボード・男子スロープスタイル決勝では、強風のために技を失敗したり、難易度の低い技に切り替える選手が続出。優勝候補が敗れる波乱の展開となった。屋外競技では強風への対応が勝敗を大きく分けている。

 スケジュールは大幅な変更を強いられている。11日に開催予定だった男子滑降は15日に延期。15日に予定されていたアルペンスキー・男子スーパー大回転は16日に行われることが決まった。

 最も風の影響を受けるジャンプは女子を含めてまだ3種目残されており、3戦あるノルディック複合も同じ会場を使用する。今後も中断や延期となる可能性は否定できない。

 強風に加え、選手を苦しめるのは気温の低さにある。競技場の気温が氷点下10度以下になることもしばしば。6日夜にモーグルの日本勢が公式練習した際は氷点下16度まで下がった。

 雪の上でスキー板を動かすと「キュッ、キュッ」と音がする「雪鳴り」という現象も発生した。城勇太コーチは「寒さで雪の結晶が硬くなる。摩擦が大きくなる分、板が走らない」と分析。滑りがよりなめらかになる硬めのワックスを選んで塗るなど、対応に苦慮している。

 スケルトンのケビン・ボイヤー(カナダ)は英BBCの取材に「風が一番ひどい。五輪村を歩くのはまるで悪夢だ。カナダ出身なので寒さには慣れているはずなのに、こんな寒さは初めてだ」と嘆いた。

 競技を楽しみにしていた観客にも影響を与えている。10日夜の男子個人ノーマルヒルが終了したのは日付が変わった11日午前0時20分ごろ。強風で予定より約1時間長くかかった。最終結果を待たずに大勢の人が会場を後にした。

 競技のスタート時間が午後9時半ごろの遅い時間になった理由は明らかにされていないが、ジャンプ人気の高い欧州での放映に合わせたとみられる。

 9日の五輪開会式では、式終了後に観客が一斉に帰路についたために大混乱に陥り、交通手段がなく、寒さの中で途方にくれる人が続出した。韓国初の冬季五輪は、選手だけでなく、観客にも過酷な大会となっている。