休暇を終え、タイに戻る下地奨に近況を聞いた

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 2016年から、元Jリーガーの下地奨はタイ1部所属の「チャイナート」と二年契約を結んだ。

 しかしクラブは一部から降格し、収入が激減することもあって下地との契約を解除。その際に本来払われるべき二年目の報酬が支払われなかった。そこで下地はFIFAに提訴した。構図としては単純と言えば単純、残念ながらサッカー界にはよくある話である。

 本人からはその後の個人的なやりとりで「どうもこっちの代理人にも非があるらしく」ということを聞かされていた。一体どういうことなのか。

「オレは代理人から二年契約だと聞かされていたんですけど、実は一年契約だったという話なんですよ。だからこちらが“二年契約なのだからもう一年分を”と請求するじゃないですか。そしたらクラブ側は“いや、一年のはずだぞ”と言い張るわけです。そこであらためて契約書を見直してみたら一年契約だった、という話なんです」

 なんだそれは、思わず筆者は腰が抜けてしまった。代理人はなぜそんな見え透いた嘘をつくのか。もちろん一義的にはクライアントの選手を騙した代理人が悪い。そして海外で働きながら契約書の文面を自ら吟味しなかった下地本人にも責任がある。

「確かにオレが悪いんですよ。それまでその代理人とも四年間やっていたし、信頼しきっていたので、それまでは毎回自分で契約書の文面を辞書で引き引き時間をかけて読み込んでいたのに、あの時だけは読まなかったんですよ。それが致命的になってしまいました」

 付け加えると、この契約を担当した代理人にはほかにも「余罪」があり、現在は日本の代理人登録からは完全に除名されている。“被害者”たちから直接聞いているが、本人たちのゴーサインが出ると同時に、悪辣な手口を暴露する予定である。

 もう一度言うが、海外で働くときに頼りになるのは契約書とカネだけである。契約書の、それも一番大事な数字の部分を確認しなかった点は、完全に下地の落ち度である。

「そんなこんなで元の代理人が逃げていき、その後連絡してきた代理人も怪しそうなのばかりで、それもあり去年は半年サッカーから離れていましたけど、今後は代理人との付き合い方も考えなければいけないなと考えさせられましたね」

 具体的には、どう変えていくのか。

「結局、信頼できる代理人って二種類しかいないと思うんですよ。それこそユースとか、誰も目をつけていない十代のころから付き合って投資してお前と一緒に成功していきたいというタイプ。あとはお前は今が一番市場価値が高い、オレならどこどこのビッグクラブに入れてやれるから分け前をこれだけよこせと言って甘いことを一切言わないヤツ。口は悪いけどズラタン・イブラヒモヴィッチをビッグクラブに売り続けるミーノ・ライオラがそうですよね。今後代理人との関係はドライであるべきだと思うようになりましたし、今後はクラブからのオファーを持ってくる代理人と都度契約にしてやっていこうと思っています」

◆タイで「稼ぐことの意味」を改めて考えるようになった

 ここ数年、タイに進出してからの下地は順調な日々が続いていた。

「心のスキができていたのでしょうね。日本の選手にも、代理人との関係は僕の経験を通じて考え直してほしいなと思います。もっとドライであるべきだと思いますね」

 筆者も詐欺にあった経験があるのでよくわかるが、こういうときは金銭的損失も大きいが何より一度は信頼した人から騙されたという心理的打撃がさらに大きい。

 最近でこそ、チャナティップ・ソングラシンをはじめとして続々とタイ人選手がJリーグに参戦してきているが、国全体としてはまだまだという部分も大きいという。