女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、アパレル販売員として働く、齋藤美緒さん(仮名・32歳)。都内の服飾系短大を卒業し、中堅のメーカーに就職するも2年で転職。現在の会社は4社目で、雇用形態は契約社員。年収は180万円で、都内の家賃3万円のシェアハウスに暮らしています。

美緒さんは全身がモードな雰囲気。白黒ボーダーのざっくりニットにタイトなデニムを合わせ、ヒールのかかとがはげた黒のショートブーツを履いています。バッグはフリマアプリで買ったという、アメリカブランドの茶色の斜め掛けバケツバッグ。独特の革素材が美緒さんの雰囲気に合っています。ヘアスタイルはラフなボブなのですが、よく見ると一部の毛先がピンク色に染められていました。

「夜中に不安になったときに、4時間かけて脱色して、ピンクを入れたんですよね。社員さんには“変なヘアスタイルだから、お客様の前に出る時は目立たないようにピンでとめて”と言われたんですが、ショッピングセンターに来るオバさんと中学生相手に何を上品ぶっているんだ、と思いましたよ」

32歳で年収が180万円、給料が上がる見込みはない。会社の業績は下がっており、ボーナスもカットされた。“社員登用の道はないし、この会社はヤバい”と思いながらも、転職できないまま1年が経過しているそうです。

「お金がないし、働くことにも疲れたから専業主婦になりたいんです。だから婚活もしているんですよ。先日は婚活パーティーに参加したし、マッチングアプリにも登録しました。でも全然、私って男性から選ばれないんですよね。パーティーに一緒に行ったシェアハウス仲間は、さっさと結婚相手を見つけて、来月引っ越していきます。その相手、見た目はイマイチだったのですが、警察官だったんですよ。友達は安定した職業の公務員を見つけていいな〜と心底うらやましい。なんで私は選ばれないのかと思いますよ」

娘を溺愛する母親との関係と不登校の過去

今の生活について伺いました。

「手取りが15万円くらいで、家賃とスマホ代、光熱費を合わせて4万円。11万円で生活しています。自炊していますがお金が足りなくなり、クレジットカードでキャッシングをしてしまうことも……。一年前にどうにもならなくて、親に消費者金融で借りた分も含めて100万円ほど精算してもらったのですが、そのお金も返せていない。それなのにまた、10万円の限度額いっぱい借りています。貯金は全くありません。販売は土日が仕事になるから、普通の会社員をしている人とデートができず、恋愛をするのはいつも仕事先で知り合ったバイトの学生。20代の頃は体力もあったので、夜のバイトもちょっとできたのですが、今は昼の仕事だけでせいいっぱいです」

美緒さんのご両親は神奈川県在住。堅実な人々で、父親は正社員、母親は専業主婦をしながらパート勤務という昭和的な家庭環境で育ちました。

「父は工場勤務、母は食品会社で経理のパートをしています。弟は2歳年下で高校卒業後に葬儀会社に勤務。着実に出世をしているみたいです。でも、世界が狭いし、私のことをダメな姉と思っているから、兄弟仲はよくありません。弟は去年、中学の同級生と結婚し、6月に子供が生まれます。うちの実家は持ち家だし、お金はあると思うからつい頼ってしまって。父は厳しいのですが、母は私に甘い。実家に行くと、ちょこちょこお小遣いをくれます」

短大進学までのお話を伺うと、中学校の一時期、いじめが原因で不登校になっていたことがあるとか。

「中2の10月頃、ある日突然、クラス全員が無視しはじめたんです。原因はボス格の女の子が片思いしていた男子と私が仲良かったことらしいのですが、“いないもの”として扱われ、給食を食べれば何かを入れたらしくクスクス笑われて。そのまま3年のクラス替えまで学校に行かなかったんですよね」

現実を変えるよりも、現状維持のままやり過ごせば何とかなる、とこの時に思ったそうです。

「母が“美緒ちゃんは辛いことはやらなくていい”といつも言ってくれたんです。あのときに学校に行っていたら死んでいたと思います。だから会社も辛くなると休んでしまうし、休むと居づらくなるし……。最初に勤務した会社で“そんなに休むなら、専業主婦になってパートでもしてくれ”と上司に激怒され、結果的に転職してしまった。でも、体調不良のままお店に出ても絶対にお客様に迷惑をかけるじゃないですか。それをウチの弟が“姉ちゃんはバカでサボり魔だ”と言うんです。あいつはケチだから、2年前に結婚するまで実家に住んでいました。弟からイヤミを言われるから私もあまり帰れなかったのですが、結婚してヤツが家から出たから、ちょいちょい遊びに行けるので幸せ」

実家に戻るという可能性について伺うと、「父がいるからイヤ。そもそも田舎だからイヤ」と言います。

「都心まで2時間近くかかるし、神奈川県と言っても周囲は田んぼだらけで果樹園もあるようなエリアですよ。やはり東京に住んでいたいです。自由だし、友達もいるし、出会いも多いし。できれば都内で専業主婦になって、お小遣い程度は自分で稼いで子育てと家事をして生きていたいのですが、いい相手がいなくて……」

販売員の仕事は立ちっぱなしだが、今の会社はノルマもきつくないから居心地がいいという。でも、給料が安く、勤務時間も短縮されている。

彼からフラれる原因は、低年収と体のニオイ。専業主婦願望の前に、横たわる問題とは……〜その2〜に続きます。